国際交流 次世代へ
江戸時代、12回にわたって日本を訪問した朝鮮通信使の精神を受け継ぎ、多文化共生と国際交流への願いを託した「川越唐人揃(ぞろ)い」が13日、川越市中心部で開かれた。過去2年は新型コロナウイルス感染拡大のため、最大の呼び物となっているパレードは中止。今年は3年ぶりに実施されたが、有志の手作りで2005年に始まったパレードは、今回で最後となった。
パレードに参加したブニエル舞踊団の高校生たち=川越市幸町
川越唐人揃いは、朝鮮通信使を見聞きした川越町人が江戸時代の川越まつりで仮装行列「唐人揃い」を行ったことにちなむ。そのため、通信使の再現にこだわらず、県内在住の外国人のほか、アイヌや沖縄の人々など多様なグループが参加。パフォーマンスを披露しながら、蔵造りの町並みなどを練り歩く。韓国からは今回、釜山市立ブニエル芸術高校の生徒で構成するブニエル舞踊団が参加した。
有志の手作りで開かれてきたイベントは、実行委員会メンバーの高齢化もあり、18回目の今年が区切りとなる。実行委は来年以降も形を変えて継続する意向だが、担い手の世代交代が課題。そんな中、ボランティアを務めた地元高校生らが、韓国から参加したブニエル舞踊団の高校生たちと友情を育んだ。
ボランティアは、市立川越高校生徒会の14人が、プラカードやのぼりを持つ係を任された。県立川越高校放送部の3人は、記録映像の撮影などを担当。このほか、実行委が声をかけた高校生4人が先頭で横断幕を持った。彼らは閉会後、ブニエル舞踊団の8人との交流会に出席。同舞踊団は、釜山市立ブニエル芸術高校で韓国舞踊を専攻する生徒たちで編成されている。
両国の高校生はパレードの途中から時折、言葉を交わすようになり、交流会が始まる頃には打ち解けた雰囲気になった。市立川越高校2年生の大野裕紀さん(16)は「コロナ下で昼は黙食しなければならず、校内でさえ仲間と話す機会が少なくなっている。でも、今日は韓国の友人がつくれてうれしい」と喜ぶ。
片言の日本語や韓国語、英語でコミュニケーションし、写真共有アプリ「インスタグラム」のアカウントを交換。一緒に写真に納まるなどした。同舞踊団の代表学生で2年生の禹薯淨(ウ・ソジョン)さん(17)は「言葉は分からないけれど、韓国の友達と同じように心が通じた。伝統の踊りを見てもらうことができたし、穏やかな感じの川越の町もきれい」と、初めての日本を満喫したようだ。
引率した市立川越高校の中里智哉教諭(33)は「どこまで交流できるのか心配していたが、こんなに盛り上がってくれるとは。これこそ、イベントが目指していた姿そのもの」とほほ笑む。同高生徒会長で2年生の青柳音華(おとは)さん(17)は「日本と韓国の間には難しい問題もあるけれど、若い世代が唐人揃いのすてきな精神を引き継いでいきたい」と誓った。
実行委員会代表の江藤善章さん(72)は「楽しみながら国際交流の取り組みを続けられて良かった」と振り返った。
笑顔で談笑するブニエル舞踊団の高校生(左側)と市立川越高校の生徒たち=13日、川越市連雀町の蓮馨寺
=埼玉新聞2022年11月15日付け11面掲載=
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