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第97回選抜高校野球 浦和実初の4強 聖光学院に12-4/卒業生ら500人歓喜

あす智弁和歌山戦

 第97回選抜高校野球大会第9日は26日、兵庫県西宮市の甲子園球場で準々決勝4試合が行われた。第4試合に登場した埼玉代表で初出場の浦和実は、3年ぶり7度目出場の聖光学院(福島)に延長十回タイブレークの末、12―4で勝利し、4強入りを果たした。

 先攻の浦和実は4―4で迎えた延長十回タイブレーク無死一、二塁で、先頭の6番工藤が三塁線にセーフティーバントを決めて満塁とした。続く橋口の中前適時打で1点を挙げると、なお満塁で深谷が左中間を破る走者一掃の適時二塁打を放ち3得点。さらに斎藤、佐々木、山根も連打で続くなど、この回7安打を絡めて一挙8得点と打線が爆発した。その裏の守備では、七回から登板した2番手の石戸が三者凡退に抑え、付け入る隙を与えなかった。
 浦和実の辻川正彦監督は「本当にすごいことをやってくれた。本当にうれしい。正直こんな試合をしてくれるなんて思ってなかった」。終盤まで互いに譲らず競った展開で選手たちが見せた期待以上の奮起に、何度も何度も感謝した。
 健大高崎(群馬)は花巻東(岩手)に9―1で快勝。昨秋の明治神宮大会を制した横浜は西日本短大付(福岡)を5―1で下し、智弁和歌山は広島商に7―0と完勝した。
 27日は休養日。浦和実は、大会第10日の28日、準決勝で智弁和歌山と対戦する(第2試合・午後1時30分開始予定)。

 

切れ目なく終盤圧倒

 鳥肌が立つほどの集中力だ。延長十回タイブレークにもつれ込んだ接戦にもかかわらず、スコアボードの最終スコアは12―4。初出場の浦和実が、甲子園常連の聖光学院を集中打で圧倒し、名門3校とともに4強に名を連ねた。
 延長十回の攻撃は、観衆の目をくぎ付けにした。無死一、二塁で辻川監督は工藤に「おまえのやれることをしっかりやって来い」と声をかけた。2ストライクに追い込まれても「いつも通りに打てば大丈夫」と工藤。サインは犠打。セーフティーを意識すると球は三塁線に絶妙に転がり、満塁の好機を築いた。
 ここから橋口、深谷の連打で4得点。石戸が送ってなお1死三塁。1番斎藤は「石戸のためにチームでまず絶対に点数を取ると決めた。絶対に打ってやる」と中前適時打。佐々木、山根の連打に2死からの野本の2点適時打と、せきを切ったように得点を重ねた。
 4―1の六回には、当初は五回を目安に継投を考えていた先発駒木根が同点の3ランを浴びる。七回の攻撃では無死一、二塁からの強攻が二邪飛に。策が裏目になりつつあった。辻川監督は「本当に自分の失敗だった。やっちゃったなと思った。でもそれをゼロどころかプラスにしてくれた」と全員でつかんだ勝利をかみしめた。
 目を引く強打者が並んでいる訳ではない。だが、不思議なほどに勝負どころで打線がつながる。選手たちのたくましいほどの自信と度胸の要因は指揮官でも理由が分からないという。「みんなで一個ずつつないでいくことが体現できた」と工藤は言う。指導者が思う以上に、選手たちには浦和実の目指す野球がしみついている。

 

努力実る会心の適時打

8番 深谷

 延長タイブレークの勝負どころで、8番深谷が今大会一の輝きを放った。無死満塁で走者一掃の適時二塁打。低めのチェンジアップを振り抜くと、打球は左中間を真っ二つに破り、「うまく体が反応した。長打はめったに打てないので素直にうれしかった」と一気に二塁まで到達した。
 打席に立つ前、ベンチでエース石戸に背中をたたかれ送り出された。普段は試合前だけにやる、勝利へのおまじない。スクイズを得意とする深谷だが、この日はノーサイン。「とにかく外野に飛ばす意識だけした」と自身初となる走者一掃の一打を放った。
 公式戦では昨秋9月26日の県大会準々決勝の浦和学院戦以来となる長打。冬に重さや形の異なる6種類のバットを振り込んで、強化してきた打撃力が花開いた。
 好打の要因のもう一つに上げるのは仲間の声。「ベンチが盛り上げて、ベンチが打たせてくれた。(背は)小さいけれどコツコツ努力した成果が表れた」。下位打線にこの深谷あり。小技に長打にたけ、次戦も相手の脅威となる。

 

積極スイング奏功

5番 野本

3回表浦和実1死一、二塁、野本が右越え適時二塁打を放つ。捕手仁平

 

 指揮官がキーマンに挙げ続けた5番野本のバットがようやく息を吹き返した。甲子園11打席目の三回に右越え適時二塁打を放つと、延長十回タイブレークでも左前に2点適時打。「狙い球を絞って積極的に1球目から振っていった。ほっとした」と大きくうなずいた。
 2戦続けてバットが沈黙し庄和リトルシニア時代のコーチらに連絡。どこがダメか改善点を聞き、変えた積極スイングが功を奏した。「最後は気持ち。自信を持って振っていきたい」。野本の甲子園はここからだ。

 

勝利呼び込む強心臓

7番 橋口

延長10回表タイブレーク浦和実無死満塁、橋口が勝ち越しの中前適時打を放ち、ガッツポーズを決める

 

 延長十回タイブレーク、7番橋口が打線に火をつけた。無死満塁で打席に立つと、甘く入った直球を中前にはじき返した。「思い切り行ってこいと送り出されて、自分が打ってやった」と勝ち越し打を放つと雄たけびとともに右こぶしを突き上げた。
 タイブレークの攻撃では先頭打者・工藤に犠打のサインが出た。攻撃前のチーム内構想は1死二、三塁で橋口がスクイズ。しかし、工藤が絶妙なバントで出塁すると「スクイズでもよかったが、打てることになってすごく楽しかった」と強心臓だ。
 秋季大会は33打数17安打と結果を残した。セーフティーバントや守備間を抜く持ち前の打撃は甲子園でも健在。準々決勝まで13打数5安打を記録する。次は決勝進出を懸けた戦い。「強い相手にも自分たちの野球を貫きたい」と気負いはない。

 

成長示した不動4番

4番 三島

 4番三島が4安打と気を吐いた。五回、1死三塁で内角の直球を詰まりながらも左前へ運ぶと、七回無死一塁ではバスターで左前打を放った。4安打すべてが単打という打撃内容に「勝つため、チームのための打撃を心がけた」と胸を張った。
 新チーム発足から不動の4番を担う。関東大会後にダウンスイングからレベルスイングへ変更し、状態が上向いた。「いい角度で伸びる打球を打てている。チャンスで走者をかえすバッティングがしたい」と準決勝でも成長した姿を示す。

 

浦和実 夢の快進撃 卒業生ら500人歓喜

 第97回選抜高校野球大会第9日の26日、埼玉県代表で春夏通じて初の甲子園に挑んでいる浦和実業学園高校は、準々決勝で聖光学院高校(福島)に、延長十回タイブレークの末、12―4で勝利して初の4強入りを果たした。夢舞台での快進撃に、三塁側アルプススタンドは平日にもかかわらず保護者、卒業生ら約500人が駆け付け歓喜に揺れた。

 

三回の先制後、追加点が入り歓喜に沸く三塁側アルプススタンド=26日、兵庫県西宮市の甲子園球場

 

 1975年の創部から半世紀を経ての躍進に、硬式野球部OBを中心に卒業生は大盛り上がり。37年チームに携わる辻川正彦監督(59)の就任3年目に入部し、92年度に卒業した梶山勉さん(50)は当時のユニホームを身に着け応援した。「感無量。辻川監督がよくずっと夢を持ってやってくれた」と、同期の菊地豊さん、当時のマネジャー早川徳子さんと3人でエールを送った。
 同部OBのボートレーサーで埼玉支部所属の佐藤翼さん(36)=北本市出身=は22日の初戦はレースがあり、山口県のレース場で見守った。25日の2回戦から現地で観戦し、「勢ぞろいじゃないからこそ、強い部分が一致団結している。一人一人が役割を果たしている」と話した。
 三回に3点を先制すると、アルプスの大応援団は跳びはねて喜んだ。先制の左前適時打を放った山根大智右翼手(17)の父天祥さん(54)は「(2回戦)九回のファインプレーから変わった。バッティングで貢献できていなかったから良かった」とほっとした様子でほほ笑んだ。
 先発した駒木根琉空投手(17)のクラスメートの黒川歩美さん(17)は五回終了後、「応援しがいがある。こんなに強かったんだ」。普段見ない友人の頼もしい姿に驚いていた。七回から登板した石戸颯汰投手(17)のクラスメートの大高司帆さん(17)は「初出場でこんなに勝ってすごい。どんどん勝ってほしいし、また夏にもここに応援に来たい」と目を輝かせた。
 卒業後もボールの寄付などを続け、今大会も甲子園出場のために選手らのリュックを寄贈した同部OBで出版産業(三芳町)の渡辺一矢専務取締役(44)は「まずは一個一個と思うが、ここまで来たら初出場で初優勝を狙ってほしい」。春の頂点へあと2勝、底知れない後輩たちの力に期待を込める。

 

=埼玉新聞2025年3月27日付け1、7、17面掲載=

 

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