「地名は先人のメッセージ」
小川高校社会研究部の生徒ら冊子「小川町 地名風土記」発行
小川町にある県立小川高校の社会研究部の生徒たちが冊子「小川町 地名風土記」(B5判、45㌻)を発行した。1年間、部員8人が週末を中心に地元住民から地名の由来などの聞き取り調査を行い、歴史・民俗を含む風土記的な冊子としてまとめた。部員たちは足で稼いだ地道な地名調査を「地域の人たちと触れ合い、歴史をたどっていくようで、とても楽しかった」と振り返った。
「小川町 地名風土記」を手にする社会研究部員と顧問の大沢謙司教諭=小川町大塚の県立小川高校
社会研究部は、3年かけて小川町の全体調査を行ってきた。最初の2年間は「老舗」をキーワードに明治以降、交通や産業の要衝として繁栄してきた市街地を中心に、この1年は郊外に目を向け「地名」を軸に15カ所(勝呂、靱負、木呂子、木部、奈良梨、伊勢根、中爪、能増、鷹巣、原川、笠原、角山、青山、高谷、高見)を調査した。
例えば「勝呂」。「地元の詳しい方の話によれば、勝呂にある金勝山などの山は古くから希少金属が採れたようで、鉱山採掘技術を持った人がやってきた可能性がある」とし、「渡来人系の勝呂氏は鉱山技術を持っていたと考えられる」という。もう一つの由来は「新編武蔵風土記稿」。長谷部勝呂という人物が、この地に住んでいた記録があり、勝呂の地名は「この人物から来ているというのも有力だと考えられる」などと、紹介している。
土曜日を中心に8割以上が飛び込み調査。「知らない」と断られることも多かった。それでも部員たちは粘り強く集落を歩き、知っている人を探し当てた時は「うれしかった」という。その中で地域の人たちとの触れ合い、会話が「とても楽しかった」と振り返る。中には「自分の住む地域の地名にも興味を持つようになった」と話す部員も。
部長で2年生の加藤瑠さんは「(地域の人たちの協力で)今後のために(冊子を)残していけることを本当にうれしく思います。地名というのは面白いもので、その土地で起こった出来事だったり、口伝えで変わっていったりなどさまざまでした。また、ほかの県や土地と共通の名前があったり、関連しているというのが多くあった。人とのつながりがたくさんあるのだと思うと、歴史をたどっていくようでとても楽しく、貴重な体験でした」としている。今年は「昔の道」をテーマに調査する予定だ。
顧問の大沢謙司教諭は「冊子は地名研究の学術的なものではなく、地域に口頭伝承されている地名伝説を拾い上げたもので、興味深く後世に残したいものも多くあった。地名は先人たちが残してくれた貴重なメッセージであることを、(生徒たちの地道な)調査を通じて改めて痛感した」という。
=埼玉新聞2022年3月19日付け11面掲載=
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