正智深谷 志高く4度目V
(最終日、17日・埼玉スタジアム)
決勝を行い、正智深谷が浦和学院を1―0で下して8年ぶり4度目の頂点に立った。
正智深谷は前半18分に鹿倉の左CKからゴール前の混戦となり、こぼれ球を佐藤が右足を振り抜き先制した。後半に入っても堅守を貫き、1点を守り切った。
優勝した正智深谷は、全国高校選手権(12月28日~来年1月13日・国立競技場ほか)に出場する。
8年ぶり4度目の優勝を決めた正智深谷の選手たち=17日午後、埼玉スタジアム
徹底したハイプレスで球際を強く戦った正智深谷が浦和学院を1―0で下した。
正智深谷は前半18分、DF鹿倉の左CKからゴール前のこぼれ球に、DF佐藤が右足を振り抜いて先制した。主導権を握ると強度の高い守備でボールを奪取。相手シュートを計4本に抑えるなど堅守が光った。浦和学院はビルドアップが狙われ、攻め切れなかった。
大舞台でも堅守速攻
正智深谷―浦和学院 前半18分、正智深谷の佐藤(右)がこぼれ球を押し込み決勝点とする
約1万1千人の観客が見守る大舞台でも正智深谷のチームスタイルは健在だった。セットプレーで奪った1点を持ち前の堅守で守り切った。小島監督は「正智で全国に行く高い志があった年代。一致団結して巡ってきたチャンスをつかめた」と喜びをかみしめた。
徹底した相手対策で序盤から試合を優位に運んだ。細かなパスで後ろから組み立てる相手に対し、ハイプレスを突き通した。ボールを奪うと右サイド赤川らに展開。近藤は「前で奪ってカウンターという共通意識があった」と速攻につなげた。
決勝のゴールは前半18分、得意のCKから生まれた。赤川のサイド突破が起点となり、左CKを獲得。キッカー鹿倉は「(相手の)頭のクリアが強いので腰付近を狙った」と低い弾道で狙い通りのこぼれを誘い、佐藤がゴールを決めた。
セットプレーの強さは守備面でも発揮された。前後半で計7本のCKを与えたが、決定機をつくらせず。身長180㌢超の選手が不在で高さこそないが、CB岸田永は「キーパーとの連係を図り、みんなが体を張れていた」とうなずいた。
今夏の逆境をはねのけ成長した姿を示した。6月の県高校総体直後に主将の大和田がけがで離脱。ピッチ内外の司令塔を欠いた約2カ月は一丸で総合力を高めた。大和田は「全体の底上げができたことで、お互いを信じてプレーできる」とチームの成長を実感する。
4戦連続で1点差ゲームを制し、8大会ぶりの全国切符を獲得した。大和田は「とにかく楽しみ。挑戦者として、夏の代表に続けるように全国制覇を目指したい」と憧れの舞台に胸を躍らせた。
夢実らせた決勝弾
DF佐藤
正智深谷のCB佐藤が値千金のゴールを決め、チームを勝利に導いた。前半18分、「浦学の分析ではこぼれ球に反応できていなかった。自分はそこを狙って思い切り打とう」と左CKのこぼれ球を右足で振り抜き、ゴールネットを揺らした。
普段は守備で貢献するDF。9月の県S1リーグ第12節・市浦和戦で決めた1点が公式戦初ゴールだった。「この埼玉スタジアムの舞台で取れたらかっこいいなと待っていた」。公式戦2度目のゴールが全国選手権出場を手繰り寄せる殊勲の決勝弾となった。
正智深谷が選手権大会で初の8強入りをした2016年度、小学生だった佐藤は生で試合を観戦した。「自分もこのユニホームを着てこの舞台に立ちたいと思って正智に入った。今年こそはと3年間の思いをぶつけた」と夢を実らせた。
名前の飛友(ひゅう)には飛躍して友に恵まれるようにという願いが込められている。「ここがゴールじゃない。日本一を取るためのスタートラインにやっと並べた」と佐藤。最高の仲間とともにさらなる飛躍を期す。
「敗者の顔」なく充実
前半3分、浦和学院の上村(3)がヘディングでゴールを狙う
全てを出し切った浦和学院の選手たちの表情は「敗者の顔」ではなかった。就任1年目の川上監督は「積み上げてきたものを出すことができた。勇気をもってゲームを進められた」と僅差の準優勝に胸を張った。
当初の目標はスタジアムでプレーすることだった。指揮官も3回戦の大宮南戦に勝利して以降は「ボーナスゲーム」と位置付けていた。無欲で戦い、武南、西武台と強敵を次々に撃破してたどり着いた37年ぶりの決勝に選手たちの心は躍った。
前半18分に警戒していたセットプレーから失点。今大会初の失点にもチームが動じることはなかった。堅守の象徴である3バックの一角を担う秋沢は「時間も早かったし焦ることはなかった」。浮足立つことなく、その後は相手の攻撃をはね返した。
得点を取り返すため、左サイドの佐藤にボールを集めゴールへの突破口を探った。ドリブルで何度も仕掛けた佐藤は「決定的な仕事ができなかったが、自信を持ってプレーすることはできた」と最後までその足が止まることはなかった。
1点は遠かったが、埼スタのピッチでプレーできる楽しさを80分間かみしめた。主将の平瀬は「みんなとサッカーをできた環境に感謝したい。チームメート、スタッフ、OBを誇りに思う」と思いをはせて充実の3年間を締めくくった。
3年間の成長 ピッチで示す
GK岡本
浦和学院自慢の3バックを最後方で支えたGK岡本が決勝でも存在感を発揮した。前半17分には強烈なシュートを好セーブ。「個人的には満足したプレーができた。3年間の成長をピッチで出せた」と最後のとりでとしてゴールを守った。
今大会初失点後には「失点した時も下を向かず切り替えられた」とチームを鼓舞した。今大会の躍進で注目度が上がったサッカー部。「(浦学は)野球のイメージが強いので、サッカーのイメージもついてくれれば」と次代へ期待を込めた。
正智深谷から最多5人選出
大会優秀選手
県高体連サッカー専門部は17日、全国高校選手権埼玉大会の優秀選手18人を発表し、8年ぶりの全国大会出場を決めた正智深谷から最多の5人、準優勝の浦和学院から4人が選ばれた。
来月29日初戦 全国制覇目指す
サッカーの第103回全国高校サッカー選手権(12月28日~来年1月13日・国立競技場ほか)の組み合わせ抽選会が18日、東京都内で行われた。埼玉代表で8大会ぶり4度目出場の正智深谷は、2大会連続10度目出場の長崎総合科学大付と12月29日の1回戦(午後0時5分・NACK5スタジアム大宮)で対戦する。
長崎総合科学大付はU―18(18歳以下)プリンスリーグ九州1部で暫定5位につける難敵。同じブロックには前回大会優勝の青森山田など強豪がひしめく。大和田悠主将は「全員で一致団結して優勝を目指す」と力を込めた。
強豪相手に一戦必勝
8大会ぶりに出場する正智深谷は、1回戦で長崎総合科学大付との対戦が決定した。同じブロックには前回王者青森山田、静岡学園、尚志(福島)などプレミアリーグを戦う強豪校がひしめく。小島監督は「勝ち上がる度に強いチームとできるのは楽しみ。一つでも多く戦いたい」と一戦必勝を誓った。
初戦で争う長崎総合科学大付は10度目の出場で、プリンスリーグ九州1部で5位につける難敵。長崎大会決勝は4―0で快勝するなど4戦13得点と高い得点力が武器。体を張ったプレーで粘り強く戦うだけに1点を争う好試合になりそうだ。
正智深谷は過去3度の出場で8大会前のベスト8が最高成績。主将の大和田は「先輩たちの借りを返し、過去の成績を越す。全国制覇を目指したい」と目標を掲げた。
埼玉大会は5試合14得点2失点と攻守に盤石で勝ち上がった。3回戦からの4試合は全て1点差の試合を勝ち切る勝負強さを見せた。大和田は「もっと守備力を高めて県大会でやってきたことを貫く」と全国の舞台でも持ち味を発揮する。
=埼玉新聞2024年11月18日付け1、7面、19日付け1、7面掲載=
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