実地で情報の世界広げる
県立浦和高校(日吉亨校長)=さいたま市浦和区=で、新聞を使って情報の伝え方や見極め方を学ぶ公民科の授業が行われた。生徒らは記事をじっくりと読んだ後、新聞ができるまでの過程やインターネット上で流布される情報の危うさについてをプロから受講。「まわし読み新聞」の手法で実際に紙面を作成し、情報との付き合い方を実地で深めた。
新聞の作られ方と情報の見極め方について学んだ生徒ら=さいたま市浦和区、県立浦和高校
同校は新聞を教育に活用するNIE(教育に新聞を)の実践指定校。指定校には新聞8紙が無償で提供され、2年間にわたって実践を行う。今回の授業はその一環で、3年生を対象に3時限で展開。生徒はまず、1時間目の授業で、数種類の新聞を読み込み、気になった記事を各自3本ずつ選んだ。それらを切り抜き、グループ内でプレゼンテーション。内容の説明とともに選んだ理由を発表し合い、記事の優先順位を決めた。普段は主に、テレビやネットで情報を得ているという生徒らは「多様性があり、とても面白かった」と笑顔を見せた。
2時間目は、新聞社の編集担当者を招き、新聞記事とネット情報との違いを学んだ。講師を務めたのは、埼玉新聞社編集管理幹で、県NIE推進協議会事務局長の吉田俊一氏。「新聞記者は原則として、当事者からの1次情報を取材、情報源を示しながら記事を書いている」と解説。デスクや校閲など複数の目で精査した内容が、節度ある表現で世の中に発信されると説いた。
加えて、意味が端的に伝わるように付けられた見出しやメリハリのあるレイアウト、結論を第1段落に書くなど、分かりやすく伝えるための工夫を強調した。一方で、アメリカ大統領選やウクライナ戦争でのフェイクニュースを紹介。さらに、真偽不明な情報が日常的に流布されているとして、ネット記事の実例を挙げながら新聞との違いを明示した。
吉田氏は「速報性に富み、検索も簡単なネットは便利なツールだが、そこで触れる内容は『玉石混交』。時には危険なこともある。情報源を見極め、最終的には自分の頭でよく考えることが大切」と語りかけた。樋口聡太さん(18)は「子どもの頃から新聞が好き。今もメディアの中で一番信頼している。将来は医師を目指しており、スタッフや患者さんと良い関わりを築くためにも、新聞の力でもっと自分を磨きたい」と感想を話した。
3時間目は、NIEアドバイザーの小谷野弘子教諭らの指導のもと、グループごとにテーマを決めて紙面の切り抜きを模造紙に貼り、オリジナルの新聞を作る「まわし読み新聞」に取り組んだ。
切り抜いた記事でオリジナルの紙面を作る生徒=さいたま市浦和区、県立浦和高校
「見出し、見出し」「コメントを入れないと」など、互いに声をかけ合い知恵を絞りながら、熱心に手を動かす生徒ら。完成した新聞を張り出し、投票で優秀作品が選ばれると、教室内に歓声と拍手が響いた。 授業を担当した同校の高橋律夫教諭は、「新聞は実際に手に取ることが重要。お互いに読み合うことで、自分の世界を広げることができる」と、学びを通しての成長に期待を寄せていた。
作成した「まわし読み新聞」
=埼玉新聞2023年2月8日付け5面掲載=
サイト内の
県立浦和高校の基本情報は→こちら
カテゴリー
よく読まれている記事