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全国高校柔道選手権 結果

【第1日】
女子63㌔ 井田(埼玉栄)初の栄冠
男子無差別 渡辺(埼玉栄)ベスト8

 柔道の第47回全国高校選手権第1日は19日、東京・日本武道館で男女の個人戦各5階級を行い、女子63㌔級で埼玉栄の井田実来が初の栄冠に輝いた。井田は準決勝で南野帆乃夏(福岡・大牟田)に優勢勝ちすると、決勝は延長にもつれた末、織茂永愛(神奈川・桐蔭学園)から内股で技ありを奪い、勝利した。
 男子無差別級は初出場の渡辺蒼織(埼玉栄)が8強入り。女子52㌔級は小野京愛、同無差別級は福田尚央(ともに埼玉栄)がベスト8に入った。
 最終日は20日、男女の団体戦を実施し、県勢は男女の埼玉栄と男子の大宮工が出場する。

 

得意の延長 真価発揮

女子63㌔級決勝 埼玉栄の井田実来(上)が桐蔭学園の織茂永愛から内股で技ありを奪う

 

 埼玉栄の井田が得意の延長戦で真価を発揮した。女子63㌔級を初制覇。優勝を決めると試合場横で見守っていた仲間の元へ駆け寄り、熱く抱擁した。「うれしいの一言。ゴールデンスコアに入ってからは自分らしく粘り強かった」と胸を張った。
 決勝は過去2度対戦経験がある相手だった。「緊張で手が震えていたが、頭は冷静だった」。試合が始まると小林監督の声が鮮明に頭に入った。相手の得意な接近戦を回避し、間合いを図った。延長は一瞬の隙を逃さずに内股で相手を倒した。
 決勝までの6戦で延長が4度。3回戦は7分30秒、準々決勝は6分44秒と豊富なスタミナで勝ち抜いた。「切れる技がない分、泥くさくても粘って勝つ練習をしてきた」と朝練での走り込みや、練習で身に付けた独自の呼吸法を生かした。
 全国は6度目の挑戦だった。中学から両肩に脱臼癖があり、道着の下には常にサポーターを着ける。高校入学後もけがに苦しんだ。「周りの人に比べて柔道は嫌い。だけど負けると悔しいから何度も挑戦する」。全国優勝の喜びはひとしおだ。

 

悔しさ団体戦の糧に

男子無差別級準々決勝 埼玉栄の渡辺蒼織(奥)が木更津総合の三木清夢に技を仕掛ける

 

 埼玉栄の2年渡辺が8強入りした。準々決勝は前回王者の三木と対戦。一時は相手を倒して抑え込みの体制をつくるも、体重が10㌔以上重い相手に徐々に押されていった。「日本一を目指していたので納得できる結果ではない」と悔しがった。
 体重は118㌔。男子無差別級では決して大きい体ではないが、運動量と技の技術で差を埋める。「ここが自分の現在地だと分かった。最大目標である団体優勝に切り替えたい」。埼玉栄のエースが悔しさを糧に、2連覇が懸かる団体戦で躍動する。

 

8強笑顔なし 飛躍誓う16歳
女子52㌔・小野

 女子52㌔級で埼玉栄1年の小野が8強入りした。準々決勝は昨夏の全国高校総体を制した大井(滋賀・比叡山)に僅差負け。「強い相手とは分かっていたが自分の柔道を全くさせてもらえなかった」と3回戦まで見せた前に出る攻めの柔道は影を潜めた。
 中学時代は3度全国の舞台に挑戦し、最高成績は3回戦だった。今大会で自身の記録を更新するも笑顔はなかった。「本当に悔しいし、この結果に満足はしない。埼玉栄で日本一を目指す」。さらなる飛躍を誓った16歳の言葉は力強かった。

 

実力を示すも目標に届かず
女子無差別・福田

 女子無差別級の福田は準々決勝で敗れて目標の3位入賞はならなかった。「勝てた試合。目標まであと少しだったので本当に悔しい」と唇をかんだ。延長戦に突入してペースを握ったが、最後は大外返しで一本取られた。
 大会直前の体調不良で万全の状態ではなかった。それでも高校入学から積み上げた技と体力で全国に力を示した。「調整が悔やまれるが、このレベルで自分の強みは認識できた」。成長が楽しみな1年は確かな手応えをつかんでいた。

 

【最終日】

男子 埼玉栄が2連覇
女子 埼玉栄は3回戦敗退

 柔道の第47回全国高校選手権最終日は20日、東京・日本武道館で男女の団体を行い、5人制の点取り戦で争われた男子は埼玉栄が決勝で大成(愛知)を1―0で下して、2大会連続2度目の頂点に立った。
 男子の埼玉栄は準々決勝で東海大相模(神奈川)に0―0からの代表戦で競り勝つと、準決勝では大牟田(福岡)に3―0で快勝。決勝は先鋒(せんぽう)の新井から4連続で引き分け、大将の坂口が豪快な帯取り返しを決めて優勢勝ちした。
 男子は埼玉栄を除いて争った1月の県高校選手権を制した大宮工が29大会ぶりに出場。1回戦は先鋒の青柳が優勢勝ちで先取するも北海(北海道)に1―2で競り負けた。3人制の点取り戦で行われた女子は埼玉栄が3回戦で木更津総合(千葉)に1―1からの代表戦で敗れた。

 

総合力で再び3冠へ

男子団体決勝 大成―埼玉栄 大将戦で埼玉栄の坂口隼(右)が大成の栗栖秀忠に帯取り返しを決めて優勢勝ち

 

 男子の埼玉栄が総合力の高さを示して2連覇を達成した。試合が終わると選手たちは涙を浮かべて抱き合った。川原監督は「厳しい勝負だった。優勝を目指して一生懸命にやる、子どもたちの努力に感謝したい」と教え子に賛辞を贈った。
 優勝までの道のりは険しかった。3回戦を1―1(一本勝ち)で制すと準々決勝は全国選手権6度優勝の東海大相模と対戦。大将戦まで5者連続引き分けと決着がつかず代表戦にもつれた。会場の視線が一点に集まる中、渡辺が大外刈りで試合を決めた。
 大成(愛知)との決勝は一進一退の攻防が続いた。0―0で大将戦に突入すると坂口は「絶対に負けないこと。仲間の思いを背負って畳に上がった」。試合終了間際、次鋒・井桁から教わったという帯取り返しで豪快に相手を投げた。
 昨年に〝高校3冠〟を達成した時の平野、堀のような絶対的エースは不在。団体前日の個人戦でも、4強進出者はいなかった。それでも主将の渡辺は「個々の能力をカバーできるだけの団結力がある」とチームの強みを誇る。
 この勝利で高校年代の男子団体を4大会連続で制覇。埼玉栄が絶対王者の地位を確立しつつある。新井は「鍛えるところはまだ多い。歯を食いしばって練習して、2年連続の3冠を目指したい」。今夏の金鷲旗、高校総体に向けて研さんが続く。

 

悔しさ糧に成長誓う

女子団体3回戦 木更津総合―埼玉栄 先鋒戦で埼玉栄の小野京愛(右)が木更津総合の若林美優を攻める

 

 女子の埼玉栄は前回大会と同じく3回戦で涙をのんだ。各階級に実力者がそろい、4強入りを目指していただけに、選手は試合後に泣き崩れた。主将で中堅の井田は「いい流れができれば強いが、チームとしてかみ合わなかった」と悔やんだ。
 前日の個人62㌔級で優勝した井田を柱に52㌔級8強の小野、無差別級8強の福田と個の能力は高い。先鋒(せんぽう)の小野は「(井田)実来先輩を中心にインターハイに向けてまた頑張りたい」。全国で味わった悔し涙を成長の糧にする。

 

30年ぶり出場の大宮工
初戦涙も力出し切る

 男子の大宮工は30年ぶりの全国選手権で持てる力を出し切った。待ち望んだ舞台は5人全員が3分間を戦い抜き、大将戦までもつれた。大将の梅津は「厳しい練習を積んでやっと全国に来られた。最後までやり切った」と大粒の涙を拭った。
 今回が9度目の全国選手権出場となる伝統校。1月に全国出場が決まるとOBが練習に駆け付け、選手をサポートした。この日も観客席から大きな声援を受け、主将の中堅坂本は「いい試合をして感謝を示せた」と充実感をにじませた。

 

=埼玉新聞2025年3月20日付け7面、21日付け5面掲載=

 

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