さいたま市立大宮北高校の生徒20人が先月末、2日間にわたり福島県を訪れ、富岡町役場や双葉町の原子力災害伝承館、「ふたば未来学園高校」などを見学した。生徒らは、現地の人から東日本大震災から11年たった現在も復興途中の現状や課題などを取材。「自分たちに何ができるか」を考え、発信することの大切さなどを学んだ。
タブレットを使用しながら被災地復興について感じたことなどを発表する生徒ら=さいたま市北区の同市立大宮北高校
同校は4年前から、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の一環で、「福島復興探求学」を実施。新型コロナウイルスの影響でここ2年間は現地に行けなかったが、希望生徒が福島を訪れている。きっかけは、前任のSSH担当教諭が海外研修に出向いた際、海外の人からしきりに「フクシマ」の現状を聞かれたこと。世界的には現在進行形の日本の問題と捉えるべきと考えていた際、福島県いわき市出身の待谷亮介教諭が同校に赴任。前任の中学校でも地元・福島の現状を伝える活動をしていた同教諭は「日本国内でも割と無関心になりつつある。今回、現地に行った生徒も震災当時は幼稚園児や保育園児であまり記憶にない。まだ復興途中の現状と課題を把握し、風化させないことが目的」とした。
事後発表会ではグループに分かれ、参加者同士で感じたことを報告。その後、「福島復興のために自分たちができることは何か」をテーマに話し合った。生徒からは「若い世代に福島の現状を伝えるため、正しい情報を身に付ける」「震災前の状態に戻すことが復興ではなく、被災者の心のケアをしながら、より産業、農業に富んだ街づくりをする」などの意見が出た。
参加した同校1年生の岩本健吾さん(16)は「これまでは社会の授業で聞く知識だけだったが、実際に現地に行って被害の大きさや食べ物などで風評被害に遭っていることを実感したし、避難訓練の大切さも学んだ。家族はもちろん、周りの人たちに福島の人たちが抱える問題や課題を伝えたい」と感想を話した。
待谷教諭は「現地に行く前と行った後で生徒の問題意識が変わったはず。今後はこの20人が具体的な行動に移すことで、正しい情報を世間に発信してもらえれば」と話していた。
=埼玉新聞2022年11月25日付け10面掲載=
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