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皆野高校の誇りいつまでも やり投げリオ五輪代表・新井涼平選手

引退表明に恩師ねぎらい

 陸上男子やり投げで2016年リオデジャネイロ五輪代表の新井涼平選手(34)=長瀞町出身、皆野高出=が5日、今季限りでの引退を表明した。新井選手は高校時代にやり投げの専門的な指導を受けてこなかったが、温かく見守ってきた恩師たちからは「本当によく頑張った」「お疲れさま」などとねぎらいの言葉が送られている。

母校で講演とやり投げの実演を行った新井涼平選手=2016年12月12日、皆野町大渕の県立皆野高校

 

 新井選手は長瀞町立長瀞第一小、長瀞中を経て、県立皆野高校に進学。高校1年生の時、テレビで見た世界陸上のやり投げに衝撃を受け、競技を始めた。やり投げで日本歴代3位の86㍍83㌢の記録を持ち、日本選手権では14年から7連覇など計8度の優勝を誇る。
 5日の東京・国立競技場での日本選手権は7位で、新井選手は「もう体力的に限界。トップレベルでできる体力がなくて練習が積めない。シーズンに入る前から覚悟していた」と明かした。「喜怒哀楽全てを経験させてもらった競技人生。やり投げに全てが詰まっている。しっかり最後まで楽しみたい」と語った。
 「最初からセンスはあったが、まさかここまでの選手になるとは」。新井選手が高校1年の時に陸上部顧問で、現在は県立深谷商業高校に勤務する福嶋壮彦教諭(49)は当時を振り返る。陸上経験のある福嶋教諭は、新井選手が高校2年の時に別の高校に異動したが、可能性を見いだして2、3年生の時も指導してきた。
 同じく深谷商業高校に勤務する内田聡美教諭(47)は新井選手が高校3年の時に陸上部の顧問を担当。「高校時代は大会でも『緊張しない』と言っていた。高校時代から『けがをしないで長く競技を続けて』と言ってきたが、本当によく頑張ってくれた」と教え子の姿に目を細める。

新井涼平選手が卒業した皆野高校時代の卒業アルバムで当時を振り返る福嶋壮彦教諭(右)と内田聡美教諭=25日、深谷市原郷の県立深谷商業高校

 新井選手は高校時代、自己流の独特な投げ方をしていた。大会に出場すると陸上関係者から一般的な投げ方に修正するアドバイスを受けることもあったが、2人は枠にはめず、新井選手の投げ方を尊重。最後の日本選手権では2人も試合を観戦し、内田教諭は「おかげでいろいろな経験をさせてもらった」と感謝した。福嶋教諭も「第一線を退くのは残念だが、少し休んだらマスターズでも競技を続けてもらえれば」と期待を込めた。
 母校の皆野高校は来年度に県立秩父高校と統合され、創立60年の歴史に幕を閉じる。新井選手は母校で講演したり、体育祭に参加して、やり投げも披露するなどして交流を深めてきた。皆野高校の浅見和義校長(64)は「皆で応援してきた新井涼平選手は皆野高校の誇り」と話している。

 

=埼玉新聞2025年7月27日付け15面掲載=

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