迷い断ち 憧れの警察官に
21日に行われた県警察学校の卒業式。昨年4月に入校した105人が県内各署へと旅立った。その中でひときわ背筋をピンと伸ばし、表情を引き締めていたのが、成績優秀者に贈られる警察本部長賞に輝いた佐藤弘教(ひろみち)巡査(19)だ。上尾高校野球部出身の佐藤巡査は大学で野球を続けるのか、憧れだった警察官を目指すのか迷った末に、後者を選んだ。「積極的に前に出ることができる警察官になりたい」。名門校の主将として培った誇りと責任を胸に刻み、大きな第一歩を踏みしめた。
佐藤巡査は、警察官として必要な法律を学ぶ法学、犯罪捜査などの実務、逮捕術などの術科の3科目からなる総合成績が卒業生105人の中で1位だった。生粋の努力家を形成したのは、小学3年生から高校まで続けた野球だ。
名門校の主将
上尾高校では自ら主将に立候補。チームを束ねる立場として、謙虚さと責任感の大切さを自覚するようになった。「自分よりもチームが良くなるためにどうするべきかを考えてきた経験は、警察官としての自分の考え方にも影響を与えている」と力を込める。
警察官を志したのは中学生の時。街で地域の安全安心を守るために奔走する警察官の姿を、純粋に「かっこいいと思うようになった」のがきっかけで、野球に打ち込む傍らで強い憧れを抱き続けた。
一方で高校3年の夏、もう一つの夢だった甲子園大会が新型コロナウイルスの影響で中止になった。甲子園を目指すことさえかなわず、不完全燃焼に終わった高校野球。上尾高校の高野和樹監督(54)からは大学に進学し野球を続けることを勧められたが、同時に言われた「自分の道は、絶対に自分で決めろ」という言葉が胸に響いた。葛藤したものの、初志貫徹。警察官を目指すことを心に決めた。
高野監督の脳裏に焼き付いているのが甲子園の中止が決まった絶望の中でも全力疾走を貫き、努力することをやめず、背中で仲間を引っ張っていた姿だ。「弘教は誠実で絶対に手を抜かず、泣き言も言わない誰もが認める主将だった。よく口にしていた『誇りと責任』を大切に真っすぐで正義感のある警察官になってほしい」とエールを送った。
連帯感を絶賛
恩師の期待に応えるように警察学校生活では、礼儀作法を学ぶ最も厳しい授業とされる教練の教科担当に抜てき。集団走や敬礼練習などクラスで行動を共にする時には、クラスで最年少という立場でありながら、野球部で身に付けた〝キャプテンシー〟で周りを鼓舞し「佐藤が指揮する教練の授業は抜群の連帯感」と教官に評されるまでになった。
10カ月の訓練課程を終え、卒業を迎えた佐藤巡査は「県民のために、全力で職務を全うしたい」と決意に満ちた表情。担当教官として、努力する姿を間近で見てきた松沼達也教官(39)は「初任科をやりきったと思わせてくれた存在。現場で大いに活躍してほしい」と背中を押した。
=埼玉新聞2022年1月24日付け14面掲載=
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