開会式139チーム、堂々行進
第108回全国高校野球選手権埼玉大会は8日、県営大宮球場で139チームが参加して開会式が行われ、開幕した。18日間に及ぶ熱闘の先に、今夏の県王者が誕生する。決勝は26日午前10時から県営大宮球場で実施予定。優勝チームが全国高校野球選手権(8月5~22日・甲子園)の出場権を得る。

開会式で整列する選手たち
午前11時、球場のセンターゲートから前回王者の叡明を先頭に、全139チーム計2587人が入場行進した。スタンドからはメンバーを外れた選手や保護者、その他多くの観客が見守る中、背番号を着けた選手たちは緊張と誇らしさが入り交じった表情でグラウンドを踏みしめた。
開会式では叡明の鈴木彩生主将が優勝旗を返還。続いて県高校野球連盟の斎藤明博会長が「全力を出し切ったプレーが見ている人に感動を与える。失敗やミスを恐れず、チャレンジ精神で頑張ろう」と選手たちに激励の言葉を贈った。大野元裕知事は「139チームが最大限の力を出し切り、皆さんが輝く夏の大会になることを願っている」と祝辞を述べた。
最後に細田学園の福井飛夢主将が選手を代表して選手宣誓。「108は硬式球の縫い目の数です。全ての思いを白球とその縫い目に込めて、気合と根性でこの夏を熱く戦い抜くことを誓います」と堂々と宣言し、大役を果たした。
開幕戦は飯能が埼玉平成を5―4で下した。飯能は3―4で迎えた九回1死一、三塁で大窪が中犠飛を放ち同点とすると、続く大熊が中前打で二塁走者を生還させサヨナラ勝ち。野手陣が先発各務の9回165球の力投に応えた。
大会は第2日の9日から本格化し、8球場で1、2回戦計18試合を行う。入場料は一般800円、身分証を提示した中高生は200円。引率された少年野球、中学生チーム(引率者、保護者は有料)、障害者手帳の提示者と介添え者1人、小学生以下は無料。今大会から指名打者(DH)制が導入される。
夢へ全力 高鳴る鼓動

開会式で入場行進する選手たち=8日午前、県営大宮球場
思いと感謝 縫い目に
選手宣誓 細田学園・福井主将
大勢の観客が見守る中、細田学園の福井飛夢主将が力強く選手宣誓した。「すごく緊張したが、楽しむことができたので満足」。大役を無事に果たし、充実感をにじませた。
開幕の2週間前、3年生の仲間と集まり、選手宣誓に入れたい単語をホワイトボードに書き込んでいった。いくつか並んだ中で最終的に選んだのは「気合」と「根性」。「チームがなかなか一つにまとまらない時、気合と根性でやってきた」と思いを語る。これまで支えてくれた人たちへの感謝の気持ちも込めた。
6月17日の組み合わせ抽選会で大会回数の「108」番を引き当てた時は驚いたというが、「いろんな人が協力してくれて、日がたつにつれて楽しみの方が大きくなった」と振り返った。
10日に川越との初戦を迎える。「秋、春と悔しい思いをして、失うものはないという気持ちで全力で取り組んできた。どんな形でも勝ち切りたい」

堂々と選手宣誓した細田学園の福井飛夢主将
選手宣誓全文
宣誓 私たち選手一同は、歴史あるこの第108回選手権大会に臨みます。108は硬式球の縫い目の数です。私たちを支えてくれた家族への思い、切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間との絆、全ての思いを白球とその縫い目に込めて、気合と根性で、この夏を熱く戦い抜くことを誓います。
Aシード 浦和学院
春王者に心の隙なし
春の県王者でAシード浦和学院は、夏に向けて一段とチーム内の競争を激化し高め合ってきた。最後の甲子園出場は3年前の2023年夏。現メンバーは夢舞台の景色を一度も見ておらず、夏制覇は選手全員の悲願だ。主将の蜂巣は「自分たちは勝ちに飢えている。人生を懸けた勝負。高校野球に全てをささげる」と覚悟をにじませる。
夏を戦う選手たちの心に隙は一切ない。関東大会準優勝と結果を残した春季大会を終えてから、練習中では「それが甲子園で通用するのか」という言葉が増えた。「春に勝てたから大丈夫ではなく、チームがより厳しくなった」と蜂巣は変化を感じ取る。
玉栄と内藤を筆頭に強打者が並ぶ打線と、エース日高を軸に層が厚い投手陣を抱え戦力は充実。直近の練習試合では県外の強豪校を相手に接戦を勝ち切り、試合運びも熟達している。目線は埼玉大会優勝の先にある、最高成績「夏の甲子園ベスト4」だ。
Aシード 花咲徳栄
鍛えた守備で勝利を
春夏連続の甲子園を狙うAシードの花咲徳栄。Cシードとして臨んだ昨夏は、独特の空気感にのまれて自分たちのプレーができず、4回戦で姿を消した。主将の本田は「夏の1試合を勝つ難しさを実感した。緊張感を持ってやりたい」と、夏舞台に向けて気を引き締める。
今春の選抜大会は8強入りしたものの、準々決勝では8点差を守れずに逆転負け。県準優勝で挑んだ春季関東大会では守備が乱れてコールド負けを喫した。悔しい敗戦を経て1点の重みを全員で共有。課題の守備を磨いてきた。自慢の打線で先制して勢いに乗り、鍛えた守備で守り抜いて勝ちをつかむ意気込みだ。
再び聖地を踏み締めるため冷静に足元を見つめる。本田は「少しずつ熱量が上がってきている。まずは一戦一戦を大切に戦い、最終的には日本一を取りたい」。悔しさを力に変え、一回り大きくなった姿を集大成の舞台で見せつける。
Bシード 立教新座
〝41年ぶり〟へ初心で
Bシード立教新座は立教時代以来、41年ぶりの甲子園出場を目指す。春の県大会では自慢の粘り強さを披露し、4強入り。ただ、準決勝で浦和学院に5―17で大敗し、主将の筒井は「まだまだ実力の差がある。あの敗戦で初心に返ることができた」と春の結果を糧に、大会に臨む。
打撃を強化し、試合状況を想定した実戦練習を重ねてきた。筒井は「しっかり振り込んできた。みんないい打球を飛ばしている。久しぶりにみんなで甲子園に行く」と頼もしい。OBの思いも背負い、聖地へ一歩ずつ歩みを進めていくつもりだ。
Bシード 昌平
経験武器に悲願狙う
2年連続で準優勝のBシード昌平が、悲願の初優勝を狙う。昨夏のメンバーが9人残り、経験は豊富。主将の佐藤光は「まずは初戦の入り。一回の攻防、1打席目を特にこだわって、秋春とは違う一発勝負を勝ち抜きたい」と決意を新たにした。
しぶとく粘り強い野球を信条に、攻撃力に磨きをかけてきた。昨夏から主戦で出場している大倉や斎藤ら力のある打者を上位打線に置き、積極的に仕掛ける展開を目指す。佐藤光は「場面に応じた最善の攻撃をして、得点力で勝負する。やってきた力を信じる」と最後の夏の頂へ、気合をみなぎらせた。
前回V 叡明
優勝旗返還 決意新た
昨夏優勝校の叡明はノーシードから連覇を狙う。チームとして先頭で行進し、優勝旗を返還した主将の鈴木彩は「前回の優勝校として堂々と挑みたい」と決意を新たにした。
春の県大会では初戦で武蔵越生に敗退。チームに足りない部分を常に考え、試行錯誤しながらも投手を中心とした守備や攻撃につなげるリズムを意識し、練習を積んできた。
初戦の相手が姉妹校のCシード浦和麗明となり、チームの士気もぐんと上がったという。鈴木彩は「練習試合では打線がつながり始め、いい方向に行っている。連覇へ、まずは初戦を必ず勝ち切る」と気を引き締めた。
司会進行「2千万点」
川口市立3年 谷島さん ・ いずみ3年 岩崎さん

司会進行を務めた岩崎美瑛さん(右)と谷島叶芽さん
開会式の司会は川口市立3年の谷島叶芽さんと、いずみ3年の岩崎美瑛さんが務めた。大役を果たした谷島さんは「リハーサルは緊張したが、最後は楽しもうと思いながらできた」と声を弾ませた。岩崎さんも「たくさん練習したので、成果を出せるように頑張れた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
2人とも司会は初めての経験で、選ばれた時は驚いたという。6月中旬に台本をもらってからは「選ばれたから
には」という気持ちで練習を重ねてきた。出来について、谷島さんが「120点」と振り返ると、岩崎さんは「2千万点」と言い、笑い合った。
心一つに笑顔の先導
浦和学院マネジャー3年 伊藤さん

プラカードを持って先導する伊藤璃美さん
入場行進では、浦和学院野球部マネジャーで3年の伊藤璃美さんが大会プラカードを持って選手たちを先導した。「リハーサルでは緊張しなかったけど、本番は緊張した」と振り返り、充実した様子。満員近い大観衆の前で139チームの行進を引っ張り、笑顔がはじけた。
リハーサルと昨年の動画を見て行進の導線などを学び、選手と一緒にグラウンドに立った。自身にとっても最後の夏となり、「3年生たちと同じ気持ちで行進した」。初戦のベンチには男子部員が入るため、声をからしてスタンドで応援する予定だ。選手と心を一つにして本番に臨む。
選手と共に戦う決意
場内アナウンス 大役全う
浦和学院3年 粕谷さん ・ 浦和北3年 大河原さん

場内アナウンスを担当した大河原舞美さん(右)と粕谷杏寿さん
入場行進の学校名アナウンスを担当した浦和北3年の大河原舞美さんと浦和学院3年の粕谷杏寿さんが、大役を終えて安堵(あんど)の表情を見せた。これまで何度も県営大宮の放送室で一緒にアナウンスを担当するなど、仲が良い2人は「ホームのような環境で心強かった」と振り返った。
試合でもアナウンスを担当する粕谷さんは「自分の役割を全うしながら、みんなのことを応援したい」と意気込む。9日に控える浦和北の初戦でベンチ入りする大河原さんは「最後まで自分の力を出せるように頑張ってくれたら」とナインに思いを託して、共に戦う決意を語った。
埼玉初の女子ノッカー
飯能の花岡咲愛選手
第108回全国高校野球選手権埼玉大会が8日、さいたま市の県営大宮球場で開幕した。今大会から女子ノッカーが認められ、飯能高校の女子部員、花岡咲愛(さくら)選手(2年)が開幕試合のグラウンドに立った。

シートノックを打つ飯能高校女子部員の花岡咲愛さん=8日、県営大宮
「夏大(なつたい)いけるか?」。甲原史朗監督からノッカーでの起用を伝えられたのは、6月17日の組み合わせ抽選会の後だった。「びっくりしたが、せっかく機会を与えてくれた。全力でやろうと思った」と花岡さん。
小学1年生で野球を始めた。先にクラブチームに入った兄晴翔(はると)選手(3年)の影響だった。プレー面はもちろん、仲間と一緒に
できることが楽しかった。中学生でも男女混合のクラブチームに所属し、試合に出場した。
野球を続けたい気持ちはあったが、近くに女子チームがなく悩んでいた中学3年生の時。兄が所属する飯能高校の試合を応援に行き、甲原監督に誘われた。うれしい半面、体力や技術面での不安を感じて「迷惑をかけてしまうかも」と迷う気持ちもあった。両親とも相談し、徐々に心は決まっていった。「ずっと野球をやってきたから、出たい気持ちはあった。でも『咲愛がやっているんだから、俺らも頑張らなきゃ』という姿を見せられたらと思った」
「真面目で一生懸命」。甲原監督は花岡さんを絶賛する。入部当初はトレーニングについていけず、悔しがる姿も見てきた。半分でもいいと伝えても、花岡さんは「最後までやります」と諦めなかった。「日の当たるところで何か機会があれば」と考えていたところ、女子ノッカーが認められ「チャンスだと思った。野球少女たちの希望にもなる」と声をかけたという。
自主練習に励み、迎えた本番―。グラウンドで堂々とノッカーを務める花岡さんの姿があった。フライも上がらず、「今までで一番いい出来だった」と甲原監督。晴翔選手は一塁手で先発出場し、スタンドから見守った母の望さん(47)は「兄の最後の夏に一緒に立てるのは奇跡。一生懸命練習していたから、大丈夫と信じていた」と目を潤ませた。
チームは九回裏に逆転サヨナラ勝ち。最後まで諦めず粘りを見せるチームメートに、花岡さんはスタンドから大きな声援を送り続けた。
「いつかベンチに入れたら」。花岡さんは願う。「女子選手も活躍できる場が少しずつ増えている。(いずれ可能になると)信じています」。その日に備え、全力プレーで実力を磨いていく。
=埼玉新聞2026年7月9日付け1、6、7、13面掲載=
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