授業で実践 主体性も育む
新聞を読み、周囲の人と話し合った内容も交えて感想や意見をまとめる「いっしょに読もう!新聞コンクール」。日本新聞協会が主催し、今年で14回目を迎える。夏休みの宿題として位置付ける学校が多い中、授業での取り組みが効果を上げている。県立久喜工業高校(大澤清校長)は、「読解力や表現力、考える力を醸成するほか、主体性を育む活動」として教材化。昨年度、全学年での実践が評価され、全国学校優秀賞に輝いた。
紙面をめくり、記事を選ぶ生徒=県立久喜工業高校
6月末、同校の製図室には、たくさんの新聞が山積みされ、生徒は、紙面をめくりながら記事を選んでいた。
2年生の機械工作の授業。事前のレクチャーで、黒澤孝祥教諭は、「工業に携わる者の視点で、気になる記事を選んでほしい」と求めた。
最後まで記事を選んでいた山崎蒼矢さん(16)は「新聞って面白い。知らないことがたくさん載っている」と、目を輝かせた。「オフロード向け電動自転車」の記事を選び、「値段がこんなに高いのはなぜだろう」と友人に声をかけた。
選んだ記事を切り抜いた生徒らは、あらためて記事を読み、独自に用意したワークシートに「心に残ったフレーズ」を書き込んだ。応募用紙に直接記入するのではなく、要点となる言葉を抜き出した。
1時間目はここまで。数日後の次回授業に向け、生徒は、記事を家族や友人に読んでもらい、感想を聞き取る。2時間目ではまず、他者の感想や話し合ったことなどをそのままワークシートに記した。
新井ゆかりさん(17)は、化石燃料を転換させたゴム工場の記事を選び、父親に意見を聞いた。「お父さんと話すのは半年ぶりぐらい。びっくりして喜んでいた」と話した。
選んだ記事から心に残った言葉を書き出す生徒ら
続いて、話し合った結果を踏まえて、自分の考えの深まりや提言などを記す。最終的には、文字数を調整しながら応募用紙に清書して仕上げる。黒澤教諭は「時間内に終わらなくていい。ていねいにやろう」と、呼びかけた。
竹内叶夢さん(16)は、女子溶接競技会の特集記事を選び、母親に意見を求めた。「違う年代の人に聞いてみたかった。工業系は男性のイメージがあるが、男女平等に興味を持ってもらえれば」と語った。
国語科の山本麻由子教諭は「教科書を教えるのが一番ではない。新聞は言葉の力があり、見出しを読むことで視野も広がる。新設された言語文化の学習の一つにも位置付く」と指摘した。
同校は、6種8部の新聞を定期購読。図書館はもちろん、廊下のロッカーの上など所々に新聞が置かれ、生徒が日常的に触れられるようにしている。日本新聞協会NIEアドバイザーでもある同校の坂庭千絵教諭は「気になった記事を生徒が選び、毎朝スピーチさせているが、『文章が書けるようになった』『自信がついた』の声が聞かれるようになった」と話した。同校は、資格取得の学校表彰で昨年度、関東甲信越地区でトップにもなっている。
本年度のコンクールは9月8日応募締め切り。問い合わせは、県NIE推進協議会事務局(埼玉新聞社編集局内、☎048・795・9161)へ。
いっしょに読もう!新聞コンクール
日本新聞協会が主催する全国的な新聞感想文コンクール。新聞を読み、気になった記事を切り抜いて、選んだ理由や思ったことを書く。保護者や友人など周囲の人にも同じ記事を読んでもらい感想を記入。話し合った後に考えたことや提言をまとめて応募する。県審査を経て全国審査に進む。
=埼玉新聞2023年7月12日付12面掲載=
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