埼玉新聞社 高校受験ナビ

【令和4年度入試】埼玉県公立高校入試<塾講師の問題分析>

2022年2月25日配信

令和4年度埼玉県公立高校入試

各問題の難易度は?

 

2月24日に実施された埼玉県公立高校入試の問題を県内で教室を展開するスクール21国大セミナー湘南ゼミナールの講師が分析する。

 

  • 国語

昨年度と比べ、全体的に難化

スクール21・安場真 氏

 

  大問1は小説の読解。高校卒業後、就職もアルバイトもうまくいかない青年を主人公とした資料文であった。構成は、小問5題うち記述2題となった。記号選択式問題は主人公の心情を丁寧に追えていれば正解の根拠は見つけやすかっただろう。問2の記述問題は指定語句が示されておらず、場面が切れてしまう文章の傍線部に関する問題だっただけに、解答の手がかりがなかなか見つからず時間のかかってしまった受験生もいたことだろう。

 大問2は漢字・語句・文法など知識分野からの出題。問2の品詞に関する問題はこれまで出題されたことのないタイプのもので、戸惑った受験生が多かったのではないか。

 大問3の論説は、倫理の問題に正解があるか否かを数学や物理の法則と比較しながら論じた資料文で、抽象的な内容であった。数少ない具体例を手がかりにして内容を捉えられたかがポイントとなった。小問構成は例年と同様、5題のうち2題が記述式であった。文章が抽象的だった分、記号問題であっても選択肢の吟味は容易ではなかっただろう。一方、記述問題は指定語句をヒントにすれば比較的書きやすいものであった。

 大問4は古文の読解。主語をしっかりと押さえながら文章を読み進んでいければ平易な内容であった。歴史的仮名遣いの知識を含め、基礎力を問う出題。

 大問5は課題作文。与えられた資料をもとに自分の考えを述べる例年通りの課題であったが、昨年度1つであった資料が2つだった点、資料から読み取った具体的な内容に終始せず、より一般化させた内容で考えを述べる必要があった点で、難しく感じた受験生もいたことだろう。

 

 

  • 数学・学力検査問題

基礎力の定着が重要

国大セミナー・里見淳 氏

 

 大問の構成は4題で、小問数も23問とほぼ例年通り。昨年度、範囲外となった中3の内容は、全て出題された。難易度は昨年度同様と考えられる。

 大問1は小問数16問で配点65点とほぼ例年通り。その中でも計算問題8問は確実に得点したい。根号の値が整数となる自然数nの個数や相似比を利用した問題は、苦戦した受験生も多かったのではないだろうか。また、新学習指導要領で新規追加となった「箱ひげ図」が出題された。その特徴をしっかりと理解していれば、解ける問題だった。

 大問2は作図と関数・図形の問題。作図では特別な直角三角形の辺の比を考えた問題だった。関数・図形の問題はグラフに座標などを図に記入し、平行四辺形の性質を考えれば、正解できた受験生も多かったのではないか。

 大問3では、座標とさいころを融合した関数と確率の問題。(1)の直線の式を求める問題は、関数が苦手な受験生でも正解したい問題。面積が4㎠以上となる確率は、問題文をしっかりと読解しないと分母の数を間違えやすいので要注意。

 大問4では、円と接線に関する証明と線分の長さを求める問題。証明では、図に補助線を引いて、直角三角形を見つけられるかがポイント。

(2)では(1)で証明した関係を利用し、三平方の定理と相似な図形を考えるが、答えを導くための必要な線分を求めるのに苦戦した受験生も多かったと思われる。

 全体として、応用力が必要となる問題も出題されているが、基本的な問題も数多くあるため、基礎学力を定着させることが、高得点へのカギとなっただろう。

 

 

  • 数学・学校選択問題

多角的な視点を持って

国大セミナー・高橋諒平氏

 

 大問数は5問で、昨年と同様。大問3、4で出題数の変更があったが、それ以外は概ね同様の構成であった。

 大問1は計算問題含む小問集合で、出題範囲は幅広い。(6)は新学習指導要領から「箱ひげ図」の出題。(9)は大小関係を比較する文字の正負をグラフから定め、さらに正負が同じもの同士の大小を比較する手順を踏むため、やや難易度が高かった。

 大問2は作図、関数の小問2題の出題。いずれも学力検査問題と同様のテーマだが、設問の条件を変えることで難易度を上げている。(2)は関数だけでなく設問の条件から、図形的な考え方を求められる。

 大問3は会話文形式の出題で、確率、図形の性質、一次関数の式などの知識が総合的に問われた。(1)は半円の弧に対する円周角が90度になることを利用し、条件に合う点を見つけていく。また、(3)は記述形式のため、表現力も問われた。解答用紙の図をうまく利用して対応したい。

 大問4は平面図形。(1)の証明問題は、円と接線の関係を理解していれば容易に記述できたのではないだろうか。(2)は(1)の証明の考え方を活用し、相似な三角形を見つけられると正答へ近づく。

 大問5は空間図形から球と多面体の出題。(1)は球の体積の求め方の利用。基本的な問題なので確実に得点したい。(2)、(3)は球を切断した立体の体積についての出題で、難易度は高い。

 総じて、数学的知識や技能を、設問に応じて活用する能力が求められた。設問ごとに、複数の単元の知識が必要となるので、多角的な視点を持って臨みたい。

 

 

  • 社会

思考力重視の傾向強く

スクール21・児玉宣夫氏

 大問1は世界地理。問4は、国名とその国の穀物の輸出入量と自給率の特色を説明する問題。世界の国名が出題されたのは久しぶり。

 大問2は日本地理。問3は、生乳についての説明と資料の読み取りをもとに答えるもので、単に知識を問うだけではなく、その場で考えて書くという、例年にはない出題形式だった。

 大問3は江戸時代までの歴史。問3の「正誤の組み合わせ」を答える問題は、今年は承久の乱の直後のできごとについてだった。問4は勘合の役割を説明する定番の問題だが、「どちらの国がどちらの国に対して与え」を書く必要があった。いずれも細かい歴史の理解を問う、やや難しい問題である。

 大問4は明治時代以降の歴史。並び替えの問題は、日清日露戦争の前後のできごとを把握していれば答えられたが、問5の湾岸戦争を答える問題はやや難しかった。

 大問5は公民。問3の選挙制度を座標軸上で分類する問題、問4の需要と供給に関する問題は、大問2の問3同様、その場で資料や文章を読み取って答える必要があった。問6では埼玉県入試で馴染みのない国際司法裁判所が出題された。

 大問6は三分野総合。問2で再び並べ替え問題が出題された。土地制度について並べ替える問題で、正確な知識を持っていれば解答は平易だが、選択肢に「太閤検地」などの直接そのことがらを示す用語が使われていないため、難しく感じた受験生もいたのではないか。

 総じて、例年にはない「思考力」を問う問題が多かった。落ち着いて考えればそれほど難しくはないが、どれも時間のかかる問題だった。

 

 

  • 理科

幅広い知識が必要

湘南ゼミナール・力石大輔氏

 

 全体の問題構成や配点はおおむね昨年度通りだった。

 昨年度、新型コロナウイルスの影響で出題されなかった天体分野と新学習指導要領の範囲がどの程度出題されるかが焦点だった。

 大問1は、昨年度と同じく小問数が8問で24点分の出題だったが、問3に新学習指導要領のイオン分野が出題された。難易度は高くないが、過去問などで触れる機会がないので戸惑う受験生もいたのではないか。

 大問2は、天体分野から出題された。昨年度、試験範囲の縮小により出題されなかったことと、近年大問での出題がなかったので、今年は出題されると考えていた受験生は多かったのではないか。ただ、問4以降の月の南中に関する問題や太陽暦と太陰暦の違いから閏月を求める問題は、問題文から与えられた情報をしっかり読み取る必要があり、難易度が高かった。

 大問3は、昨年度に引き続き、人体分野から出題された。難易度自体はそれほど高くはなかったが、幅広い知識が求められるものだった。

 大問4は、気体の性質について問う問題。気体の発生方法と確かめ方など基本的な問題が出題されている一方、記述問題は実験内容から何を意味しているのかを考察しなければならず、難易度は高かった。

 大問5は、力の大きさとばねののびに関する出題だった。斜張橋に関する問題は数学の三平方の定理を使用して答えを求める問いもあり、難易度自体は高かった。しかし、計算過程を書く問題ではなく、選択肢から選ぶ問題になったので例年より答えを導きやすかった。

 

 

  • 英語・学力検査問題

新規内容の対応がカギ

湘南ゼミナール・矢ヶ﨑勇太氏

 

 大問数、大問構成は例年通り。

 大問1はリスニング。出題傾向は昨年度と同様で、いつ・どこで・誰が・どのようにといった部分を聞き取れたかが重要であった。

 大問2は適語句補充。最後の問題のみ傾向、配点ともに変化し、3語以上を埋める問題になった。冠詞や所有格を正しく入れられるかがポイント。

 大問3は英文読解。出題傾向と配点は昨年と同様だった。問3の並べ替え問題では、新学習指導要領で新たに学習した「現在完了進行形」が出題されたが、比較的平易であった。

 大問4は対話文読解。出題傾向は昨年度と同様だった。問2の日本語記述問題では、こちらも新学習指導要領の「原形不定詞」を使った文の和訳が必要だった。問3の並べ替え問題では、関係代名詞が出題された。昨年は範囲縮小で出題されなかったが、省略を見抜く必要があり難易度は高かった。問7は英作文。文脈から1つを選択し、その理由まで説明する問題。時間をかけ過ぎず、正しい文法表現で書けるかが正答のカギとなった。

 大問5は英文読解と自由英作文。出題傾向と配点は昨年と同様だった。問1は本文からの書き抜きであったが、根拠となる文と答えの単語が大きく離れているため、少し難易度が高かった。問3の英作文では、「将来の夢」についての作文を3文以上で行うものだった。おそらく中学校で1度は触れたことのあるテーマであり、比較的書きやすい問題だった。

 新学習指導要領で新たに追加された文法に、しっかり対応できたかが重要であった。

 

 

  • 英語・学校選択問題

新規内容と時間配分

湘南ゼミナール・羽豆翔氏

 

 学習指導要領が改訂され初めての入試だったため、新規文法内容がどの程度出題されるかが焦点だった。

 大問数、大問構成、配点は例年通り。大問1はリスニングで例年と同様の形式。

 大問2は対話文読解。小問数、問題形式はほぼ例年通りだが、問3で一昨年度のような2文での英作文が出題されたため、時間配分に注意が必要となった。また、問2の整序英作文、問4の内容一致問題では、新学習指導要領内容である「原形不定詞」が出題された。

 大問3は「鉛筆」についてのエッセイ。問題形式、小問数に変化はなかった。問1で出題された英問英答では、例年と違い問題と根拠となる文が離れていたため、苦戦した受験生も多かったのではないか。問3の整序英作文で、新学習指導要領内容である「現在完了進行形」、問4の語形変化の問題で「仮定法」が出題された。問6の要約文の問題では「動名詞」「間接疑問」「文型」「不定詞」の基礎知識が問われた。⑵では「間接疑問」と「第5文型」を複合させた問題が出題され、正確な文法知識が求められた。

 大問4は条件英作文。内容は「スピーチを作るために、図書館やコンピューターなどのツールをどのように活用するか」について記述する問題であった。実際に経験したであろう内容で、例年より抽象度が低く、記述しやすい内容であった。

 大問2、3で新学習指導要領内容が出題されたが、比較的解きやすい内容であった。ただ、全体的に時間がかかる問題が増えたため、時間配分の注意が必要だった。

 

=埼玉新聞2022年2月25日付け9面掲載=

 

令和4年度

埼玉県公立高校入試問題は→こちら

(リンク先は、埼玉県教育委員会HP)

カテゴリー

よく読まれている記事

最新の記事

TOP