猛攻で目標実現
第97回選抜高校野球大会第8日は25日、兵庫県西宮市の甲子園球場で2回戦3試合が行われた。第3試合に登場した初出場の浦和実は、10年ぶり7度目出場の東海大札幌(北海道)に8―2で快勝して、8強入りを果たした。
浦和実は3―2の八回、打者11人が粘り強くつないで一挙5得点。先頭打者の佐々木が右越え三塁打を放つと、山根の四球で無死一、三塁とした。この好機で4番三島が中越えの2点適時三塁打を放つと、工藤の左前適時打や深谷のセーフティースクイズ、田谷野の中前適時打などで畳みかけた。投げては左腕ダブルエースの継投策がはまった。先発駒木根が四回まで2失点にとどめると、後を受けた石戸が無失点で逃げ切った。
浦和実は大会第9日の26日、準々決勝で聖光学院(福島)と4強を懸けて争う(第4試合・午後4時開始予定)。
浦和実が八回の猛攻で一挙5得点して、東海大札幌を引き離して圧倒した。3―2で迎えた八回、佐々木の右越え三塁打と山根の四球で無死一、三塁とし、三島が2点適時三塁打を放った。その後も攻撃の手を緩めず、小技を絡め3点を追加した。
東海大札幌は10安打を放つも2点にとどまり、3投手の継投も4失策と実らなかった。
これぞ執念の集中打
浦和実の躍進が止まらない。東海大札幌に打ち勝って、初出場で8強入り。選手たちが第一の目標としていた準々決勝進出を決め、辻川監督は「よくやってくれた。よくみんなでつないでくれた。埼玉、関東の代表として本当にうれしい」と喜びをかみしめた。
3―2の八回無死、1点差の展開に危機感を抱いて打席に入った佐々木は甘く入ったスライダーを振り抜く。打球は右越えとなり、「より良い状態で次のバッターに回したくて、迷わず三塁まで行った」とヘルメットを脱ぎ捨て、俊足を飛ばし三塁に到達した。
無死一、三塁の好機で4番三島の適時三塁打でまず2点。さらに続く猛攻に、チームが掲げる「執念の野球」の神髄が詰まっていた。
工藤の適時打で1点を加え、「(佐々木)悠里が出てみんなが点を取ってくれて流れが来た。ここしかない」と橋口のセーフティーバントで好機を拡大。1死一、三塁で続く深谷が初球スクイズを決め、ビッグイニングとした。指揮官は「2人とも完璧。あれがうちの持ち味。選手たちに染み込んでいる」としたり顔だった。
初戦はエース石戸の好投で守り勝った。この日は野手たちが奮起。八回に打者11人が粘りに粘ってつないだ集中打で打ち勝った。「試合をするたびに強くなる」。秋に指揮官が感じた選手たちの底力の成長度は増すばかりだ。
パワー満点 3打点
4番・三島
パワー満点の打撃を披露して2戦続けてバットで勝利を呼んだ。2安打3打点の4番三島は「打撃がつながって、相手打者に対応できたのでうれしい。状態が良かった」とチームの勝利を一番に喜び、自身の出来は控えめに評価した。
常時140㌔近い直球に、切れのある変化球を交えてくる相手先発に対し、ストレートに絞って打席に入った。三回1死一、三塁の第2打席で少し振り遅れながらも直球に対応し、勝ち越しの左越え適時二塁打とした。
八回無死一、三塁の第4打席では「低めの球をうまくライナーで返せた」と142㌔の直球をきっちり捉え、走者一掃の適時三塁打を放って大量得点の口火を切った。
けがの影響でメンバー発表前日まで、暗い表情を見せることもあった。一日練習が終わった後、夜に近所の公園に行き父・健二さんと30~40分の自主練習で打撃フォームの修正を図ってきた。けがの影響など感じさせないほどの活躍を見せ、次戦は「守備からリズムをつくって1点、2点を確実に取って勝ちたい」。長打に固執せず堅実に、自らの役割に徹する。
立役者はWエース
駒木根と石戸
浦和実のダブルエースが8強入りの立役者だ。先発した左腕駒木根が4回2失点と粘り強く投げると、五回から登板した変則左腕石戸が無失点に抑えた。辻川監督は「駒木根が頑張って試合をつくった。石戸は本当に頼もしかった」とたたえた。
駒木根は昨年9月の秋季県大会準決勝の山村学園戦以来となる先発マウンド。「夢に見た甲子園の先発。自分がやるんだと強い思いで投げた」と気持ちが入った。毎回得点圏に走者を背負うも勝負球を内角に厳しく決め、先発の役割を果たした。
石戸は115球完投の1回戦から中2日。前日の練習ではブルペン入りせず疲労の回復に専念した。「出番は早かったが準備はできていた。相手の対策にも冷静に対応できた」と納得の表情だ。両左腕が浦和実躍進の原動力となっている。
小技絡め2打点 献身プレー光る
8番深谷
8番深谷が先制の右前適時打を含む2打点と存在感を示した。八回には初球を捉え、得意のセーフティースクイズを披露。「チャンスで回ってきたところで打てて本当に良かった」と満面の笑みを見せた。
身長162㌢と小柄だが、選球眼と磨いたバントの能力で右に出るものはいない。「自分は主役になることはほとんどない。形はどうであれ、チームのためのプレーを心がけたい」。打席での派手さはないが、この献身的な姿が浦和実の堅実な野球を支える核だ。
チアに代わり応援主導
OB山崎さん、積年の思い
第97回選抜高校野球大会第8日の25日、埼玉県代表で春夏通じて甲子園初出場の浦和実業学園高校は東海大学付属札幌高校を8―2で制し、8強入りした。同日は、全国屈指の実力を持つ同校チアダンス部が全国大会出場のため不在。一塁側アルプススタンドでは、チアに代わり、ブラスバンド部が輝きを放った。その中に、約30年間追い続けた夢をかなえた人がいた。野球の応援に魅了され楽器の道に進んだ同校OBの会社員山崎洋司さん(46)。積年の思いを込め、球場にトランペットの音を高らかに響かせた。
夢だったアルプススタンドからトランペットの音色を響かせる浦和実業学園高校ブラスバンド部OBの山崎洋司さん=25日午後、兵庫県西宮市の甲子園球場
この日、スタンドで約650人の応援団を率いたのは、ブラスバンド部の部員33人とOB・OGを加えた計48人。同部部長の2年松岡真由さん(17)は「チアがいなくても応援で相手に負けたくない。自分たちがチアの分まで盛り上げる」と、力を振り絞った。
力強くトランペットを吹いていた山崎さんは、1997年に同校を卒業。生まれつき両足にまひがあり、歩くのにつえが欠かせない。中学生のとき、東京ドームで見た読売ジャイアンツの応援団に魅了され、楽器の道に進んだという。
高校では甲子園のアルプス席を目標にブラスバンド部に入部。自分のためよりも、応援するチームのため、練習に励んだ。入部から間もなくしてつかんだ県大会〝夏の1勝〟。「生徒、先生と共に勝利した喜びは格別だった」。今でも鮮明に覚えている。
しかし、在学中に甲子園出場はかなわなかった。「高校生活は3年間しかないが、野球部の応援なら何度でも挑戦できる」。卒業後、大学生、社会人となってもトランペットを片手に同校の試合に通い続けた。夏の選手権大会はもちろん、春秋の公式戦、夏季新人戦、さいたま市民大会(旧浦和市内大会)などほとんどの試合に顔を出した。
ウインドブレーカーの下には辻川正彦監督からもらったユニホームを着用。山崎さんが高校1年のとき、体育教師だったのが辻川監督だった。「すぐに好きになった。理由は分からないけど、カリスマ性があったのかな」と当時を思い出して笑みを浮かべた。応援を続ける理由には監督への思いも含まれている。
22日の1回戦は夢がかなった瞬間だった。球場内の通路を抜けてスタンドに出ると高揚感に包まれた。「これが30年間待った光景だと思い、感無量だった。文字通り、言葉にならなかった」。約2千人の大応援団の中での演奏は格別だった。晴れ渡った青空の下、アルプス席に座る喜びをかみしめ、力いっぱい演奏した。
75年の創部以来、初の甲子園出場で快進撃が続く同校。8強入りが決まると、山崎さんは小さくうなずいた。「この音色が選手の力になっていると信じている。選手のために、僕たちもまだ頑張りたい」
=埼玉新聞2025年3月26日付け1、7、17面掲載=
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