ひな人形の飾り付けを担当した生徒会の(右から)高柳佑月さん、宮下和さん、福井康介さん=7日午前、川口市上青木の川口市立高校
川口市上青木の川口市立高校図書館で5日から、同校前身の「埼玉県川口市立高等女学校」の卒業生が記念品として1937(昭和12)年3月に寄贈したひな人形が飾られている。生徒らは「平和ではない時代に卒業生が残してくれた人形を通じて歴史を学び、学校の伝統を引き継ぎたい」と話している。
人形は今から88年前、卒業記念品として寄贈された。壮麗な七段飾りで、金びょうぶを背にした内裏雛(ひな)、三人官女、五人ばやしら15体の人形と、繊細な作りの駕籠(かご)や牛車、家具や調度品などが緋毛氈(ひもうせん)の上に並ぶ。
なぜ、ひな人形が卒業記念品として寄贈されたのか、詳しい理由は伝わっていないという。同校は29(同4)年、川口実科高等女学校として創立され、市制施行翌年の34(同9)年、川口市立高等女学校となった。
同校が97年に市立川口総合高校として共学化されて以降3年間を除き、人形は毎年2~3月に校内で飾られてきた。2018年に川口市立高として開校。飾り付けは同校同窓会(板橋智之会長)と生徒会が協力して行われた。
飾り付けを担当した生徒会役員で、同校2年の福井康介さんは「たいへん古い貴重な人形。今は飾る家も少ないと聞く。日本の伝統文化を受け継ぎたい」と話す。同2年の高柳佑月さんは「母親の実家で見た人形、自宅の人形とも少し異なる感じがする。布の色や人形の着物の質感も、当時を感じさせる」と人形が寄贈された当時に思いを寄せる。
いくつかの小物が見られないものの、保存状態はとても良く、学校や社会が移り変わる中でも、人形がこれまで、校内で大切に保管され、扱われてきたことが見て取れる。吉野浩一校長は「伝統の重みを引き継ぎ、現在の本校があることを皆に知ってほしい」と、戦前から受け継がれた人形たちにまなざしを注ぐ。
人形は桃の節句が過ぎる3月上旬まで、飾られる予定という。同校2年の宮下和さんは「この人形を残してくださった、当時の高校で学んだ女性はどんな人だったのか。平和な時代ではなかったかもしれない。当たり前に学ぶことができる今、人形を通して歴史を学び、学校の伝統を引き継いでいきたい」と話した。
=埼玉新聞2025年2月13日付け10面掲載=
サイト内の川口市立高校の基本情報は→こちら
学校の特徴~学校からのメッセージ2024~
普通科(スポーツ科学コース除く)の合格者から、難関大学への進学を目指す特別進学クラスを編成。令和4年度より文部科学省のSSH事業の指定を受け、理数科を中心に先進的な理数教育を実施するとともに、大学との共同研究を推進。スポーツ科学コースでは選手育成のため、教育活動全体で「心・技・体」を鍛える。ネイティブ英語教員チーム10名と日本人英語教員との共同授業により、「話す」「書く」力を養成。今年度より内部進学生が入学。
カテゴリー
よく読まれている記事