偶然居合わせたサッカー部8人が
パニック障害の男性を救助
伊奈町の国際学院高校に上尾市在住の男性から一通のメールが届いた。通勤途中に具合が悪くなったところを同校の生徒たちに助けてもらったとして、感謝の言葉がつづられていた。受け取った大野彭久教頭が調べたところ、サッカー部の飯田大空さん、金塚琉河さん、河内佑樹さん、木村優正さん、平野瑛也さん、関根和さん、山岡空さんと野球部の田村剛大さんの8人(全員17歳)と分かった。生徒たちは思いがけない善行の〝発覚〟に「当たり前のことをしただけ」「みんなでいたから声かけできた」と照れたり、戸惑ったりした。
男性は会社員星野祐介さん(44)。3月14日の朝、熊谷市の会社に通勤途中、JR上尾駅付近でパニック障害を起こした。星野さんは2008年からこの病気を患っている。時々発作が起きるため、投薬や自分で呼吸を整える対処法を行っている。
しかし、この日は発作がなかなか収まらず道端に座り込んでしまった。そこに高校生たちが「大丈夫ですか」「水持ってきましょうか」と代わる代わる声をかけ、寄り添ってくれた。薬を飲んでも呼吸の乱れが続いたため、自宅に戻ることにした星野さんは「申し訳ないけど高校生に甘えてみようと思ってかばんを持ってもらえないかと頼んだ」という。生徒らは「もちろんです」と快く引き受け、徒歩約15分の自宅まで全員で付き添った。
この日は電車が大幅に遅延。年度末でもあり、偶然が重なった。「本当にありがたかった。一人一人名前を聞きたかったけれど、歩くのもやっとだったので、学校名と部活だけ聞いた。ちゅうちょなく日々こういう行動がとれる子たちなんだなと彼らの目や話し方で分かった」
その後も体調不良が続いた星野さん。今ではだいぶ元気になり「あの時の生徒さんたちに何とか感謝の気持ちを伝えたい」と思い、学校にメールを送った。「過去にも同じように発作を起こしたことがある。何が起きているか分からないので、周囲の人も声をかけにくいと思う。彼らはすごい。本当に感謝です」
パニック障害は人によって症状も違い、なかなか理解してもらいにくい病気だ。高校生たちも「これまで知らなかった病気。星野さんと歩きながら話して、これからはそういう人を助けたいと思った」(田村さん)と話した。また「初めてでびっくりしたけれど、助けられて良かった」(飯田さん)「皆でいたから勇気が出せた」(河内さん)「当然のことをしただけ」(関根さん)と素直な感想も話した。
大野教頭は「生徒たちの小さな好意を代表メールに送ってもらいとてもうれしい。教職員全員に周知し、今後の教育に生かしたい」と喜んでいた。
=埼玉新聞2022年5月16日付け10面掲載=
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