理科の魅力 若者に伝える
県教育委員会と国際協力機構(JICA)の自治体連携派遣報告会が19日、行田市の県立総合教育センターで行われた。JICA海外協力隊の短期隊員として7月24日~8月23日の期間、南アフリカ共和国(南ア)の教育施設で理科授業を行った、県立所沢高校英語教諭の古屋雅大さん(36)と、南稜高校理科教諭の石塚祐貴さん(36)が現地活動の成果を報告した。
南アフリカで行った理科授業の様子を紹介する(右端から)古屋雅大さん、石塚祐貴さん=19日午後4時ごろ、行田市の県立総合教育センター
県教委は2023年にJICAと自治体連携に関する覚書を締結。南アの科学振興などを目的に24~28年の期間、現職教員を海外協力隊として派遣することで合意した。
短期隊員は、埼玉県立高校の夏休み期間を利用して渡航。南ア・リンポポ州のヴワニ科学資源センターを拠点に、現地の小学~高校生を対象にした理科実験教室などを、長期隊員(任期約1年7カ月)とともに実施する。
古屋さんと石塚さんは二人三脚で、同センターでの理科授業やインターン生への実験指導を行ったほか、南アの科学の祭典「ナショナルサイエンスウィーク」(8月4~9日)のイベントに参加。任期中の1カ月間、州内の教育施設を巡り、現地の児童生徒計約1500人に理科の魅力を伝えた。
「学ぶ意欲高く、やりがい」
南アは、人種隔離政策「アパルトヘイト」(1948~94年)が残した経済的格差や、専門分野によって職種が固定されてしまう教育制度などの影響で、理科教育の立ち遅れが目立っている。
報告会で古屋さんは「ほとんどの学校に理科室がなく、実験器具の使い方を知らない指導者が多かったが、生徒たちの学ぶ意欲は高く、とてもやりがいのある現場だった」と力説。協力隊員の今後の役割について、「日本の指導法を押し付けるのではなく、『こんなやり方もありますよ』と提案してあげることが大事。相手の教育者としてのプライドを理解するために、コミュニケーションの積み重ねが重要」と語った。
石塚さんは業務を遂行するに当たり、「実験を楽しんでもらうだけではなく、現象を理解させ、理科を好きになってもらう」「後任の隊員がしっかり引き継げる、再現可能な実験を披露する」の2点を心がけた。帰国後は、広報紙などで現地の体験談を紹介し、南稜高校の生徒に国際交流の魅力を伝えた。「理科教育は社会基盤を進歩させていく上で重要な科目。一教育者として、今回、とても貴重な経験をさせてもらった」と話した。
=埼玉新聞2025年9月24日付け11面掲載=
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