埼玉新聞社 高校受験ナビ

第106回全国高校野球埼玉大会 18日間の激闘開幕

開会式で142チーム入場行進

 第106回全国高校野球選手権埼玉大会は11日、県営大宮球場で142チームが参加して開会式が行われ、開幕した。夢の甲子園出場を懸け、18日間にわたる熱戦の火ぶたが切られた。決勝は28日午前10時から同球場で実施される予定。優勝チームは全国高校野球選手権(8月7~23日・甲子園)に出場する。

開会式で入場行進する選手たち=11日午前、県営大宮球場

 

 午前11時、球場のセンターゲートから昨年覇者の浦和学院を先頭に、最後の昌平まで全142チーム、計2658選手が入場行進。大観衆がスタンドから見守る中、熱い夏の開幕が告げられた。
 グラウンドでは浦和学院の三井雄心主将が優勝旗を返還。続いて県高校野球連盟の斎藤明博会長は「無限の可能性を信じミスや失敗を恐れず、走攻守で果敢に挑戦してください」とあいさつした。
 大野元裕知事からの祝辞は堀光敦史副知事が代読。「真剣勝負の一投一打に思いを込め、これまでの成果をいかんなく発揮して存分に野球を楽しんでください」と選手たちを激励した。
 最後に選手代表で豊岡の片岡恭二郎主将が堂々と選手宣誓。「野球と本気で向き合ってきた3年間の集大成を一球に託し、最後まで力の限り戦い抜くことを誓います」と夏に懸ける球児たちの思いを代弁した。
 開幕戦は所沢商羽生実羽生一児玉深谷の連合チームに11―0の五回コールドで快勝した。所沢商は二回無死三塁に年本の右前適時打で先制。臼井の2点適時二塁打など、この回打者10人の猛攻で6点を挙げた。計13安打の打線に加え、投げてはエース臼井が5回参考ながら無安打無得点で試合を締めた。
 大会は第2日の12日から本格化し、8球場で1、2回戦17試合を行う。入場料は一般800円、身分証明書を提示した中高生は200円。引率された少年野球、中学生チーム(引率者・保護者有料)、障害者(障害者手帳を提示)と介添者1人、小学生以下は無料。今夏は1回戦から勝利チームの校歌斉唱が導入された。

 

熱く輝く球児の祭典

開会式で整列する参加142チームの選手たち

選手宣誓 豊岡・片岡主将

感謝を胸に「挑戦」

力強い選手宣誓を披露した豊岡の片岡恭二郎主将

 

 選手宣誓を務めた豊岡の片岡恭二郎主将は「一生に一回の貴重な経験だった」と笑顔で振り返り、大勢の観衆に見守られながら大役を全うした。
 宣誓文は、監督や学年主任など多くの先生らの協力を得て、7月に入ってやっと文言が固まった。「暇があるときは常に頭の中で練習していた」と話し、部活の後にチームメートに聞いてもらうなど、100回を超える練習を重ねて当日に臨んだ。
 「言葉が詰まらないかと、不安と緊張で震えを感じていた」と振り返った本番では、大きな深呼吸を入れてから堂々と宣誓を披露した。特に思いを込めたのは「挑戦」という言葉。日頃から北監督が発していた言葉は思い入れが強く、「自分はネガティブな思考になることが多い。何度も挑戦して成功体験をつかむことが必要だと感じ、この言葉を入れた」と話した。
 初戦はCシードの立教新座。3年生として最後の夏に向け、「絶対に勝ち進んでこれまでサポートしてくれた人たちにプレーで感謝を伝える」と意気込んだ。

選手宣誓全文

 宣誓 私たち埼玉県内の142チームは、今年100周年を迎える甲子園球場を目指し、全力で戦うことを、自らの意志で選び、ここに集まりました。先人が大切に育ててきた日本の文化。次の100年へとつなげていきます。「成功の反対は失敗ではなく挑戦しないこと」。失敗を恐れるのではなく、今この瞬間を楽しみ、考え、行動していく。野球と本気で向き合ってきた3年間の集大成を一球に託し、最後まで力の限り戦い抜くことを誓います。
 令和6年7月11日 選手代表 埼玉県立豊岡高等学校 野球部主将 片岡恭二郎

 

開会式進行 越ケ谷3年 高木さん  春日部共栄3年 吉田さん

強い信頼 大役完遂

司会進行を務めた高木菜々子さん(右)と吉田茉桜さん

 

 開会式の司会は、越ケ谷3年の高木菜々子さんと春日部共栄3年の吉田茉桜さんが務めた。大役を終えた吉田さんは「とにかく一安心。やり切ったと思える出来だった」。高木さんも「しっかりできた。無事に終えられて安心した」と胸をなで下ろした。
 二人は1年の夏から共に東部地区の大会運営を担ってきた。場内アナウンスやスコア記入を行う中で、互いに強い信頼感を築いた。吉田さんは「最後にこのぺアでできて本当によかった」と感無量の言葉。高木さんは「声が大きいのは二人とも同じ。選手を鼓舞する声かけをする」とマネジャーとして夏に臨む。

 

場内アナウンス 花咲徳栄3年 宮元さん  春日部工3年 清水さん

終始緊張も達成感

場内アナウンスを担当した清水しおりさん(右)と宮元桃果さん

 

 花咲徳栄3年の宮元桃果さんと春日部工3年の清水しおりさんは、入場行進中の参加チームを読み上げるなど場内アナウンスを担当した。
 終始緊張しっぱなしだったというが、宮元さんは「楽しかったし達成感がある」。清水さんは「大きなミスなく終えられて安心してます」と振り返った。
 おとなしい性格で気の合う2人は決まった時、宮元さんは「一緒にできてうれしい」と喜び、清水さんは「全部委ねられる」と厚い信頼を寄せる。最後の長い文章を読み終えると、お互いに「よかったよ」と言葉をかけ合いねぎらった。

 

プラカード先導 春日部共栄3年 片山さん

選手と共に 笑顔満開

大会プラカードを持って先導する片山愛深さん(中央)

 

 入場行進では、春日部共栄野球部マネジャー3年の片山愛深さんが大会プラカードを持ち、2658人の選手たちを先導した。「部員と同じ場所を歩ける機会なんてなかなかない。みんなと同じ気持ちで歩けたのがうれしい」と感無量な様子で話した。
 「常に笑顔を心がけて、周りの人にも元気になってもらいたい」と、チャームポイントである笑顔を満開に咲かせた。勝ち進めば、3回戦と決勝で記録員として選手と共にベンチ入りする。「楽しくやるのが一番。みんなには元気に野球をやってほしい」と、持ち前の明るさで仲間たちを支える。

 

堂々の投球ストライク

上柴西小6年 上柴フェニックス 細野さんが始球式

始球式を務めた細野友希さん

 

 深谷市の上柴フェニックス所属で、深谷市立上柴西小6年の細野友希さん(12)が始球式の大役を堂々と務めた。「100点の投球ができて良かった」と笑顔で振り返った。
 兄の影響で4歳ごろから野球を始め、今ではチームの主将を務める。始球式を務めることが決まった時は、ガッツポーズをするほど喜んだという。自分が始球式にチャレンジすることで「チームの人数が増えてほしい」と挑んだ本番は、見事な速球でストライクに入れた。
 「将来の夢は大谷翔平選手のような投打のできるプロ野球選手」と話し、貴重な経験に満足そうな表情を見せた。

 

Aシード・花咲徳栄

絶対王者へ強い闘志

 秋春覇者として挑む花咲徳栄は、今季三つ目の優勝旗を手にして絶対王者となれるか。待ちに待った開幕に主将の生田目は「やっと始まると気が引き締まった。大会直前に追い込んで、勝ち、甲子園に対する思いが強くなっている」と闘志みなぎるチーム状況を口にした。
 全国でもトップクラスの俊足、好打者がそろう攻撃力を誇るだけに、夏の鍵を握るのは投手陣。右腕のエース上原、岡山、和久井、左腕の額川、今井の総力戦が予想され、5人の成長が形となれば勝利を呼び寄せられるだろう。試合が楽しみだという上原は「状態は仕上がっている。みんなでゼロでつないで完封を目指したい」。埼玉で唯一、夏の全国頂点を経験する花咲徳栄が、5年ぶりの甲子園の挑戦権に照準を合わせる。

 

Aシード・昌平

厚い選手層 頂点狙う

 秋春続けて準優勝の昌平は投打で厚い選手層をそろえ、悲願の甲子園初出場を狙う。主将の畑田は、全出場校が集う開会式を前に「楽しみでワクワクしている」と期待を膨らませた。
 春から夏にかけてつながりのある打線を強化した。3番で出場する機会の多かった3年の山根は「自分の後には桜井や渡辺など、いいバッターがそろっている。持ち味の長打力で出塁して、得点の起点となりたい」と決意を新たにした。
 昨年の夏を経験したメンバーも多く残り、実戦経験は豊富。畑田は「どんな試合でも勝てる野球に仕上げてきた。状況に応じた判断をして、目標の甲子園出場に向けて一戦一戦勝利を重ねていきたい」と気を引き締めた。

 

Bシード・山村学園

初甲子園へ気合十分

 山村学園は、1点にこだわる野球で初の甲子園出場を目指す。春季県大会の準決勝では、優勝校の花咲徳栄をあと一歩まで追い詰めた。鈴木主将は「気持ちで負けないように練習してきた。試合を楽しむ準備はできている」と気合十分だ。チームの持ち味は守備力。エース西川を中心に、堅実な野球で勝利をつかみとる。
 選手たちは入学時に、岡野監督から「優勝して、胴上げしてほしい」と伝えられたという。西川は「厳しい面もあるが、普段は面白くて優しい監督。自分たちが優勝して監督を胴上げしたい」と躍進を誓った。

 

Bシード・春日部共栄

「最後の夏」心一つに

 春日部共栄の選手たちは並々ならぬ思いを胸に今大会に挑む。来年3月31日で勇退する本多監督との「最後の夏」を日本一長いものにしようと、心は一つにまとまっている。
 秋季県大会は1回戦敗退に終わったが、冬の厳しい練習を乗り越え、春季県大会は日替わりヒーローが出現し4強入り。打線を支えた4番平尾は「チャンスをものにし、自分が打って勝たせられた」と躍進の理由を話した。夏に向けて最高の準備を整えた選手たち。三田村主将は「『明るく楽しく元気よく』が自分たちのモットー。意識して勝利につなげたい」と力を込めた。

 

前回優勝・浦和学院

粘りの野球に自信

 前回優勝校は秋と春の悔しい敗戦から初心に立ち返った。甲子園の地を経験した主将の三井らが率先して仲間を盛り上げ、技術面だけではなく練習への姿勢や精神面の意識を変えた。
 三井は「守備の乱れは改善され攻守ともにリズムが良くなり、粘り勝つ野球ができている」と自信を見せる。昨夏王者は「全試合を挑戦者の気持ちで臨む」とチャレンジャーとして優勝を目指す。

 

育成功労賞に松崎氏

永年勤続は中野氏選出

育成功労賞を受賞した松崎真氏(左)と永年勤続表彰を受けた中野忠司氏

 

 日本高野連は「育成功労賞」に県野球連盟理事の松崎真氏(58)、永年勤続表彰に同連盟相談役の中野忠司氏(61)を選出した。
 松崎氏は羽生実や松山での指導を経て、10年前からは桶川で指揮を執っている。中野氏は昨年まで同連盟理事で、大井(現ふじみ野)や所沢北を経て、現在は川越西を指導して10年目。計36年間、選手育成に携わってきた。
 松崎氏は「身に余る光栄です。初心に返って、高校野球、連盟の発展に貢献していきたい」と話し、中野氏は「今まで支えてくださった方々に感謝を伝えたい」と喜んだ。

 

23年ぶり開会式で演奏

埼玉栄高吹奏楽部

 第106回全国高校野球選手権埼玉大会が11日、県営大宮球場で開幕した。開会式では吹奏楽の強豪、埼玉栄高の吹奏楽部が力強い音を奏で選手らを鼓舞した。県高野連元理事によると、同校が開幕試合で演奏するのは2001年以来23年ぶりという。開会式終了後に行われた開幕戦でも両校の吹奏楽部員らが演奏でエールを送った。

開会式で演奏する埼玉栄高の吹奏楽部の生徒ら=11日午前、県営大宮

音楽の力で選手を鼓舞

 「音楽の力を信じている」「心の支えになれたら」。開会式でバックネット裏から力強い音を奏でた埼玉栄高の吹奏楽部1年から3年生の149人。顧問の金井良弘教諭(52)は「一体感のある演奏がしたい。貴重な経験」と思いを込める。金井顧問によると同部は1974年に創部し、全日本吹奏楽コンクールに31回の出場経験を誇る。同部主将でバスクラリネットを担当する3年の愛沢創さん(18)は「県内の野球部の皆さんを勇気づけ、元気を与えられるような演奏がしたい。熱い夏を乗り越える心の支えになれたら」と、額に汗をにじませる。
 球児が行進し終えるまでの約30分間、ノンストップで演奏し続けた。選手退場と同時に演奏が終わると開場からは大きな拍手が湧き起こった。副将で3年のフルートを演奏した山本優希さん(17)は「集中力を切らさないように、とにかく主役の球児たちを輝かせられるようにと応援する気持ちだった」と笑顔で振り返った。3年のユーフォニアム担当の磯谷美翔さん(17)は「吹いていて楽しかった。みんな頑張ってほしい。甲子園に行ってほしい」とにっこり。3年のフルート担当の新井煌乃香さん(17)は「吹きながら行進している様子を見ていたがその姿に励まされた」とほほ笑んだ。
 開会式後に行われた所沢商業高と羽生第一高などの連合チームによる開幕戦では、多くの人が応援に駆け付けた。高校2年生の次男が、羽生第一高の吹奏楽部に所属している三森和行さん(53)は「高校野球の応援は吹奏楽部の子にとっても晴れ舞台」とし、「連合チームだが、応援の機会があってよかった」と笑顔だった。応援の影響は、野球部や吹奏楽部だけでなく、ほかの在校生にもあると話すのは、所沢商業高で教員として勤務していた江川英輔さん(61)。「応援は野球部と、ほかの生徒の交流の懸け橋にもなっている」と話した。

 

開幕戦初の女性球審 森田真紀さん

「よかったと思える試合を」

笑顔で球審を務める森田真紀さん(右)。左は羽生実・羽生一・児玉・深谷高連合チームの飯塚拓光選手=11日午後、県営大宮球場

 

 11日に始まった、第106回全国高校野球選手権埼玉大会。開幕戦が開かれた県営大宮球場で、さいたま市岩槻区の中学校教諭、森田真紀さん(47)が、開幕戦で女性初となる球審を務めた。
 「プレー!」。試合開始のコールとともに、マスクをかぶりバックスクリーンを目がけて指をさした。「早くストライクが来いと思った」と森田さん。「緊張するのは当たり前だけど私が緊張したらいけない。女の子が見ても格好いいって思ってもらえるように」とグラウンドの土を踏んだ。
 野球との関わりは幼少の頃から。「父は野球、母はソフトボールをやっていた。ボールが自然と転がっていて遊びが野球だった」と話す。だが森田さんが子どもの頃は、女性であるが故に入部ができなかったという。
 大学から部活で女子軟式野球を始めた。新卒で高校の保健体育の教諭として勤務する傍ら、社会人チームで野球を続けた。自身の練習がないときに野球部の手伝いをする中で「チームに役立てるのでは」と審判を志した。母もかつてソフトボールの審判員をやっていたことから、母には「審判なんてやるもんかと言っていたこともあった」と、笑った。
 現在は、中学校に勤めながらボランティアで審判を担っている。球審は試合をスムーズに進めるためのコーディネーター。「いいか悪いかは分からないが『頑張っていこう』『守備位置まで頑張ろう』と声をかけることもある」という。大役を全うすることにプレッシャーもある。「あの緊迫感と雰囲気の中、一緒にあのグラウンドに立てることを幸せだと思う。どんな試合も勝ち負けが決まるが試合をやってよかったと思ってもらえるようにしたい」

 

=埼玉新聞2024年7月12日付け1面、8面、9面、15面掲載=

 

サイト内の

浦和学院高校の基本情報は→こちら

昌平高校の基本情報は→こちら

豊岡高校の基本情報は→こちら

所沢商業高校の基本情報は→こちら

羽生実業高校の基本情報は→こちら

羽生第一高校の基本情報は→こちら

児玉高校の基本情報は→こちら

深谷高校の基本情報は→こちら

越ヶ谷高校の基本情報は→こちら

春日部共栄高校の基本情報は→こちら

花咲徳栄高校の基本情報は→こちら

春日部工業高校の基本情報は→こちら

山村学園高校の基本情報は→こちら

埼玉栄高校の基本情報は→こちら

カテゴリー

よく読まれている記事

最新の記事

TOP