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パラリンピック(競泳)西田杏選手・目指すは自分超えー川越女子高校

大舞台で恩返しを

 

競泳女子50㍍バタフライ(運動機能障害S7)に出場する西田杏(三菱商事提供)

 

 あと一歩のところで日本代表に手が届かなかったリオデジャネイロ・パラリンピックから5年。西田杏は挫折を乗り越え、東京大会に出場する。今年に入ってから女子50㍍バタフライ(運動機能障害S7)で2度日本記録を更新するなど泳ぎは加速。東京大会では「自分の記録を更新することに重点を置いている」。過去の自分を超える泳ぎができた時、歓喜の瞬間が待っている。

▽水中は自由

 先天的な左上腕欠損と右脚大腿(だいたい)骨欠損の障害があったが、子どもの頃から体を動かすことが好きだった。水泳との出合いは小学校3年生ごろ。体育の授業がきっかけだった。「水中は障害のあるなしが関係ない。浮力が働くことで体を自由に動かせ、その感覚が自分に合っていた」と振り返る。

 その頃からさいたま市内の県障害者交流センターのプールでも泳ぎ始めた。中学校時代は卓球部に在籍する傍ら、放課後は同センターに毎日のように通った。「練習すればするだけ速く泳げるようになり、喜びを感じていた」。一方でパラリンピックは手に届くものではないとも思っていた。

▽パラを意識

 高校は屋外50㍍プールがあるという理由で、川越女高を志望した。中学校3年生になると、1日10時間近く勉強したこともあった。同高に進学すると他の水泳部員とともに切磋琢磨(せっさたくま)。「障害者、健常者関係なく泳がせてもらえた。仲間がベストを出したら、私も出そうと練習できる環境だった」と語る。

 部活動で水泳に競技として取り組む意識が強くなり、パラリンピックを目指すようになった。高校2年生から海外のレースにも出場。東京学芸大進学後の2016年、代表候補として臨んだリオ大会の選考会で派遣標準記録を突破できず、代表選考から漏れた。

 この出来事に半年以上落ち込んだ。そんな時、母早苗さんの「やめたかったら、やめてもいいんだよ」という言葉に、肩の荷が下りた。周囲の期待、応援が重圧と感じることもあったが、「水泳が好きだから続けよう」と初心を思い出し、新たな一歩を踏み出した。

▽記念日を祝福

 その後、17年の世界選手権日本代表に選出されるなど成長を遂げた。東京大会に向けては、1日で約10㌔の距離を泳ぐなどしてスタミナ強化を図った。昨年時点の自己ベストは38秒65だったが、今年3月の日本選手権で37秒74をマークし日本記録を更新すると、5月の代表選考会では37秒01をたたき出し、泳ぐごとに進化した姿を見せた。

 東京大会で西田が出場する女子50㍍バタフライ(運動機能障害S7)は、9月3日に予選、決勝が行われる。同日が誕生日の西田は「本当に奇跡。良い一日にしたい」と願いを込める。そのためにも持ち味の前半からスピードに乗った泳ぎを貫く。「ずっと目指してきた世界一大きな舞台。自分の一番いい泳ぎを見せることが、一番の恩返しになる」と、自らの泳ぎで特別な日を祝福する。

 

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西田 杏(にしだ・あん) 

競泳女子50㍍バタフライ(運動機能障害S7)代表、三菱商事。1996年9月3日生まれ、24歳。所沢市出身、川越女高―東京学芸大出。2017年世界選手権日本代表(開催地が震災のため日本選手団は不参加)。

 

=埼玉新聞2021年8月22日付け9面掲載=

 

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