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「ちんどん」で笑顔届け 幸手桜高校演劇部500公演達成

 派手な衣装とにぎやかな演奏で練り歩き、店舗を宣伝する「ちんどん」。昔懐かしいメロディーを、令和の現代に奏でている高校生がいる。幸手市の県立幸手桜高校の演劇部は、前身の幸手商業高校時代からボランティアで祭りや福祉施設で披露し、今年8月に500公演を達成した。ちんどんを取り入れている部活動は全国的にも珍しい。演劇との二足のわらじをはく部員たちは「みんなに笑顔を届けたい」と張り切っている。

 

幸手市民まつりで、ちんどんを披露する幸手桜高校の演劇部員=10月26日午前、幸手市の県営権現堂公園

 

♪見よう見まね

 「とざい、とーざい。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」。10月26日、幸手市の県営権現堂公園で開かれた幸手市民まつり。雨の中、時代劇のような格好をした演劇部がステージに登場した。この日は「おてもやん」「東京ブギウギ」など6曲を披露。演奏に誘われて観客が集まり、拍手で終演を迎えた。
 ちんどんを始めたのは2006年。この年赴任した顧問の四十物(あいもの)史幸教諭が「福祉施設の高齢者を喜ばせたい」と提案したのがきっかけだった。部内に経験者はおらず、都内のイベントでちんどんを見学し、太鼓やアコーディオン、クラリネットといった道具をそろえた。
 見よう見まねでスタートした高校生ちんどんは評判を呼び、観客や周辺住民から「衣装に使ってほしい」と古い着物が提供されるように。新入部員の獲得にも貢献。2年生の中村光汰さん(16)は「受験生の時に市内の祭りでちんどんを見て、豪快で美しい踊りを自分もやってみたくなった」と入部を決めた。

 

♪全力で楽しむ

 部員は1~3年生14人。平日は校内の部室で毎日2~3時間練習し、週末の公演に備える。本業の演劇も春と秋に行われる大会に向けて手を抜けない。「大変だけど、ちんどんを経験しているおかげで人前でも緊張せず、堂々と演技できる」と部長で3年生の五十嵐悠翔さん(17)。
 演劇部のちんどんは大勢の前で披露することを念頭に、本来のちんどんに大胆なアレンジが加えられている。民謡や歌舞伎の要素を取り入れ、華やかな雰囲気を演出。元気な歌と踊りで盛り上げ、会場に笑顔の輪を広げる。
 その中心となるのがリーダーの「口上」だ。扇子を手にステージを所狭しと動き回り、メンバーを鼓舞する。「お客さんの中には初めてちんどんを見る人もいる。楽しんでもらうため、自分たちも全力で楽しむことを心がけている」。12代目を務める2年生の関谷琉偉斗(るいと)さん(17)は力を込める。

 

♪異世代交流に

 20年近い歴史の中で、最大のピンチはコロナ禍の自粛だった。それまで年間50以上こなしていた公演がゼロに。代替わりに支障が生じ、部員も4人にまで減少した。当時を知る3年生の戸ケ崎茉夕さん(18)は「踊りを直接教わる機会がなく、先輩が残してくれた動画を頼りに独学で覚えた」と振り返る。
 困難を乗り越え、受け継がれてきたちんどんは特に高齢者に喜ばれている。孫世代が懸命に演じる姿を見て「懐かしい」と感激し、生徒の手を握ったまま離さない人も。記念すべき500回目の公演も、白岡市内の福祉施設で開かれた夏祭りだった。
 四十物教諭は「核家族化が進んだ現代の若者は高齢者と接する機会が少ない。生徒たちにはちんどんを通じて、異世代交流や地域のコミュニティーに参加する経験を積みながら、伝統をつないでもらいたい」と話した。

 

=埼玉新聞2025年11月2日付け1面掲載=

 

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