伝統継承の大切さ共有
秩父神社例大祭・秩父夜祭の行事の一つ、「蚕糸(さんし)祭」が4日、秩父市番場町の同神社で行われた。秩父地域の養蚕農家や関係者ら約20人が出席。1年間の繭の生産に感謝をささげ、来年の増産を祈願した。今年は、蚕の飼育に取り組んでいる県立川越総合高校の生徒が生産した繭も初めて奉献され、蚕糸業の歴史の重みと、伝統産業継承の大切さを全員で共有した。
生産した繭を奉献する川越総合高校3年の浅見桜さん(右)=4日午前、秩父市番場町の秩父神社
秩父地域が生糸や絹織物の産地として繁栄していた頃、秩父夜祭は「お蚕まつり」と呼ばれ、多くの養蚕農家が繭を大神様に奉納していた。毎年12月2、3日に市街地を巡行する各町会の屋台や笠鉾(かさぼこ)は、絹織物業の財力で豪華になったといわれている。
秩父地域の養蚕農家は1930年代に8千軒ほどあったが、後継者不足や生糸需要の低迷で、蚕糸業は衰退の一途をたどっている。今年の蚕糸祭に参加した養蚕農家は、昨年と同様、秩父市の久米悠平さん(35)と長瀞町の瀬能紀夫さん(83)の2軒のみだった。
式典では、JAちちぶ養蚕部会会長の久米さんが秩父地域で生産した繭を、川越総合高校3年の浅見桜さん(18)が生徒有志10人で育てた繭1・5㌔を神前に奉献し、薗田建宮司が祝詞を奏上した。
川越総合高校は、1920年に開校した「県立蚕業学校」が前身で、昭和初期は養蚕実習などが行われていた。2021年4月に創立100周年事業の一環で、「養蚕資料室」を校内に新設。現在は、生徒有志が蚕を飼育し、毎年の文化祭で展示している。
生徒代表で式典に参加した浅見さんは「授業で蚕糸業について知り、自分たちで実際に蚕を育てることで、伝統と向き合う大切さを知った。以前から秩父神社の蚕糸祭に参加したいと思っていたので、願いがかなった」と笑顔で話した。
60年以上、養蚕に携わっている瀬能さんは「養蚕の歴史や技術を学ぶ場は希少になってしまったが、今回、高校生が参加してくれたので、まだわずかでも継承されているのだと実感している」とうれしそうに語った。
=埼玉新聞2024年12月5日付け15面掲載=
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