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笑顔届ける高校生社長 能登地震支援きっかけに企業

 「いらっしゃいませ―」。キッチンカー「LIL KITCHEN(リルキッチン)」の中から、はつらつとした声が聞こえる。調理するのは県立上尾南高校3年の八木杏妃(あんび)さん(18)。現役高校生でありながら、キッチンカーを経営する〝高校生社長〟だ。毎週日曜日に上尾や伊奈、白岡のマルシェやイベントに出店。昨年、能登半島地震の復興支援炊き出しに参加し、起業の気持ちが芽生えた。「おいしいトルティーロールと笑顔を届けたい」と、八木さんは張り切る。

 

大人気の「ミートトルティーロール」を笑顔で差し出す八木杏妃さん=白岡市千駄野の「しらおかテラス」

 

◇客から経営者に

 提供するのは、牛肉にこだわったオリジナル「ミートトルティーロール」(税込み550円)やフランクフルト(2本で同500円)、ホットココア(同300円)など約10種類。材料の仕入れから仕込み、調理、販売まで全て行う。「車の運転は父ですけどね」とちゃめっ気交じりに笑う。
 「私、キッチンカーが大好きなんです」。中学時代から客として、上尾市の商業施設にあったキッチンカーに通った。高校生になると早速、アルバイトで働き始めた。
 キッチンカーを運営する「HUENT LINKS(ヒューエント リンクス)」の川島瑞稀社長は、八木さんのアルバイト中の人柄が伝わるエピソードを披露する。「聴覚障害者のお客さんが来た時、すぐに車から飛び出して、近くにあった段ボールを破き、ペンで筆談をしていた。見ていてびっくり。マニュアルはないのに、自分で考えて接客していた。感動しましたね」

 

◇昨年のれん分け

 昨年6月、石川県輪島市で開催した能登半島地震の復興支援花火大会の炊き出しに、八木さんも参加した。キッチンカーで焼きそばを提供。「泣いて喜んでもらえたのは初めて。うれしかった」。起業を考えるきっかけになった。
 「ヒューエント リンクス」から〝のれん分け〟の形で、昨年9月に開業。食品衛生責任者の資格を取り、税務署への開業届も自ら提出。個人事業主となった。店名をリルキッチンと名付けたのは「小さな幸せを届けたい」思いから。「お金の管理もちゃんとしなきゃならない。失敗したら自分の責任」と、経営者としての自覚も芽生えてきた。

 

◇夢は「床屋さん」

 中学時代は陸上部の副部長、高校では筝曲(そうきょく)部の部長を務めた。将来は理容師を目指し、この春から美容関係の専門学校に通う。キッチンカーの経営は、あくまで夢をかなえるための手段。「親に頼らず学費を出せるようになりたい」としっかり前を向く。
 会社員の父洋祐さん(45)が休日を返上し、運転を担当。忙しい時は調理なども手伝う。「自立への第一歩としてチャンスをもらえた。身近でサポートしていければ」と洋祐さんは娘を見守る。高校の文化祭に出店した際は、10万円超の売り上げを記録したことも。夏のイベントでは母や妹、弟など家族総出で八木さんを手伝った。
 この冬休みは上尾市内各地で、ほぼ毎日出店した。「新メニューでフライドポテトを出したいと思って、味や盛り付けを試作中」と笑顔がはじける八木さん。キッチンカーと「床屋さん」。夢をつかむまで、八木さんはキッチンカーで笑顔を運び届ける。
 問い合わせは、LIL KITCHENの写真共有アプリ「インスタグラム」かメール(huentlinks@gmail.com)へ。

 

=埼玉新聞2026年1月7日付け19面掲載=

 

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