昌平 初の県内4冠
熊谷工、追い上げ及ばず
(最終日、16日・熊谷ラグビー場)
決勝を行い、第1シード昌平が第3シード熊谷工を45―12で退け、2年ぶり5度目の頂点に立った。昌平は県高校新人大会、関東高校大会県予選、7人制埼玉大会の今季県内主要大会でチームとして初の4冠を達成した。
昌平は前半2分にFB小林、同5分にCTB山口が立て続けにトライ。同9分にはラインアウトからフランカー足立が追加点を挙げるなど、計5トライを決めてリードを広げた。後半は守備で苦しい時間が続いたがフランカー井出、SO宮本のトライなどで相手の追い上げを振り切った。
優勝した昌平は全国高校大会(12月27日~来年1月7日・花園ラグビー場)に出場する。
昌平―熊谷工 後半2分、昌平のWTB堀内(中央)が突破を図る=16日、熊谷ラグビー場
体の強さを生かし先手必勝で主導権を奪った昌平が熊谷工に勝利した。
昌平は前半2分にFB小林が先制トライ。同9分にCTB山口が快足で突破して追加点を挙げるなど前後半計7トライで突き放した。守っても、FW陣とバックスが連係した守備でしぶとくリードを守り切った。
熊谷工は前半24分にラインアウトからプロップ関口が押し込んで1トライ。後半8分にCTB冨田がルーズボールを前に蹴りトライを決めたが、追い付けなかった。
好敵手に王者の威厳
昌平―熊谷工 前半19分、昌平のCTB山口が自身2本目のトライを挙げる
意地と意地のぶつかり合いで、昌平が王者の威厳を示した。古豪・熊谷工を下してつかんだ2大会ぶりの花園切符。主将の白鳥は「最初はばらばらだったけれど、チームとして方向性を決めて一個一個やってきた。素直にうれしい」と喜びをかみしめた。
前半2分、スクラムを起点にFB小林が先制。同9分にはラインアウトのこぼれ球を拾ったフランカー足立がそのまま前進突破して追加点を挙げるなど前半だけで33点と一気に主導権を握った。
中盤からは相手の十八番である素早いパス回しにてこずり、同24分に今大会初失点。プロップ小山田は「常にタイトにやる気持ちでタックルを明確にしていった。落ち着いて次に行こうと声をかけた」。最後まで一歩も引かずに激しいフィジカル勝負を戦い抜いた。
FB小林、SH白鳥とともにゲームを組み立てたSO宮本は、キックとランで脅威となる相手のFBをマークするため「バックスが対面、FWが内側から。みんなでカバーした」。冷静な判断力で相手の攻撃起点を抑え最少失点にとどめた。
準優勝に泣いた前回大会決勝の先発メンバーが12人残る布陣で始まった現チーム。今季は県高校新人大会で初優勝を収め、関東高校大会県予選では全4試合無失点の堅守で頂点へ。7人制埼玉大会を制し、花園県予選で4冠を成し遂げた。
県内完全制覇の看板を背負って2大会ぶりの聖地で初の16強入り、そして目標の8強を目指す。船戸監督は「もっとやらなきゃいけないことがある。いろいろと課題が見つかった」と好敵手との熱い決勝で出た課題を全国挑戦への糧とする。
驚異の突破力を発揮
CTB山口
昌平のCTB山口が3トライを挙げる大車輪の活躍を見せた。試合開始早々、敵陣ゴールから10㍍手前でキックチャージ。味方の先制トライにつなげ「昌平は入りが大事。自分がチャージして流れを持って来られて良かった」と胸を張った。
前半5分にはハーフライン中央でボールを手にすると、守備の薄い左サイドラインへ向かって快足を飛ばし横走り。左端から縦に約40㍍独走でトライした。同19分にはFB小林からスイッチでパスを受け中央に、同34分には小林のインゴールへのキックに飛び込んで3トライ目を挙げた。
高校では圧倒的な縦への強さを発揮して1年秋からスタメン入り。3度目の決勝には「去年、一昨年は先輩たちに引っ張ってもらった。今回は自分がその責任を果たさないといけないと思った」と覚悟して臨んだ。
1年時に唯一スタメンとして経験した花園への2年越しの挑戦権を得た。「一戦一戦進んで、今年は自分のトライでチームを勢いづけたい」と並外れたランセンスと馬力十分のプレーでチームを勝利に導く。
視野の広さ生かす
FB小林
昌平のFB小林が持ち前の視野の広さを生かしたキックとパスで、ゲームを支配した。先制トライやキックパスでトライをアシストするなど貢献したが「キックはあまり良くなくてもう一つ伸びてほしかった」と貪欲さをにじませた。
県内4冠を達成し、チームの成長の手応えは十分。「バックスのフィジカルとスピードは全国でも通用する。入りのキックでエリアをどれだけとれるかが大事」と全国大会でも、周囲を生かすため自らの足で流れを引き寄せる。
「成長」見せた2トライ
前半24分、熊谷工のプロップ関口(左)が相手を振り切りトライを奪う
熊谷工が14年ぶりの決勝で観衆を熱くさせる好ゲームを演じた。橋本監督は「昌平からトライを二つ取れて、やってきたラグビーが間違えてなかったのかなと思う」と今大会無失点の相手から奪ったトライを評価した。
5月の関東大会予選準決勝では昌平に0―59で完敗。武器であるボール回しはタックルで封じられた。チームが掲げる倒れてもすぐに立ち上がりプレーする「グラウンドゼロ」を基本に、タックルが来る前の素早いボール回しに磨きをかけた。
前半10分までに3トライを奪われたが、パスワークから自分たちのラグビーを取り戻す。前半24分、プロップ関口がモールから抜け出し反撃のトライ。ゲームキャプテンの渋沢は「サイン通りのプレーだった」と策が見事に的中した。
劣勢の場面でも「全て出し切ろう。このままじゃ終われない」とチームで声をかけ合った。意地を見せたのは後半8分。2年生のCTB冨田が「強みである速さを見せることができた」と自らのキックで前に放ったボールを押さえ込んだ。
二つのトライで示した春からの成長。全校生徒が駆け付けたスタンドからは、ワンプレーごとに大声援が起きた。主将のフッカー小沢は「会場全体で戦っている感じがした」と応援を力に変えた。敗れはしたが、大健闘といえるプレーにスタジアムは万来の拍手に包まれた。
狙い通り鉄壁崩す
FW関口
体重100㌔の重量級FW関口が力強く反撃のトライを奪った。前半24分に「内が空くと思っていた。みんなで考えたサインプレーでトライできてうれしかった」とモールから抜け出し作戦通りの一発を見舞った。
今大会無失点を続けていた鉄壁の相手を崩すと勢いに乗った。計7トライを奪われたが、後半には好守から主導権を握る時間帯も増加。「タックルが強くて食い込まれることもあったけれど、粘ることもできた」と前線の中心選手としてチームを最後まで支えた。
=埼玉新聞2024年11月17日付け9面掲載=
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