同じ日常生きている
乳がんサバイバーの藤野信子さん(54)=上尾市=は9日、「One and Only 大切な命」と題して、さいたま市西区の県立大宮南高校で講演した。藤野さんは「私は皆さんと同じ日常を生きています」と語り、大切な命を守るために、がんを正しく知り、がん検診の重要性を説いた。
講演する乳がんサバイバーの藤野信子さん=9日午後、さいたま市西区の県立大宮南高校
藤野さんは2013年3月、乳がんの告知を受けた。当時44歳。3人の子どもは小学4年、同1年、3歳だった。右乳房の全摘出手術、再建手術。約1年半の抗がん剤、放射線治療。リンパ節の進行がんも患ったが、新薬の効果は大きく、「5年生存率を突破して元気に生きている」。間もなく10年を迎え、現在は定期検査を受けている。
19年にがんと診断された患者数は国内で約100万人。小児がん、思春期や若年成人のAYA世代のがん患者は年間約2万人に上る。がんの要因は生活習慣に起因する面もあるが、完全な予防策はないという。藤野さんは自身の反省を込めて、「早期検診、早期治療が大切。抗がん剤治療は地獄を見るようだった。(年齢に達したら)がん検診を受けてほしい」と語った。
がん患者は体ばかりでなく、心の負担も大きい。不安から夜中に声を押し殺して泣いたときもあった。告知後の子どもたちとの関係を語り、子どもらには「患者の気持ちは分からなくても、家族の気持ちは分かる」と伝えている。
藤野さんは、がん患者や家族を支援する「リレー・フォー・ライフ・ジャパンさいたま」の副実行委員長を務めている。がん患者や家族を「迷わせない、困らせない、ひとりにさせない」をスローガンに活動している。がんの公的な相談体制が充実しているとして、「一人で悩まないでほしい。家族ががんになったとき、不安な気持ちや知りたいことがあったら、相談してください」と呼びかけた。
講演会には各クラスの保健委員と希望者ら約50人が参加。3年の保健委員長工藤彰太さん(17)は「がんを理解しておらず、怖いと感じていた。若い時からがん検診を習慣づけることが大切で、周りに伝えていきたい」と語った。
家族ががんを経験しているという3年の清水祐那さん(18)は、看護師を目指している。清水さんも不安な気持ちがあり、藤野さんの話に共感した。「がんの知識を得られたので、今後の生活に生かしていきたい」。福祉関係の仕事を希望する3年の岸心和さん(18)は「自分だけがつらいのではなく、家族にも影響があると分かった。患者と関わるとき、一人の人として接することができるようにしたい」と話した。
=埼玉新聞2022年12月14日付け13面掲載=
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