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韓国人被爆者テーマの朗読劇を秩父の高校生らが創作

 秩父ユネスコ協会(石井吉男会長)の高校生らが28日、韓国人被爆者がテーマの創作朗読劇を韓国・光州広域市で開かれる「日韓高校生ピースキャンプ」で上演する。広島で被爆した祖母が残した日記を孫娘の高校生が読み、被爆体験と苦難を知るという物語だ。シナリオを書いた県立秩父農工科学高3年の阿佐美朱里さん(17)は「日本にとっても韓国にとっても暗く嫌な歴史だが、あったことは絶対に忘れてはならないと思う。そんな気持ちを込めて韓国で披露したい」と意気込んでいる。

韓国人被爆者をテーマにした創作朗読劇を韓国で披露する高校生ら。右端が阿佐美朱里さん=6日、東京都中野区の都立鷺宮高校

 

■「せめて同等の扱いを」
 朗読劇名は「韓国人被爆者の身世打鈴(シンセタリョン) 祖母の日記」。「身世打鈴」とは韓国語で「不幸な身の上を嘆き哀しむ」という意味。広
島で被爆した崔英順さんの手記「ヒロシマを持って帰りたい」を参考に、歴史的事実を踏まえて阿佐美さんが創作した。
 祖母(崔英順)の日本名は福本英子。広島・益田高等女学校の生徒で、爆心地から約3・6㌔にあった学徒動員
先の電気工場で被爆した。戦後故郷の朝鮮半島に戻るが、鼻血が出たり、すぐ疲れたりするなど体調が悪化。周囲の韓国人には「原爆症」が理解されず、日本政府からの援助もなく差別と偏見に苦しんだ。
 「日本を憎んではいないが、日本人にされて被爆したんだから、せめて日本人と同等の扱いをしてほしい」と訴える言葉が印象的だ。

■高3の孫に自身を投影
 韓国人被爆者をテーマに選んだのは、昨年夏、東松山市の丸木美術館で見た絵画「原爆の図」の「からす」がきっかけ。焦土と化した広島の地に放置された朝鮮人被爆者の遺体が、カラスにむしばまれていた。「目玉をカラスが食べている絵にショックを受けた。その時から韓国人被爆者の朗読劇を少しずつ考えていました」
 広島と長崎で被爆し、生き残って祖国に戻った韓国人被爆者は推定で約3万人。「丸木美術館に行き、韓国にも被爆者がいたことを初めて知った」と明かす阿佐美さん。祖母の日記を読んだ孫娘を高校3年に設定したのも、阿佐美さん自身の姿と重ね合わせたのだという。

■平和な未来を築いて
 シナリオは6月上旬に完成。人前で披露するのは今回の韓国公演が初めて。秩父ユネスコ協会からは阿佐美さんのほか、大学3年の高比良あかりさん(21)、高校3年の高野奈緒さん(17)、中学3年の高野真紀さん(15)の4人。都立鷺宮高校の社会科同好会からも2人の高校生が加わり、計6人で舞台に立つ。
 18年前から朗読劇を指導している秩父ユネスコ協会事務局の江田伸男さん(70)は「日韓の若者が韓国人被爆者というネガティブな歴史に向き合い、それを乗り越え、平和な未来を築いていってほしい」と期待を寄せている。

 

=埼玉新聞 2025年7月27日付け14面掲載=

 

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