2025年2月26日配信
今年度の問題の特徴や難易度を当日分析
2月26日、令和7年度(2025年度)埼玉県公立高校入試学力検査が実施されました。
昨年度(令和6年度)入試では、社会の平均点が65.7点と高かった一方、理科は51.6点と低く、その差は約14点ありました。
はたして今年度の問題や難易度はどうだったのでしょう。
以下、教科ごとに問題構成、出題内容、配点、難易度等について見ていきます。
【国語】
大問構成と配点は昨年までと同じでした。
大問1(長文読解・小説)は河邉徹著「ヒカリノオト」(連作短編集)を題材とした問題でした。出題内容は登場人物の様子や心情などを問うもので例年通りでした。
大問2は主に知識問題といわれるものですが、漢字の読み・書きは特に難しい問題はありませんでした。従来、独立した小問として出題されていた文法問題などは対話文の問題の中に組み込まれた形になりましたが、特に影響はなかったと思われます。
大問3(長文読解・論説文)は、文化人類学者・奥野克巳氏の著書を題材とする問題でした。文章量もそれほど多くなく、比較的読みやすかったと思われます。指定語句を使った記述問題は配点も高く、差がつきそうです。
大問5(作文)は2つの円グラフを資料として、「食品ロス」について自分の考えを書かせる問題でした。身近なテーマであり、体験なども書きやすかったでしょう。書き方の条件等は例年通りでした。
難問は少なく、平均点は昨年並みと予想されます。
(文・梅野弘之)
【数学】
昨年度は学力検査問題、学校選択問題ともに前年とほぼ変わらず平均点は50点台前半となりました。ただ、年度により平均点の変動が大きいため、出題内容や難易度が毎年注目されています
学力検査問題は大問4問であるのは例年通りです。問題構成や配点も大きな変化はありませんでした。
大問1が計算問題を中心に各単元から幅広く出されているのも例年通りで、配点65点も変わりません。(10)、(14)の図形の問題は難しいと感じた人もいたかもしれません。
大問2は作図と証明、大問3は規則性の問題、大問4は関数の問題でした。大問2の証明は平行四辺形になることの証明でしたが、中点連結定理を利用するなど、対策が不十分だと戸惑ったかもしれません。大問3、大問4は一見難しそうに見えますが(1)は十分に解ける問題だったと思います。諦めずにチャレンジできたかどうかがカギになりそうです。
学力検査問題の平均点は昨年並みか、やや下がる程度と予想されます。
学校選択問題は大問5問であること、問題構成や配点も大きな変化はありません。
大問1では(9)など、難易度は高くありませんが、少し時間がかかったかもしれません。
大問2は作図と証明でした。作図はさほど難しくはありませんでしたが、証明問題は少し戸惑った人がいたかもしれません。
大問3は規則性、大問4は関数、大問5は空間図形の問題でした。
大問5では、説明を求める問題がなかったため、取り組みやすかったといえますが、時間内にここまでたどり着けなかった人や、十分な時間を残せなかった人も多いかもしれません。
大問1、2や後半の大問の(1)など比較的難易度の低い問題を確実に解くことがカギとなりそうです。
学校選択問題の平均点は昨年並みか、やや上がる程度と予想されます。
(文・木下絢一)
【社会】
大問構成はこれまでと同じでした。また、大問ごとの配点も昨年同様でした。
大問1(世界地理)の問1では、例年と同じく六大陸三大洋からの出題でした。この傾向は長く続いているため、予測や対策ができた人も多かったと思います。
大問2(日本地理)では、雨温図の問題が出題されていますが、こちらも例年出題されているので、対策を立てやすかったと思います。また地形図を読み取る問題は、一昨年から写真を使った問題に変わっています。距離を求めたり地図記号を問う細かい問題から、地形図全体を読み取り、そこから想像力を働きかける問題へと変わってきています。
大問3(江戸時代までの歴史)では、問1の中国の歴史書を使った問題で、今までとは違った形の問題が出題されました。中国の歴史書の一部を埋める問題ですが、この系統の問題は慣れていない人が多かったと思います。
大問4(明治時代以降の歴史)では、昨年度に続き歴史の流れを図解した問題が出題されました。昨年度から出来事の並び替えに変わり出題されている問題ですが、並び替えよりは点数が取りやすいのではないかと思います。
大問5(公民)は、問2の衆議院の優越に関しての問題で、すべて選ぶ形式であったため、迷いが生じた人がいるかもしれません。また問5の需要と供給に関する問題は、問題に沿って答えを変えるかどうかが問われたと思います。問7ではフェアトレードという言葉が出題されています。ここ数年、こういった新しく生まれてきた考え方や仕組みを問う問題が出題されています。教科書にも載っていないことがあるため、最新の情報にも目を向けることが必要不可欠になってきています。
大問6(3分野総合)では、4つのカードを見て答える形式の問題が出題されています。こちらは令和5年度にも同じような形式の問題が出題されています。各問は、きちんと地理・歴史・公民を学習しておけば解ける問題だと思いますが、最初の図などをしっかりと読み取り、問題の意図を把握することが大切です。
記述問題も例年通り30点で、問題や与えられた量やグラフをしっかり読み取ることはもちろん、自分の考えを言葉にできたかどうかで差がつきそうです。
社会の平均点はここ数年、65点前後となっています。例年と同じ傾向の問題であることと、過去問などをしっかりと学習していれば得点がしやすいことから、平均点は昨年と同じかやや上昇しそうです。
(文・根岸孝之)
【理科】
大問構成と配点は昨年と同じでした。
大問1は各分野からの小問で、基礎的な用語や知識を問う問題が中心でした。取り組みやすい問題が多い一方で、計算問題や化学反応式を書く問題も含まれていました。
大問2から大問5は地学・生物・化学・物理の各分野からの出題です。長い問題文や多くの図表を丁寧に読み取る必要があり、時間がかかります。
大問2(地学分野)は、「地震や地層」に関する問題でした。島の平均移動距離を求める計算問題が目新しいものの、内容を理解できれば比較的簡単な計算で解けます。
大問3(生物分野)は、「微生物」に関する問題でした。中学3年生の範囲からの出題だったため、解きやすかった生徒も多いと思います。
大問4(化学分野)は、「密度」に関する問題でした。問2の密度の計算は、あるポイントに気づけば通常の計算問題ですが、気づかないと4回計算が必要となり、時間がかかった生徒もいたかもしれません。
大問5(物理分野)は、「電流と磁界」に関する問題でした。問5は、見慣れない問題のため、難しく感じたと思います。長い文章を読む必要があり、時間不足で苦労した生徒もいたと思われます。
平均点は、昨年は51.6点と下がりましたが、今年はほぼ変わらないかやや上がる可能性があります。
(文・山本直登)
【英語】
学力検査問題の大問構成、配点などは例年とほぼ同じでした。各小問の設問内容なども特に大きな変化は見られないので、過去問等でしっかり準備してきた人は取り組みやすかったでしょう。
大問1(リスニング)のNO.7はやや難易度が高いので、それ以外の部分で点数が取れるかどうかがカギになりそうです。
英作文は「図書館にマンガを置くことの可否」について意見を書く問題でしたが、比較的書きやすいテーマだったといえるでしょう。英作文の対策をしてきた人は書きやすかったのではないでしょうか。
英作文だけでなく、記述問題では単語のスペルや文法事項の誤りで減点される人が多いようです。自己採点をする際には厳しめにチェックしておくと良いでしょう。
学校選択問題の大問構成や配点についても特に大きな変化はありませんでした。大問1(リスニング)のNO.7、大問2、大問3などにある英問英答問題で細かい減点を減らせたかどうかで差がつきそうです。なお、今回は大問3の要約問題はありませんでした。
学力検査問題にもいえることですが、細かい誤りでの減点が多くなっています。自己採点ではこのあたりもチェックしておきましょう。
英作文は「中古品を買う人が増えるかどうか」について意見を書くという問題でした。学力検査問題同様、比較的書きやすいテーマだったといえるでしょう。スペルや文法について、細かい誤りなく書けたかどうかがカギとなりそうです。
学力検査問題、学校選択問題ともに出題内容・形式に大きな変化はないので、平均点も昨年並みかやや上がるでしょう。
(文・木下絢一)
=「埼玉新聞社 高校受験ナビ」オリジナル記事=
教育ジャーナリストたちによる入試問題のポイント解説動画(YouTube)
※27日に、塾講師による解説の配信を予定しています。(27日付け埼玉新聞掲載)→【令和7年度入試】入試問題の分析
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