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慶応志木高校野球部 19歳指揮官 勝負の夏

 第106回全国高校野球選手権埼玉大会が7月11日に開幕する。慶応志木を率いるのは、同校OBで慶大2年の石塚大起監督。今夏、県内最年少となる19歳の若き指揮官は「学生だからこそできる指導で、野球だけでなく良いチームだと思ってもらえるようにしたい」と後輩たちとともに勝負の夏へと出陣する。

 

選手たちの輪の中で、誰よりも声を出して汗を流す石塚大起監督(中央)=4日午後、志木市本町の慶応志木高校グラウンド

 

 「もっと声出せ」。6月上旬、慶応志木のグラウンドでは弟とも言える年の差の後輩たちに混ざり、一際大きな声で練習に参加する指揮官の姿があった。声の主は就任1年に満たない石塚監督。明るい声の下、選手たちはリラックスした表情で汗を流していた。
 石塚監督は大学に通いながら、週4日母校で指導。週2日のアルバイトもある多忙の日々だが、「時間と体力との勝負だけど、選手の成長が見られて楽しい。貴重な経験」と前向きに学生生活と監督の両立を図る。
 忘れられない試合がある。2022年夏、同校は4回戦で川越工に5―6で敗戦。九回表に同点に追い付き、なお1死一、二塁で当時3年生の4番石塚さんに打席が回った。結果は中飛。直後にサヨナラ負けした。「高校野球に悔いが残ってしまった」
 大学進学後、硬式野球部でプレーを続ける選択肢もあったが、恩師である柴田康男前監督(66)が23年春に定年退職。夏での監督退任に伴い、後任の話が舞い込んだ。先輩学生コーチらからの信頼も厚く、「とにかく責任感があって面倒見が良い」(柴田前監督)という人柄を見込まれた。
 石塚さんは高校時代、バッティングチーフとして練習の目標設定や手本となる行動でチームをけん引。野球を通して人としての成長を実感した。「柴田先生ほど選手のことを思っている人はいない。大事なことをたくさん教わった恩返しがしたい」と打診を快諾した。
 しかし、2歳ほどしか年齢の変わらない選手たちを束ねるのは容易ではなかった。恩師のような威厳ある監督像を描いたが、公式戦初采配となった秋季南部地区大会で南稜に五回コールド負けを喫した。
 試行錯誤の結果、高校時代自身の代で掲げていた「プラスの言葉」というスローガンに回帰。試合でのマイナスな発言を一切禁じた。「手本になるしかない」と先陣を切って声を出した。
 指導方法を変え迎えた春季大会。南部地区代表決定戦で昨春4強の大宮東に完封勝利。県大会でも1勝を挙げるなど、結果がついてきた。永島康太朗主将(17)は「明るく楽しくポジティブに野球ができている。夏は石塚さんのために勝ちたい」と力を込める。
 選手にとっても監督にとっても夏は特別な大会だ。指導者として初めての夏を迎える石塚さんは「現役とは全く違う緊張感。自分たちらしく強豪を倒して、3年生ともっと一緒にプレーし続けたい」。夏の最高成績である1966年以来、58年ぶりの8強入りを目標に掲げた。

 

=埼玉新聞2024年6月27日付け7面掲載=

 

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