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【令和7年度入試】入試問題の分析

塾講師による令和7年度入試問題の分析

【国語】

正確に読み解く力を

 大問1は小説の読解。資料文は、怪我をしてしまい合唱コンクールでピアノ伴奏ができなくなってしまった主人公が、クラスの仲間に支えられながら前向きな気持ちを取り戻していくという内容。構成は例年通り小問5題、うち2題が記述問題であった。問2の記述では、解答の材料となる表現は見つけやすかったものの、それらをそのまま書いたのでは指定字数を超えてしまうため、内容を的確にまとめる力が要求された。
 大問2は漢字・文法・話し合いに関する出題。例年は小問が4題であったが、今年は小問2題となり、問2の話し合いに関する問題の中に文法問題が組み込まれた。内容的には平易なものが多く、過去問を練習してきた受験生にとっては取り組みやすかったはず。
 大問3の論説読解は、「プナン社会」という、貧富の格差がない平等主義的な社会におけるリーダーの役割について書かれた資料文に関するもの。小問構成は例年通り5題、うち2題が記述であった。問5の記述問題は空欄前後と本文との対応も見抜きやすく指定語句も比較的近くにあったため、取り組みやすかったかもしれない。ただし、指定語句が複数回本文中に出てくるため、どの箇所を解答に用いるかの正確な判断が問われた。
 大問4は昨年同様、和歌を含む古文の読解。小問数も例年通り4題だった。問2の記述問題はは「何が」にあたる主語を含めて書くことが求められた。
 大問5は例年同様、資料の内容を読み取り自分の考えを書く課題作文。テーマは「食品ロスの削減のためにわたしたちができること」であった。

(スクール21 萩原 ひなた 氏)

 

【数学・学力検査】

幅広い知識が重要

 大問数・大問構成は、例年通りだった。
 大問1は、中学校で習う各単元の基礎的・基本的な知識や技能を問う問題が出題されたが、後半は難易度が高い問題が多かった。(12)の体積を求める問題では、平面として捉え、三平方の定理等を利用して高さを求める必要があった。(14)の斜線部分を求める問題でも、三平方の定理を利用するために補助線を引いて考える必要があった。(15)の整数問題では、最後に2つの自然数を答えるという条件を見落とさずに、しっかり解答できていたかがポイントだった。
 大問2は例年通り、作図と証明からの出題。作図は、例年より比較的取り組みやすかったのではないか。(2)の証明は、平行四辺形になることを証明する過程で、中点連結定理を利用することに気付けたかどうかで差がついた。
 大問3は規則性からの出題だが、学校選択問題と同じであったため、かなり難易度が高かった。特に(1)は、資料の数値だけを一見すると、隣の数との差が1ずつ増える階差数列のように見えるが、実際は、隣同士の和が次の数になっていることに気づけたかがポイントだった。問題文をしっかりと読んで規則性を見出さなければならなかった。
 大問4は、関数が出題された。(1)は式を求める問題であり、確実に得点を重ねたい。(2)は面積が同じという条件からPのⅹ座標を文字で置き、どのように立式するかがポイントであった。
 今年度は、昨年度より若干難化したのではないか。特に、確実に正答できる問題と難易度の高い問題の取捨が大きなポイントだった。

(湘南ゼミナール 力石 大輔 氏)

 

【数学・学校選択】

本質的な理解が重要

 大問の構成や配点は、ほぼ例年通りであった。
 大問1は、例年通りの小問集合だが、比較的得点しやすい問題が多かった。簡単な問題と手順が多い問題が明確に分かれているので、得点しやすい問題を確実に正解できるかがカギ。
 大問2は、(1)で作図、(2)で証明という構成。作図は、図形の定理の深い理解を問われる問題であった。証明は、中点連結定理を用いながら平行四辺形を証明していくもので、比較的取り組みやすく、確実に得点していきたい。
 大問3は、規則性が出題された。(1)(2)では、会話文から操作の手順を理解し、自ら手を動かしてみることで確実に得点を重ねたい。(3)の難易度が高いため、 (1)(2)の問題の中でヒントをつかむことが重要だった。
 大問4は、関数が出題された。3問とも解法が見つけやすい問題であった。(2)の回転体の体積を求める問題は、過去にも何度か類似問題が出題されており、確実に得点したい問題である。(3)は媒介変数を使用する問題だが、計算が少し複雑だったので、計算ミスに気を付けながら解き進めたい。
 大問5は、空間図形が出題された。(1)では、与えられた条件から、引いた補助線が直径であることに気付く必要があった。 (2)では、空間を平面で捉え、条件から正確に平面図形を描くことができるかどうかが問われた。その上で、桁数の多い計算処理も求められた。
 今年度は、比較的得点しやすい問題も多かったので、正答できる問題を確実に得点できるかを試される問題になったといえる。

(湘南ゼミナール 滝 康明 氏)

 

【社会】

読解力や表現力など多角的内容

 大問の構成は6題で小問数も30題とほぼ例年通り。基本的知識を問うだけではなく、資料を読み取り考察する力や論理的思考力が要求され、各大問につき1問論述形式の問題が出された。難易度は昨年同様と考えられる。
 大問1は世界地理で、問1は例年通り「6大陸3大洋」を問う問題だった。問4の統計資料読み取り問題では、単位と二つの年度を落ち着いて確認し、選択肢を一つ一つ吟味する必要がある。
 大問2は日本地理で、今回は関東甲信越と近畿地方が出題された。問2の気温と降水量の読み取りから正解を導く問題は頻出であり、日本各地の気候の特徴を押さえておきたい。問5の地形図読み取りでは、野外観察記録と地図記号の知識から、地図内の場所を特定する力が求められた。
 大問3は近世までの歴史が出題された。問4は資料と文化の正しい組み合わせを求める定番問題で、教科書や資料集を読み、各時代・各文化の特徴を正しく把握しておく必要がある。
 大問4は近現代史で、問3は「政党政治の発達」について、ステップチャート内の穴埋めをする設問だった。用語の内容と論理的な流れを押さえておくと正解へ近づく。
 大問5は公民的分野で、政治・経済・国際社会と幅広く出題された。常日頃から現代社会について考える意識が大事である。
 大問6は地理・歴史・公民の融合問題であった。
 総じて、知識が必要なのは当然として、資料を読み取る力・論理的思考力・出題条件に沿った表現力などを多角的に養っていきたい。

(国大セミナー 白子 宏孝 氏)

 

【理科】

普段から考察する力を

 大問の構成は5題で、設問数も28題と昨年と変更はなかった。3年前から続く計算問題が少ない点は変わらず、初見の資料から考察する問題も引き続き出題された。昨年度までの違いとして今年度は全体的に解きやすい問題が多く平均点が上がることが予想される。
 大問1では小問集合が全範囲から満遍なく8題出題。問4で思考力を問われたが、他の問題では知識問題が多く例年より易しい内容であった。
 大問2では地層、地震に関する問題が5題出題。問3では中学数学の作図、問4では小学算数内容、問5では社会の用語が出題されており、難しい問題ではないが総合的な力を求められた。
 大問3では分解者に関する問題が5題出題。問5では下水処理の微生物のはたらきを記述する問題が出題され語句指定から推測される「酸素」という言葉を解答にどのように入れ込むかがポイントとなった。
 大問4では密度に関する問題が5題出題。問5では与えられた文章から考察をする記述問題が出題されたが語句指定がヒントとなり解きやすい問題であった。
 大問5では磁界に関する問題が5題出題。問5では与えられた文章から事象を考察する問題が出題された。
 今年度も実験結果、図表、資料・文章から考察をする問題が多く出題されている。知識の単純暗記だけではなく、「なぜ、そうなるのか」、「実験結果から分かることは何か」など、普段から考えて勉強をする取り組みが大切である。

(国大セミナー 松野下 健 氏)

 

【英語・学力検査】

全体の難易度は例年並み

 大問数・大問構成は例年通り。
 大問1はリスニング。No3の電車の乗り換え問題がやや複雑だったが、それ以外の難易度は例年並み。聞くべきポイントを正確に押さえ、不要な情報を取捨選択する力が求められた。
 大問2は適語補充と英作文。昨年より文章量が倍増していたが、対応箇所を見比べれば十分に解答可能。英作文の二文目は文法の指定が明確でなく、自由度の高い問題だった。
 大問3は英文読解。「宇宙飛行士」に関する英文は教科書でも頻出で、馴染みがあった受験生も多かっただろう。問2は昨年同様、適切な形容詞を選ぶ問題で、不可算名詞を理解していたかどうかがカギとなった。数や量を表す形容詞の使い分けが得点の分かれ目となった。
 大問4は対話文読解。文章数は変わらないが、2の問3で年表を埋める問題が出題。難度は低め。他の記号問題では選択肢の精読が求められ、問3を含めた記号問題に時間を多く割いた受験生もいたのでは。
 大問5は英文読解と英作文。スピーチ(ことわざについて)を読んで答える形式。本文で触れられた「石の上にも三年」「虎穴に入らずんば虎子を得ず」などのことわざは、一般常識として知っておくと読解の助けになったかもしれない。問1では語句の意味を考えずに選んだ受験生も少なくなかったと推測される。
 細かい部分まで正確に解答しようとすると難易度は高いものの、全体の難易度は例年並み。今後も最新技術が英文のトピックとして出題される可能性が高く、背景知識の蓄積が求められるだろう。

(進学プラザグループ 秋葉 菜々子 氏)

 

【英語・学校選択】

継続的な速読練習を

 大問数は例年通り。
 大問構成・配点には一部変更があり、大問2で小問が1問増え、配点も4点増加。一方、大問3では配点が4点減少した。
 大問1はリスニング。例年通りの傾向だった。
 大問2は「新しい公共交通機関」についての対話文読解。小問が1問増え、問2では日本語解答問題が追加された。問1の整序英作文では不定代名詞・関係代名詞の理解が必要で、問8では仮定法過去と時制に注意が求められた。文法知識を正しく活用できたかが得点の分かれ目となった。
 大問3は「割り箸」についての長文読解。要約文に語を補う問題がなくなり、やや平易な構成。問2の整序英作文は不定詞、問3の語形変化問題は動名詞といった基本文法が中心だった。問6では要約文問題がなくなり、本文内容一致問題が多答形式となった。
 大問4は条件英作文。「将来、中古品を買う人が増えると思うか?」について自分の意見を述べる問題。日常生活にも関係の深いテーマのため、比較的書きやすかったのではないか。
 大問2・大問3の構成や配点には若干の変更があったものの、全体の分量は依然として多く、時間配分に苦戦した受験生も少なくなかったと考えられる。特に、記述問題を含む対話文や長文読解では、限られた時間内で正確に解答する力が求められた。日頃から語彙力・文法力の強化を徹底するとともに、試験本番を想定した時間配分の練習が不可欠である。

(進学プラザグループ 西畑  淳 氏)

 

=埼玉新聞2025年2月27日付け9面掲載=

 

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