埼玉新聞社 高校受験ナビ

高校入試のプロが教える公立高校入試までに必要なこと

2023年3月24日配信

 

日頃の授業から覚える 知識の「意味づけ」を

 近年では各教科で「思考力、判断力、表現力」をみる問題の出題が増えてきている埼玉県公立高校入試。今年2月22日に実施された令和5年度入試の問題の分析を踏まえつつ、来年2月21日に行われる令和6年度入試を見据えて今すぐに取り掛かってほしい勉強方法などを学習塾「スクール21」入試情報センターの内山慎所長に語ってもらった。

 

スクール21入試情報センター 内山 慎 所長

 

■ 動き出しの早さは選択肢を広げる

 

 ―今年度の3年生の受験に対しての動き出しはいかがでしたか?
 内山 今年の3年生は、1年生からコロナ禍を経験していたこともあり、早い段階から塾や教育紙、インターネットなどからある程度情報を集めて、入試を迎えたご家庭が多かったです。それからスピーディーな情報発信を心掛ける中学校が増えていることも影響していると思います。志望校の決定時期については、早い時期で決定するご家庭と最後まで悩まれるご家庭の二極化が進んでいますが、学校選びの動きに関しては早まってきている傾向を感じます。
 私どもも4月、5月頃から「興味がある学校のホームページは確認してくださいね」とお話をしているのですが、その時期には既に確認を始めている方が多いようで、各高校の説明会などの受験生を対象としたイベントの予約の埋まり方も年々早くなっている印象です。

 

 ―学校選びの動き出しが早まっていることに関してはどう思いますか?
 内山 行動が早くなることは、子どもたちの選択肢を広げることにつながっていると思っています。
 私立高校ですと当然、建学の精神が違いますので、各校取り組みが全く違うのは当たり前なのですが、実は公立高校も各校で取り組みが違っています。それぞれの学校にユニークな特徴があるので、それを知った上で勉強を進めるのと、知らないでなんとなく勉強を進めるのとでは差が出ると思います。
 「こんなことが勉強できる。こんな取り組みができる。だからこそ絶対にこの高校で3年間を過ごすんだ」というイメージができると、目標はテストで点を取ることだけではなく、志望校であこがれの高校生になることになりますから、自分自身の習慣を変えようとする受験生になります。
 例えば、行きたい学校が自主自立を重んじる高校であったら、「宿題は人に言われなくてもやるようにしよう」と変わっていくことだったり、行きたい高校に通う生徒たちのノートには、板書以外に自分たちのメモが入っていることが分かると真似し始めたり。目標校の先輩のようになろうと日々を過ごすと、結果として最後まで頑張れるような気がします。

 

■ 一問一答の暗記だけでは不十分

 

 ―近年表現力、思考力などが求められる傾向になっている公立高校入試ですが、今年度の問題は全体的にいかがでしたか?
 内山 教科書の内容にしっかりと取り組んでいる生徒向けの入試であるということは間違いなかったです。教科書を眺めた状態で問題を見ると、難しくなったようには見えないのですが、今の教科書は以前と比べると難しくなっています。とりわけ英語に関しては中学校で学ぶことも多くなっていますので、それがしっかり反映されています。
 分かりやすく言うと付け焼き刃的な勉強が通用しないということです。要するに早い段階からコツコツと勉強に取り組んでいる生徒でないと苦しい傾向が強くなった感じがしますね。
 暗記というと、一問一答的に答えを全部覚えて終わりという勉強の仕方があると思うのですが、そこで止まっていると難しい問題が増えています。どの科目にも共通することですが、単語や公式、解法や実験結果などを覚えた上で、その意味づけや理由までを理解していないと、問題を見ても分かりづらく正解まで導けないのです。
 一般的に暗記科目とされていた理科と社会はその傾向が特に強かったと思います。
 例えば理科の問題の中には、教科書で習っていないことだったりキーワードだったりが出てくるのですが、これまで勉強してきたことの内容が分かっていれば結び付けることができました。また、これまで学んだことを利用しながら図を使って説明していくと解くことができる問題もありました。
 社会は、学校で授業をしっかり聞いていれば、別に一問一答で授業してないと思います。学校では必ず「なぜ?」「どうして?」のところを授業でやっていますし、理科なら実験をしたとしても、結果だけを写すなんて授業はしないと思います。過程を考察して、理解を深める。こういう勉強をしていた受験生は有利でした。

 

 ―持っている知識をどう活用できるかもカギですね。
 内山 英語の学力検査の問題では、事実上英作文が一つ増え、学校選択では英語を読み取った上で、簡単な計算が求められる問題がありました。これらの問題からは英語を道具として使ってほしいというメッセージが込められていると思いました。単純に、読めばいい、話せばいいではなくて、社会に出て実際に海外に行って利用できるというところの基礎的な部分を中学生にも求めているだろうなという気がします。
 どの教科にも共通して言えるのですが、広い意味での教養が求められている印象です。数学だけ得意ではなく、数学は得意だけれども社会のさまざまな事象にも興味がある。英語がただ好きじゃなくて、英語を学ぶことによって、それを通じてさまざまな人たちと議論をするなど、そういうことが求められているのかもしれないですね。

 

■ 春休みは解き直しや確認のチャンス

 

 ―これから3年生になる現2年生はいつからどのような準備を進めればいいのでしょうか ?
 内山 現実問題として、進路としては今年の11月末から12月頭の三者面談で決定するところがあります。間違えてもカレンダー通りに一年間あると思ってはいけないのです。
 その上で憧れとか、将来の目標というものを早めに持った方がいいかなと思いますね。「何になりたい」でもいいし、「〇〇高校に入りたい」でもいいので、そういったものを早い段階で作ってほしいです。スタート地点でそういったものを持っていると、目標が立てやすいですし、どこまで頑張ればいいかが分かってくる。どこまで頑張ればいいかが分からないと勉強はつらいです。
 例えば入口としては定期テストが分かりやすいです。行きたい学校などの目標が決まったら、学校の先生に定期テストで何点取れば良いのか聞いてみましょう。そうすると、例えばある学校だったら5教科で「430点取ってほしい」とか、ある学校だったら「350点だよ」などと教えてもらえるでしょう。
 350点を目指そうと目の前の目標が決まると、自分の勉強を見つめ直せますよね。だからこそ、まずはスタート地点をきちんと作ることを意識してほしいと思います。

 

 ―勉強面ではどのようなことを意識する必要がありますか?
 内山 一番大事なことは、学校の授業で先生の話す言葉を一語も逃さないように聞くことです。ノートを取るとか、問題を解くとかも大事ですが、一番大事なことは授業を聞くことなのです。授業の中では勉強している事象や成り立ちの理由なども含めて全部説明しているので、分かっていることであったとしても一言一句真剣に聞く。逆に分からなかったことがあれば、分からないことを明らかにするということが重要です。
 黒板の板書をノートに写すときは、漫然と書くのではなく、心の中でちょっと唱えてほしいですし、分からなかったことはノートにマークをしてほしいですね。

 

2 月22 日に行われた「令和5年度埼玉県公立高校入試」

 

 ―もうすぐ春休みに入りますが、その期間中に重点的に行うべきことは何でしょうか?
 内山 学校の勉強が止まってくれるタイミングというのは、これまでの勉強のやり直しや確認に一番いい時期だと思います。例えば、学校のワークは、定期テストの1〜2週間前に必死に取り組むと思うのですが、むしろ長期休暇中にこそ取り組むべきものです。
 長期休暇に入る3月、7月、12月は、定期テストの結果が返却されており、自分ができなかったところが既に分かっている時期です。定期テストの答案を確認すると、どこを復習すればいいのか分かるので、その単元のワークをメーンに解き直してほしいです。 入試の本番が近づけば近づくほど単元の復習も大変になってくるので、定期テストが終わったタイミングで取り組んでおくと力が付きます。学校の授業が止まってくれる瞬間は、チャンスなのです。
 できなかったところだけなので、復習しなくてはいけない所は今までの勉強より少ないはずです。ですので、やり始めれば意外と早く終わります。
 それでも最終的にやらなくてはいけないことが途中で終わってしまうこともあるかもしれません。ですが、途中で終わってもいいのです。全くやらないよりはできなかったものができるようになる感覚を身に付けることができ、それが大きな前進になるからです。

 

=埼玉新聞2023年3月10日付け「新中学3年生向け 入試対策特集」内2面=

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