開会式139チーム行進
第107回全国高校野球選手権埼玉大会は9日、県営大宮球場で139チームが参加して開会式が行われ、開幕した。夢の甲子園出場を懸け、19日間にわたる熱戦の火ぶたが切られた。決勝は27日午前10時から県営大宮球場で実施予定。優勝チームが全国高校野球選手権(8月5~22日・甲子園)の出場権を獲得する。
開会式で堂々と入場行進する選手たち=9日午前、さいたま市の県営大宮球場
午前11時、球場のセンターゲートから昨夏覇者の花咲徳栄を先頭に、最後の叡明まで全139チーム、計2601選手が入場行進した。大観衆がスタンドから見守る中、選手たちの顔は誇らしさと緊張感であふれていた。
グラウンドでは花咲徳栄の酒井煌太主将が優勝旗を返還。続いて県高校野球連盟の斎藤明博会長は「全力を出し切ったプレーは見ている人に感動を与えてくれる。各チームとも日頃の成果を存分に発揮することを期待しています」とあいさつした。
大野元裕知事は祝辞で「今大会は139チームがしのぎを削ります。勝ち負けにかかわらず、これまでに培われた努力、友人やチームメートとの絆、困難にもかかわらず克服するための挑戦は必ず次の一歩を導き出します」と選手たちを激励した。
最後に選手代表で坂戸西の金子陽樹主将が力強く選手宣誓。「野球人口が年々減少する中で、このメンバーと共に大会に臨めることを心から幸せに感じます。この大会に関わる全ての方々への感謝を胸に、克己(こっき)の精神で最後まで戦い抜くことを誓います」と球児らの思いを代弁した。
開幕戦は本庄が浦和東を6―1で下した。本庄は1―1の五回、1死二塁で酒井が右越え適時三塁打を放ち、勝ち越しに成功。八回には吉野、石井、今井の3連打などで3点を追加した。投げては五回途中から登板したエース今井が要所を抑え、最後までリードを守り切った。
大会は第2日の10日から本格化し、8球場で1、2回戦18試合を行う。入場料は一般800円、身分証明書を提示した中高生は200円。引率された少年野球、中学生チーム(引率者・保護者有料)、障害者(障害者手帳を提示)と介添者1人、小学生以下は無料。昨夏に続き、1回戦から勝利チームの校歌斉唱が行われる。
頂へ 猛暑の球宴開幕
開会式で整列する参加139チームの選手たち
克己の精神 最後まで
大勢の観客が見守る中、坂戸西の金子陽樹主将が力強く選手宣誓した。開会式後、「かんでしまったので自己評価は95点」としたが、「堂々と、最後まで言い切れた」と安堵(あんど)の笑みがこぼれた。
6月18日の組み合わせ抽選会で大会回数の「107」番を引き当て、大役が決定。その瞬間を思い出し、「『まさか自分が』とかなり驚いた。やりたい気持ちはあまりなかった」と苦笑する。
翌日からマネジャーと2人で宣誓文を考えた。最も伝えたかったのは、支えてくれた家族や指導してくれた先生、一緒にプレーしてきたチームメートへの感謝。病気やケガで部活を辞めた仲間への思いも込めたという。
前夜は緊張であまり寝られなかったというが、万一に備えてポケットに入れていたメモは使うことなく無事に終えた。11日の所沢北との初戦に向けて「小技や短打でこつこつとつないで、点を取っていきたい」と気を引き締めた。
力強い選手宣誓を披露した坂戸西の金子陽樹主将
選手宣誓全文
宣誓 私たちが日々野球できること、この大会を迎えられたことは、決して当たり前ではありません。世界では多くの暗いニュースが報道されています。今、こうして野球ができるのは、支えてくれた家族、指導してくださった先生方、汗を流して苦楽を共にした仲間たちがいたからです。そして、野球人口が年々減少する中で、このメンバーと共に大会に臨めることを心から幸せに感じます。私たちは、この大会に関わる全ての方々への感謝を胸に、克己の精神で、最後まで戦い抜くことを誓います。
Aシード・浦和学院
「全ては夏」出し切る
今春の県大会を制したAシード浦和学院が2年ぶりの王座を狙う。投打で万全の状態に仕上げ、開幕の日を迎えた。主将の西田は「チーム状態は良く、浦和学院というチームで一体感を持っている。今大会で139チームの代表になれるように気持ちは高まっている」と高揚感がにじんだ。
春季関東大会は準々決勝で選抜大会優勝の横浜に2―3と競り合った。全国屈指の強豪を相手に、長打力と投手陣の成長を示した。6月29日に行った横浜との練習試合で勝利。今月3日には同4強の健大高崎(群馬)との練習試合で最終調整。夏の主役をつかむ準備は整った。
チームに浸透する合言葉は「全ては夏のために」。昨秋の県大会準々決勝で浦和実に敗れてから、見違えるほどに組織力が上昇した。西田は「秋の敗戦からの成長は大きく、そのときとは違った姿を見せられるように準備をしてきた。持っている力を発揮したい」と気合十分だ。
Aシード・叡明
春の経験 誇りを胸に
Aシードの叡明は春県準優勝、その後の関東大会では選抜16強の山梨学院と接戦を演じた誇りを胸に夏を迎えた。主将の根本は「いよいよ始まる。チームの雰囲気も良く、万全の態勢。甲子園出場という目標を達成するため、つなぐ打撃を意識していく」と決意を新たにした。
春の関東大会で課題となった高校トップクラスの速球に対応すべく、スイングスピードを強化した。ティー打撃で間を設けず、速度を上げてスイングを繰り返してきた。三塁手の高野は「投手を中心とした守備のチーム。ミスを減らして一つ一つ勝っていく」と意欲を示した。
鍵を握るのは2人の右腕。エース増渕と力のある球を投げ込む田口で試合をつくる。守備からリズムをつくり、打線に勢いを与えたい。根本は「全員が自分の役割をしっかり全うする」と集大成の夏にすべく気合十分。春夏通じて初の甲子園出場へ向けて選手たちの士気は高い。
Bシード・川越東
守備磨き初優勝狙う
川越東はBシードとして、夏舞台に臨む。チームは2013年の準優勝が過去最高成績。主将の柳は「甲子園に出るためにやってきた。目の前の試合に集中したい」と、全国初出場へ決意を示す。
活発な打線が自慢だが、春の県大会は守りの乱れから崩れる課題を残した。選手たちは、守備の強化に注力。柳は「ミスがなければ、いい方向に持っていけるはず」と言う。エースの梅沢も、「コントロールとボールの強さを磨いてきた」とうなずく。
開会式では、背番号4を付ける三島のかけ声で行進。柳は「自信を持って、堂々と歩けた」と胸を張った。
Bシード・市川越
高み目指し準備万全
Bシード市川越は1989年の川越商時代以来、36年ぶりの甲子園出場を目指して練習を積み重ねてきた。春の県大会準決勝では叡明に1点差の惜敗を経験し、主将の斎藤は「攻撃のバリエーションが足りないと感じ、夏に向けて強化してきた」と練習の成果を発揮する。
市川越が理想とする戦い方は「粘り強く、終盤勝負」。守備からリズムをつくり投手陣を援護する。上位打線の森や篠を中心に、足と小技でつないでビッグイニングを狙う。「コンディションは万全。緊張よりもワクワクしている」と斎藤。春の雪辱を果たす準備は整った。
前回優勝・花咲徳栄
意識変化 連覇に自信
昨夏優勝校の花咲徳栄は春の悔しさを糧とし、夏の連覇を狙う。春の県大会では準々決勝で浦和学院にコールド負けを喫した。そこから投手の安定感、打撃の力強さ、一球も無駄にしない意識を夏に向けて徹底的に磨き上げた。主将の酒井は「練習試合では結果が出ている。夏は小技も使えるのでいけると思う」と自信をのぞかせた。「夏連覇が狙えるのは花咲徳栄だけ。チームは連覇しか見ていない」と貪欲に話した。
選抜4強・浦和実
一体感で「もう一度」
今春の選抜大会4強の浦和実は、ノーシードから春夏連続の甲子園出場を目指す。「ベスト4の結果から満足感とおごりが生まれ、なかなか自分たちの野球ができなかった」と主将の小野。春季県大会の初戦敗退後、あいさつの大切さや周囲への気遣いなど自身の気付きを積極的に仲間に伝えてきた。エース石戸の調子も上がってきており、小野は「チームとしての一体感を大切に、もう一度甲子園に行きたい」と意気込んだ。
「満点の出来」漂う充実感
司会進行
所沢西3年 藤野さん ・ 所沢3年 横尾さん
司会進行を務めた横尾愛子さん(右)と藤野渚紗さん
開会式の司会は所沢西3年の藤野渚紗さんと所沢3年の横尾愛子さんが務めた。大役を全うした藤野さんは「まずはほっとした。無事に終えられて本当によかった」と安堵(あんど)の様子だった。横尾さんは「すごく緊張していたがミスなく終われた。満点の出来」と笑みがこぼれた。
2人とも、これまで司会の経験はなかった。5月下旬に役目が決まると、自分の声を録音して繰り返し聞くなど練習を重ねた。藤野さんは「成長を感じる期間だった。機会があればまた挑戦したい」。横尾さんは「将来の夢に向けて、貴重な経験だった」と充実感をにじませた。
堂々行進 選手を先導
狭山清陵マネジャー 宮沢さん
プラカードを持って先導する宮沢明愛さん
入場行進では、狭山清陵野球部マネジャー3年の宮沢明愛さんが大会プラカードを持って選手たちを先導した。同校の部員や両親からは「頑張って」と送り出され、「堂々と行進した。選手たちと同じグラウンドで歩くことができた。貴重な経験だった」と笑顔がはじけた。
8日のリハーサルでグラウンドの雰囲気を感じ、本番では「全く緊張しなかった。自分自身成長を感じる」と充実感に浸った。10日の川口青陵戦からベンチに入り、選手たちと一緒に戦う。初戦への気持ちを高め、持ち前の笑顔でチームのサポートに徹する。
大役果たし「ほっ」
笑顔の場内アナウンス
清水さん(所沢北3年)、神谷さん(坂戸3年)
場内アナウンスを担当した神谷紗輝さん(右)と清水柚杏さん
所沢北高校3年の清水柚杏さんと坂戸高校3年の神谷紗輝さんは、入場行進中の参加チームを読み上げるなどの場内アナウンスを担当した。
大役を終え「ほっとしている」と安堵(あんど)の表情を浮かべた2人。清水さんは「大きなミスなくやり切れた。自分に120点をあげたい」と声を弾ませ、神谷さんも「原稿にないことにも臨機応変に対応できた」と満足そうな表情を浮かべた。
春の県大会でも一緒の放送室に入ったことがある2人は「また一緒にアナウンスができてうれしい」と顔を見合わせ、「上手だったよ」とお互いに褒め合った。
気持ち込め投球
さいたま市立慈恩寺小6年 村上さん始球式
女子軟式野球チーム「春日部さくら」所属で、さいたま市立慈恩寺小6年の村上ひまわりさん(12)が始球式の大役を堂々と果たした。
「入れ、ストライク」と、小学3年から愛用しているグラブを手にして、マウンドに立った。今まで教えてくれた監督やコーチ、家族への感謝の気持ちも込め、「投球は100点」と胸を張った。
7歳の時、テレビで高校野球を見ていて、興味を持ち、野球を始めた。現在のチームは3チーム目。ポジションは投手。「野球はみんなで楽しくできる」と話す。「春日部さくらで野球をやりたい人が増えてほしい」とアピールした。
野球部に携わり40年
育成功労賞に吉原亨氏
元県高野連理事の吉原亨氏(65)が、日本高野連から育成功労賞の表彰を受けた。杉戸農で非常勤講師として勤務する吉原氏は、「実績がなくてもコツコツやってきたことが評価された」と喜んだ。
保健体育科教諭として、今年で44年目。三郷北と杉戸、杉戸農の計40年間を、監督や部長などとして野球部に携わった。これまでに、夏の埼玉大会で4回戦に導いた経験を持つ。吉原氏は「野球を長く好きでいてほしいと思い、教えてきた」と振り返る。
現在は野球部を離れ、教員の指導も任されている。吉原氏は「私の受賞が若い人の励みになれば」と願った。
埼玉大会開会式で初の試み
暑さ対策 選手ら着座
開会式で座ってあいさつを聞く選手たち=9日午前、さいたま市の県営大宮球場
第107回全国高校野球選手権埼玉大会の開会式が9日、さいたま市の県営大宮球場で行われた。県高校野球連盟は猛暑対策として、出場選手が式典中に着座する初の試みを実施。同連盟の斎藤明博会長や大野元裕知事らのあいさつ中、選手たちはグラウンドに腰を下ろし、熱中症のリスク軽減を図った。
前回大会の開会式では選手3人が体調不良を訴えた。斎藤会長は「今年は梅雨時に雨が少なく、疲労が蓄積していた。準備の段階でグラウンドの暑さが心配になった」と取り組みの経緯を語った。この日はさいたま市の最高気温が35・8度と、35度以上の猛暑日を観測する厳しい暑さだったが、体調不良者は出なかった。
与野高校の尾崎太陽主将(18)は3大会連続で開会式に参加し、「座ると体調が悪くならず、集中して話を聞くことができた」と効果を実感。練習中に熱中症の経験がある秩父高校の原和哉主将(17)は「座れるとすごい楽。チームメートもみんな元気だった」と笑顔で球場を後にした。
=埼玉新聞2025年7月10日付け1、8、9、15面掲載=
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