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「狭紅茶」世界への道ー狭山工業高校が開発

「今年こそ」一番茶で挑戦

 静岡茶、宇治茶と並び日本三大銘茶にも数えられる狭山茶。その茶葉を使った「和紅茶」の開発が進んでいる。創立61年の歴史を持つ狭山市の県立狭山工業高校(小玉佳也校長)では、同校の通称「狭工(さこう)」と紅茶をかけて名付けた「狭紅茶(さこうちゃ)」を製造。栽培を除き、茶摘みから加工、パッケージングまでを生徒たちが行っている。同校では文化祭や市内のイベントに狭紅茶を提供、周知拡大や、海外品評会での入賞を目指している。

収穫した茶葉を囲んで=5月20日午後、狭山市横田園(学校提供)

 

 紅茶の原料は緑茶と同じチャノキ。収穫した茶葉の加工方法によって、緑茶や紅茶、烏龍茶に分かれる。同校の電子機械科では、2017年から原嶌茂樹教諭を中心に、3年生の課外研究として「狭紅茶」の製造に取り組んでいる。文化祭やイベントでの提供、飲食店とのコラボなどを通じて周知拡大を図ってきた。現在、目標にしているのが、海外品評会での最優秀賞獲得だ。

 フランス・パリで開催される日本茶品評会「ジャパニーズ・ティー・セレクション」では、過去2回の出品経験をもつ「狭紅茶」だが、あと数点のところで入選を逃してきた。「今年こそは」と意気込む生徒たちは、使用茶葉を例年の二番茶から一番茶に変えて、8月のエントリーに臨む。

 5月20日は、「狭紅茶」に使う茶葉の収穫日。協力を仰ぐ市内の茶畑「横田園」に集まった同科の3年生約20人は、オーナーの横田貴弘さんの説明に耳を傾けていた。横田さんによれば、緑茶と紅茶では、同品種の茶葉でも栽培方法が大きく異なるという。「緑茶にとってはいい肥料でも、紅茶に使うと雑味になる。試行錯誤の連続だが、今年こそは入選するのではないか」と自信をのぞかせた。この日は7㌔の茶葉を収穫した。

 生の茶葉をすすって「苦い」と顔をしかめた同科の七戸天斗さん(17)は「茶摘みは初めてだが、そこまで疲れなかった。パリに行きたい」と意気込んだ。

 翌日、狭山工業高校1階のロボット実習室で生徒たちは、収穫した茶葉を萎凋器(いちょうき)に広げた。茶葉を萎れさせるこの工程が紅茶の香りに影響を与えるといい、その後、無心で行った手もみ作業では、生徒たちの狭紅茶に懸ける真剣な思いが伝わった。

生徒自作の発酵機=5月21日午前、狭山工業高校(学校提供)

 手もみを終えた茶葉は発酵機にかけて紅茶になる。工業高校らしく、発酵機も生徒たちが自作した。温度や湿度調整の自動化プログラムも生徒が組んでいる。発酵機担当の青沢琥真さん(17)は「発酵は紅茶作りで一番大事なところ。ガラスの曇りや熱暴走など、課題も見つかったので改善したい」と新しい発酵機の制作に意欲を見せる。

 大手飲料メーカーから商品が発売されるなど、注目を集めている和紅茶。原嶌教諭は「定員割れの工業高校から『狭紅茶』で世界を目指す」と夢を語った。

 

=埼玉新聞2022年6月6日付け1面掲載=

 

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