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統合しない学校づくり 小鹿野高校の「山村留学」

地域で連携10年目迎える

 生徒数増加を目的に、県立小鹿野高校(生徒数116人)が試行している地域留学制度「山村留学」が今年で10年を迎えた。親元を離れ、町の自然や文化に触れながら高校生活を過ごしてもらおうと、2012年から留学生の受け入れを開始。当初は地域外から野球部員らが集ったが、ここ数年は留学生の減少が続いた。同部父母会らで構成するNPO法人秩父盆地野球振興会は、留学生を絶やさぬよう、県内中学生を対象にした野球教室を継続的に開催。社会人野球元監督の石山建一さん(80)の指導も支えとなり、留学希望者は再び増加の兆しを見せ始めた。

 

県内の中学生にバッティングを指導する石山建一さん=11日午前、県立小鹿野高校のグラウンド

 

 小鹿野高校は1977年度に866人の生徒が在籍したが、同年をピークに生徒数が減少。2011年度に初めて入学生が100人を割り込んだ。統廃合しない魅力ある学校づくりを目指し、その翌年から、遠隔地から生徒を受け入れる地域留学制度を県内県立学校で初めて試行した。
 留学制度で野球部の強化を図ろうと、同校は早稲田大学やプリンスホテルで監督を務めた石山さんを外部コーチとして招聘(しょうへい)。同振興会は、県内中学生を対象にした石山さんの野球教室を毎年開催し、部員集めに協力した。町によると、過去10年間の山村留学生は計48人で、9割が野球部員。初年度に8人が入学して以降、留学在校生は毎年10人以上をキープしてきたが、20年度は3人、21年度は2人と低迷した。町関係者は「コロナ禍に入り、野球教室が開けなくなったことも原因の一つ」と推測する。
 昨年11月に野球教室が再開すると、当時石山さんから指導を受けた春日部、熊谷、行田市、上里町出身の計5人が今春、留学生として入学。昨秋は野球部員数が足らず、他校との連合チームを経験したが、本年度は単独チームで大会に望んだ。
 今月11日に同校グラウンドで行われた野球教室には中学2、3年生計18人が参加。秩父地域のほか、久喜、飯能市などからも球児が集まった。参加者は、石山さんの熱心な指導に耳を傾け、バッティング技術などを体に覚え込ませていた。石山さんは「(この日の)参加者のうち半数は、小鹿野高野球部に興味を持ち、来春の入部を考えている」と話す。
 教室に参加した幸手中学3年の坂元春太さん(14)は、8月の学校説明会を受けて、同校へ留学する意思を固めた。「石山さんの指導でバッティングの飛距離が伸びた。これからも多くを教わり、1年から主軸を担える選手になりたい」と意気込む。
 飯能西中学3年の近藤師恩さん(14)も、同校の受験を予定している。「自然に恵まれた環境で野球に打ち込めるのが魅力。1年生から4番打者を目指す」と目を輝かせる。見学に訪れた母親の景子さん(39)は「留学するのは少し寂しいが、本人がここでやりたいと決めたので、全力で応援したい」と話した。
 町は、留学生に国民宿舎「両神荘」を提供するなど、同校の生徒数増加をサポートしている。森真太郎町長は「県内では県立高校の統合計画が進められているが、今後同校も例外ではない。野球部員を募るだけではなく、自然豊かな環境で学習できる『山村留学』の魅力を広め、不登校の生徒が社会復帰できるような場も提供できるように、協力していきたい」と語った。

 

=埼玉新聞2022年12月15日付け1面掲載=

 

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