今年一年の繭を大神様に奉献する「蚕糸(さんし)祭」が4日、秩父市番場町の秩父神社で行われた。秩父地域の養蚕農家や関係者約20人と、蚕の飼育に取り組んでいる県立川越総合高校の生徒が参加。繭の生産に感謝をささげ、来年の増産などを祈願した。

生徒たちで育てた繭を奉納する川越総合高校2年の小門秀弥さん=4日午前、秩父市番場町の秩父神社
蚕糸祭は秩父夜祭の行事の一つ。秩父地域で養蚕が盛んだったころ、秩父夜祭は「お蚕まつり」と呼ばれ、多くの養蚕関係者が参拝した。1930年代に8千軒ほどあった秩父地域の養蚕農家は、2023年以降、秩父市の久米悠平さん(36)と、長瀞町の瀬能紀夫さん(84)宅の2軒のみに。JAちちぶ養蚕部会の今年の繭の出荷量は約300㌔だった。
久米さんが秩父地域で生産した繭を、同校2年の小門秀弥さん(17)は生徒有志13人で育てた繭1㌔を神前に奉納し、薗田建宮司が祝詞を奏上した。
同校は昨年に続いての参加。県立蚕業学校が前身で、21年に養蚕資料室が校内に新設されて以降は毎年、生徒が蚕を飼育し、文化祭で展示などを行っている。小門さんは「自分たちで育て、秩父神社に奉納できるのはとても貴重な経験」、同校2年の伊藤咲希さん(16)は「今年は猛暑の影響か蚕の食欲がなく、繭が小さかった。飼育の難しさを実感している」と語った。
同養蚕部会の瀬能さんは「養蚕農家が減少の一途をたどる中、若い人たちが養蚕について学ぶことで、日本の貴重な伝統産業が継承されていくことを願いたい」と話していた。
=埼玉新聞2025年12月5日付け14面掲載=
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