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【出題方針と解説】令和5年度埼玉県公立高校入試・入試問題

2023年2月24日配信

教科ごとの県教育委発表と塾講師の解説

 22日に実施された令和5年度埼玉県公立高校入学者選抜の学力検査の出題方針と県内塾講師の解説をまとめました。

会場に向かう受験生=22日午前8時ごろ、県立川越女子高校

 

国語

<県教委発表>

  • 予想平均 

60点(前年度55点※実際は62.9点) 

  • 出題方針

 基礎的、基本的な内容についてできるだけ広範囲に出題し、適切に表現して正確に理解する力を見るよう努めた。大問1では文学的文章を理解する力、大問2では基礎的、基本的な言語能力、大問3は説明的な文章を理解する力を調査。大問4は歴史的仮名遣いの理解、古典に表れたものの見方や考え方を捉え、内容を理解しているかなど、古典を理解する基本的な力を問うた。大問5では、資料から読み取れることを基に自分の考えをまとめ、目的や意図に応じて適切に文章を書く力を確かめた。

<塾講師解説>

正確な読解の訓練を
湘南ゼミナール 森 寿郎 氏
 大問1は小説の読解。選択肢問題では、登場人物の心情が聞かれた。時系列のずれが間違いの選択肢に含まれていたため、傍線部はいつの時点での話なのか、場面を意識して読む必要があった。
 記述問題では、心情の具体的な記述や理由が聞かれた。心情が直接表現されていることが多い本文だったため、傍線部の対象となる部分はどこからどこまで記述されているのか、場面を意識して読む必要があった。
 大問2は知識分野。平成27年以来8年ぶりに季語の出題があった。旧暦の季節の区切りを理解していれば解ける問題であった。また、対話文問題では、自分で質問文を考えて記述するという新傾向の問題が出題された。
 大問3は論説文の読解。本文の難易度が高く、中学生には読みにくい文章だったのではないか。選択肢3問、記述2問の問題のレベルも高く、対比構造を意識して読解していく必要があった。また、記述問題は空欄補充の形式で、空欄の前後の文章をよく読まなければ、ミスをしてしまう可能性がある出題だった。
 大問4は古文の読解。傍線部の主語を選ぶ選択肢問題と、歴史的仮名遣いを直す問題は例年の傾向通りだった。本文の内容一致問題が、例年の4択問題から、書き抜き問題に変化した。
 大問5は作文。例年通り195字の文章量であった。「インターネットの適切な利用について」という身近なテーマだったため、書きやすかったのではないか。
 難易度の高い文章で、心情とその理由や、筆者の意見を本文に忠実にまとめる訓練が欠かせない。

 

数学(学力検査)

<県教委発表>

  • 予想平均 

60点(前年度55点※実際は48.0点)

  • 出題方針

数学の基礎的な知識、技能を見る問題について、広範囲にわたり出題。数学で事象を論理的に考察する力、数量や図形などの性質を統合的、発展的に考察する力、事象を簡潔、明瞭、的確に表現する力を見た。数と式、図形、関数、およびデータを総合的に活用する能力を問うた。知識、技能の活用では、操作や実験などを通して数の性質を考察し、具体的場面で活用できるかを見た。空間図形の移動する点の観察や操作、実験などを通じて図形について見通しをもって論理的に考察、表現できるかを見た。

<解説>

基礎的な問題を確実に
スクール21 松坂 直樹 氏

 大問の構成は4問で、小問数も23問とほぼ例年通り。中学3年間で学習する内容全範囲から満遍なく出題された。難易度は昨年度同様と考えられる。
 大問1は16問で配点65点とほぼ例年通り。その中でも計算問題8問は確実に得点したい。関数の変域の問題は、グラフの特徴を理解していれば解ける問題だった。また、新学習指導要領で新規追加となった「箱ひげ図」が昨年に続いて出題された。与えられた資料から情報を読み取る力が試された問題だった。
 大問2は作図と文字式を利用して説明する問題。60度回転させるときの中心を作図する問題では、正三角形を利用することで正解できた。文字式を利用する問題は、中学2年生で学習した基本的な問題で、見たことがある受験生も多かったのでは。
 大問3は、有限小数・無限小数についての問題。会話形式で問題が書かれていて、しっかりと読解することが要求された。小数第50位の数を求めるのに、循環小数の性質を利用すると比較的簡単に答えを求めることができた。
 大問4では、直方体の辺上を点が動く空間図形の問題。(1)は展開図を描いて考える問題、(2)は二等辺三角形になることを証明する問題で、苦戦した受験生もいたのではなかったか。また、(3)は直方体を平面で切断して表面積を求める問題で、どのように切断されるかイメージできなかった受験生も多かったと思われる。
 全体として、応用力が必要となる問題も出題されているが、基本的な問題も多くあるため、基礎学力を定着させることが高得点へのカギとなっただろう。

 

数学(学校選択)

<県教委発表>

  • 予想平均

60点(前年度60点※実際は42.6点)

  • 出題方針

 大問1は中学校数学科の各領域に関する問題。大問2では図形に関する問題で数学的知識と技能の活用できるかを見た。大問3の知識、技能を活用して課題を解決する問題では操作や実験などの活動を通して数の性質を考察し、活用できるかを見た。大問4では関数のグラフや平面図形についての観察や操作、実験などの活動を通して、また、大問5では空間図形で移動する点の観察や操作、実験などの活動を通して、いずれも図形について見通しをもって論理的に考察し、表現できるかを問うた。

<解説>

複合問題を段階的に
スクール21 塚田 喜之 氏
 大問数は5問で、昨年と同様。大問3、4で小問数の変更があったが、それ以外はおおむね同様の構成。
 大問1は計算問題を含む小問集合で、出題範囲は広い。(4)(5)については学力検査問題と同じ問題。(6)(9)(10)についてはテーマは同じだが、設問の条件を変えることで難易度を上げた問題が出題された。
 大問2は作図、証明の小問2問の出題。(1)の作図は、回転移動の中心を作図する問題で難易度が高かった。(2)は、平行四辺形を証明した上で、それを利用して合同であることを証明する必要がある問題だった。
 大問3は有限小数と無限小数についての問題。会話文形式であったことから、与えられた情報と会話文の内容をしっかり理解することで解ける問題であった。
 大問4は関数の問題が出題された。(1)は、昨年も出題されたグラフから文字の大小関係を答える問題。(2)①はcの値を変えることでの台形の面積の変化を説明する問題だった。続く②は回転体の体積を求める問題で、関数と図形の力はもちろん、正確な計算力も問われた。
 大問5は空間図形からの出題。(1)は立体の表面を通る線分の和が最小になるときを問われた問題で、展開図を描くことで解きやすくなる。(2)は切断した立体図形の体積を求める問題。(3)は平面が球に接するときについて答える問題。それぞれの場合においての立体や断面図を描いてみて、イメージすることで解法の糸口を見つけられる問題だった。
 総じて、数学的知識や技能を設問に応じて活用する能力が求められた。難易度の高い問題では、複数の単元の知識を利用して段階的に解いていきたい。

 

社会

<県教委発表>

  • 予想平均

60点(前年度55点※実際は52.9点)

  • 出題方針

 地理、歴史、公民の各分野相互の関連を図り、基礎的な知識や技能を見る問題とともに、知識、技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力などを問うた。大問1は世界の地域構成や特色、大問3は世界の歴史を背景とした近世までの日本の歴史、大問5では日本の政治や経済、国際社会について理解しているかを見た。大問6では、持続可能な開発目標(SDGs)を基に日本の課題を探求する場面を想定し、地理、歴史、公民的分野を総合的に理解しているかを試した。

<解説>

教科書中心の学習を
湘南ゼミナール 今井 慶 氏
 大問数や設問数は例年通り。内容面では地形図の読み取り問題がなくなった。
 地理分野は例年通りの難易度。世界・日本地理ともに気候の特徴や雨温図に関する問題が出題され、いずれも特徴を押さえて答える基本的な問題であった。日本地理の記述問題は、昨年度からの新傾向問題と同形式の問題であった。文章を速く・資料を正確に読み取る必要がある。今まで出題されてきた地形図の読み取り問題が、写真を見てどの方向から撮影されたものかを選ぶ問題に変更された。
 歴史分野の大問3では、5つの異なる時代の資料から時代判別をしなければならず、幅広い知識が必要だった。 大問4の並びかえ問題は、新聞記事の見出しと写真の一部を年代の古い順に並びかえる新傾向の問題だった。戦後でも重要な出来事のため、歴史の流れを理解していれば解ける問題である。
 公民分野の大問5の問3では、裁判員制度についての知識が問われた。言葉だけではなく、制度の中身を正確に理解することが求められた。続く問4は為替相場の問題。一見計算をして金額を出すように見えるが、円高の意味を理解し、文章を読めば解ける問題であった。
 三分野融合の大問6の問4は、昨年度からの新傾向と同じ形式で出題。「千里ニュータウンの主な取り
組みと成果」と資料に注目すれば、グラフの選択と何を記述すべきかが分かる問題であった。
 全体的に見てもスタンダードの問題が多く、決して難易度は高くない。地歴公民の教科書をしっかり読み、用語の意味を体系的に学習することが高得点へとつながる。

 

理科

<県教委発表>

  • 予想平均 

60点(前年度50点※実際は52.5点)

  • 出題方針 

 「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」を柱とする各領域や、各学年の配分を考慮して広範囲にわたって出題。基礎的な知識や技能を活用して課題を解決する力や、観察、実験や日常生活や社会との関わりについて問うた。大問1では液状化現象、細胞の作り、金属のイオンへのなりやすさについてなど、基礎、基礎的な知識や技能を見た。大問2では風について、天気図の見方や海陸風、偏西風について、大問3ではエンドウの花の作りや形質の遺伝についてなど、理解力を見た。

<解説>

考察する力が大切
国大セミナー 松野下 健 氏

 大問構成、配点は前年通り。
 大問2〜5は前年と同様に授業での実験・観察の場面から出題された。問題文は長いが実験・観察ごとに区切られており、受験生にとっては読みやすい問題文であったと思われる。
 全体の難易度は昨年と同じか少し難化。極端に難しい問題はなかったが、正しく理解していないと解けない、やや難しい問題の配点数は例年通りの印象だった。
 大問1は基本的な問題が各単元からバランスよく出題された。問1の災害に関する用語を問われるのは珍しく、問8の放射線に関する問題は5年ぶりに出題された。
 大問2は天気に関する出題。問5の偏西風と飛行機の所要時間に関する問題は、社会でよく問われるような、資料読解の問題であった。
 大問3は遺伝に関する問題。問4の遺伝子の組み合わせに関する問題は、時間の限られた受験本番では、ミスの出やすい問題だったろう。
 大問4は還元に関する出題。クジャク石のかけらから銅を取り出す実験で、クジャク石の出題は珍しいが、小問一つ一つはよく出題される問題であった。問4の計算問題を除けば、正答率は高いと思われる。
 大問5は光に関する出題。問4の記述問題は図では理解できていても、文で表現することが難しい問題であった。また、問5も難しく、苦戦した生徒が多かったと思われる。
 全体を通して、例年と同じ傾向ではあるが、基本的な問題でミスをしないことが最も大切。その上で、記述の表現力を問われる問題、知識だけでは解けない、実験内容を考察する力で差がつくテストであった。

 

英語(学力検査)

<県教委発表>

  • 予想平均

60点(前年度50点※実際は52.6点)

  • 出題方針

 英語の基礎的な知識、技能を見る問題について、コミュニケーション能力を見ることを重視し、できるだけ広範囲にわたって出題するよう努めた。リスニングテストでは会話やまとまりのある英語の話を聞いて、その概要や要点を聞き取る力を見ようとした。平易な英語を理解する力、平易な英語で表現する力とともに、基本的な語、連語、慣用表現、文構造および文法事項の習熟の程度を見るよう配慮。ある程度の分量でまとまりのある英語の文章の概要や、要点を読み取る力を見る問題を出題した。

<解説>

知識を活用する力
国大セミナー 唐澤 志郎 氏
 大問数は昨年度と同様だが、問題の構成、配点等は一部変更があった。
 大問1はリスニングが28点分。配点や構成は昨年度と同様。
 大問2は日本語に合う英語を書く問題が17点分。今年度は新しく文脈に沿った内容を2文で記述する英作文問題が追加された。
 大問3は読解問題が18点分。短い英文を読み、文章の内容に当てはまる解答を選択または記述する設問を中心に構成されている。一昨年度の学習指導要領改訂に伴い中学英語に新しく追加された文法事項の「仮定法」に関する問題も出題された。
 大問4は読解問題が25点分。ここ数年と同様の形式で、大きく4つの場面に分かれた長い文章を読んでいく問題。昨年度まで大問4で出題されていた英作文の問題は大問2に移った。
 大問5は英作文を含む読解問題が12点分。そのうち1問は例年通り文章の内容に沿ったテーマでの英作文問題だった。
 問題構成に若干の変化があったが、全体を通した傾向については昨年度から大きな変更はなかった。しかし、大問2に新しく追加された英作文の問題では、相手からの誘いを断る趣旨の英文の記述が求められたり、大問4では料金表の資料と本文中の10%割引という内容から解答にたどり着く問題が出題されたりなど、単純に文法や知識を覚えているということだけではなく、語い力・文法力・読解力・表現力をバランスよく備え、英語を活用する総合的な力があるかどうかを問う傾向がますます強まっている。

 

英語(学校選択)

<県教委発表>

  • 予想平均

60点(前年度65点※実際は58.3点)

  • 出題方針

 大問1では英語による指示に従って会話やまとまりのある英語を聞き、概要や要点を聞き取る力を見た。大問2では自然な流れになるよう適切な語順を答えるなど、複数のまとまりのある英文を読んで概要や要点を読み取る力と、場面に応じて英語で適切に表現できるかを問うた。大問3では本文の内容に関する英語の質問に英語で答えるなど、まとまりのある英文を読み、概要や要点を読み取る力を見た。大問4では与えられた条件に従い、まとまった内容を英語で適切に表現できるかを見た。

<解説>

速読と読解力
国大セミナー 中村 昇二 氏
 大問数と設問の構成は昨年と同様だった。
 大問1はリスニング。間接疑問文や熟語が問われた。
 大問2は対話文読解。問題数、形式も変わらず。問題1は疑問詞+名詞が問われる問題。問2、問5は対応の英文が分かれば容易だったといえる。問3は、学生割引の10%を表から理解することが重要。問4は関係代名詞の省略が出題された。問6は、文章全体から判断する問題。4番目の文章から解答を見つけることができる。そのため難易度は高くなかったといえる。問7では、suggestを知っていたか問われる。
 大問3は傘をテーマにした読解問題。形式は大きな変化はない。問1は、英語で答える問題。問2は日本語で答える問題。共に対応の英文が比較的に分かりやすかったのではないか。問3のBに関しては受動態に気づいて過去分詞にする必要があった。問4は文整序の問題。①に関しては段落の内容を踏まえての解答、②に関しては前文の内容で解答できた。③に関しては接続詞のthough 〜が分かれば判断は早かったと思う。問5は並べかえの問題。likeの位置の判断が重要。問6は要約の問題。ここで時間をとられた受験生が多くいたのではないかと思う。
 大問4は英作文。内容は『海か山でのどちらで住むことが好きか』理由を踏まえて書く問題。この問題は書きやすかったのではないかと思われる。
 普段からの実践を想定した速読の練習とまた前後関係だけでなく段落内容も把握する読解力が今後も重要となる。

 

=埼玉新聞2023年2月23日付け1&7面掲載=

 

 今年度の問題や採点の手引き、リスニングは

 →こちら(リンク先は埼玉県教育委員会HP内です)

 

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