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サバ缶でつながる輪ー所沢西高・熊谷女子高・所沢高

福島の水産高とオンライン交流
活動11年目、サバ缶の販売も

 高校最後の思い出にボランティアへ―。東日本大震災を契機として県立所沢西高校生のかけ声から始まった活動が、11年目に入った。これまでの活動参加生徒は延べ900人。福島県立小名浜海星高校(当時いわき海星)と、がれき処理や甲子園応援などを通じ友好を深めてきた。活動は県内他校を巻き込みながら、現在も広がりを見せ、2019年からはオリジナルサバ缶の製造も開始した。

 

記念撮影するオンライン交流会のメンバーら(所沢高校提供)

 

 今月8日、所沢西高校のほか、熊谷女子所沢高校と福島県立小名浜海星高校の生徒らがオンライン交流会を行った。当時、所沢西高校に勤務していた教諭らが、熊谷女子高校や所沢高校に異動する中で、各校の生徒もボランティアに参加。かけ声「高校(K)最後の(S)思い出に(O)ボランティアへ(V)」の頭文字から「KSOV」と名付けられた活動の輪は広がり、今回の交流会につながった。
 交流会では、19年から始まった小名浜海星高校食品システム科製造のサバ缶に、各校の美術部員がデザインしたラベルを付ける企画の参加者が顔合わせ。自己紹介の後、小名浜海星高校生がサバのさばきを実演し、各校の生徒は手際の良さに感嘆の声を上げた。

去年製造したサバ缶

 

 意見交換で普通科高校と水産高校の違いを問われると、小名浜海星高校生は「実習が多く、就職後に生かせる実技的なことを学んでいる」と回答。「学科によっては遠洋航海実習もあり、3カ月近く海に出てマグロを釣ったりする」と話し、参加者を驚かせた。小名浜海星高校生からの逆質問では海なし県の埼玉県民に海のイメージを尋ね、ホスト会場となった所沢高校地学室が笑いに包まれる場面も。
 話題が東日本震災に及ぶと、当時高校生として海星高校に通い、現在教諭として同校に勤務している教諭の手紙が代読された。教諭は、当時の状況を「家がゆっくり揺れた。机の下に隠れると、家じゅうの家具が倒れ、津波警報が聞こえた」とし、級友の死を受け入れるのに時間がかかったことを告げて「家族・友人を大切に、いまを楽しんでください」と結んだ。
 小名浜海星高校は、震災から11年たったいま「風評被害こそなくなってきたが、いまだに福島の商品を敬遠する人もいる。皮肉なことに、人が手を加えないことで漁場はむしろ豊かになった」と説明し、震災の影響が根強く残る現実を伝えた。
 今回製造されるサバ缶は、各高校文化祭で販売するほか、11月に小名浜海星高校ホームページでもオンライン販売する予定。

 

=埼玉新聞2022年6月23日付け13面掲載=

 

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