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法曹三者と高校生が地裁で模擬裁判員裁判

成人年齢引き下げに対応
評議に緊張「良い経験」

 

 裁判官、検察官、弁護士の法曹三者と裁判員経験者、高校生が、架空の事件を題材に議論する模擬裁判員裁判が16日、さいたま地裁で行われた。成人年齢の引き下げに伴い2月から、18、19歳も裁判員裁判に参加するようになり、裁判員裁判について若者に知ってもらおうと企画。参加した高校生8人は裁判員経験者からの意見も聞き、「緊張したけど、良い経験になった」などと感想を語った。

 

模擬裁判員裁判での証人尋問を行う参加者ら=16日午後2時13分ごろ、さいたま地裁

 

 「被告人は死ぬ危険性のある行為と分かって足を刺したと思いますか」。模擬裁判の評議で、裁判官が参加者らに質問した。初めは重たい雰囲気だったが、「評議は(意見の)乗り降り自由。自分の意見を言って周りの意見を聞くことが大事」とアドバイスすると、重たかった高校生の口が開き始めた。
 題材は、弁当店の前で肩がぶつかった男性2人がトラブルになり、店にあった果物ナイフで相手の足を刺したとする架空の事件。検察官が殺人未遂罪で起訴した事件について、殺意の有無や程度を争点に議論した。「果物ナイフで足を刺したのだから、被告人は危険とまでは思っていなかったかもしれない」と推測する一方、「どこを刺しても動脈に刺されば死ぬ可能性がある。胸も足もかわらない」という意見も。犯行によって死に至る危険性については認めたものの、明確な結論は出なかった。
 評議後の意見交換会で高校生は「裁判員同士が仲良くなって意見が言いづらくなることは」と質問。裁判員経験者の50代女性は「一人一人違う意見を述べていた。言いづらくなるということはなかった」と答えた。
 昨年、裁判員裁判に参加した20代女性は「1人の人間の人生を左右することになるので、きちんと考えて判決を出すことを心がけた」という。難しい事件内容だったが、「周りの人と助け合いながら議論を進めることができた」と振り返った。
 模擬裁判に参加した県立蕨高校3年小林祐里奈さん(18)は「評議の雰囲気に緊張したが、思っていたより硬くなく、話しやすかった」と印象を語る。県立浦和第一女子高校1年渡辺琴音さん(16)は「どんなに話し合っても分からない部分があると思った。割り込んでも大丈夫と言われ、みんなと真剣に議論ができた」と話した。
 裁判員選任の通知が来たら「怖いことだが、経験としてとても良いと思ったので、参加する」と小林さん。渡辺さんは「18歳で通知が来ると大学受験とかぶってしまうので、自分の生活が落ち着いたら参加したい」と話した。
 同地裁第5刑事部の市原隆一郎裁判官は「裁判員裁判の参加は社会に貢献するという面もある。若い方の貴重な意見で議論を深めてほしい」と呼びかけた。

 

=埼玉新聞2023年3月29日付け19面掲載=

 

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