埼玉新聞社 高校受験ナビ

パラリンピック(陸上)山崎選手・野球経験生かし開花―山村国際高校

努力で引き寄せる勝負強さ

理想の放物線を目指す

 

陸上男子やり投げ(上肢障害F46)で自己記録更新を狙う山崎晃裕(日本パラ陸上競技連盟提供)

 

 「東京大会に懸けてきた6年間は、高校野球の2年半に似ている」―。
 陸上男子やり投げ(上肢障害F46)日本代表の山崎晃裕は、生まれつき右手の手首から先が短い。幼少時代は同じ先天性右手欠損のハンディを抱えながら、米大リーグのエンゼルスなどで投手として活躍したジム・アボットに憧れ、小学校3年生で野球を始めた。
 「少年野球から中学、高校と監督や先生方に恵まれた」と山崎。捕球から送球まで器用にグラブを操り、投手や二塁手、外野手としてプレーし、山村国際高3年生の夏には全国高校選手権埼玉大会で深谷商高との3回戦に代打で出場。1点を追う七回2死満塁から右翼線へ逆転2点打を放ち、前年まで夏未勝利だったチームを初の4回戦へ導いた。

 

▽夢を与える転向

全国高校野球選手権埼玉大会3回戦に代打で出場し、逆転の2点打を放つ山崎=2013年7月16日、上尾市民球場

 

 翌2014年、障害者野球の日本代表として世界大会で準優勝。既に開催が決定していた東京パラリンピックの種目に野球はなく、「パラリンピアンになりたい思いが強くなった。同じ障害を持った子どもたちに夢や希望を与えたい」と志を新たにした。
 アスリートとして、さらなる高みを目指す上で「野球で培った技術とか体力を少しでも生かせる種目は何か考えた」。15年秋にやり投げへ転向した直後は、地面にやりを刺すことさえ難しかったという。
 「野球をやっていた頃の身体能力ではまだまだ足りない。野球選手の山崎から陸上選手の山崎になるために、もっと頭を使ってトレーニングしなければ」。元砲丸投げ選手の佐藤直人コーチと出会い、本格的な練習を始めた5カ月後、当時28年間破られていなかった日本記録を更新した。

 

▽逆境はチャンス

 さまざまな不利を乗り越えてきた山崎は、逆境にひるむことなくぶつかり、成長のチャンスに変えていく。瞬発力を鍛える重量挙げの練習では十分な効果を得るために、「右手がないなら、その役割を果たすものをつくればいい」と周囲の協力で義手や装具の改良を重ね、トレーニングに励んできた。
 東京五輪・パラリンピックの延期が決定した際も「未来を信じて毎日成長することだけに集中していた。あと1年強くなれる。やってきたことをさらに上乗せできる」とプラスに捉えた。

 

▽日本記録更新を

 日本記録を塗り替えてきた山崎の目標は、自らが18年に樹立した60㍍65の更新だ。「本番で自分の投げができるように全てを出し切る。自分の
成長に目を向けることが結果につながる。自分が投げるやりにはいろんな人の思いが込められている」。初めて挑むパラリンピックの舞台で、追い求めてきた理想の放物線を完成させる。

 

山村国際高校・大坂仁監督

「やり遂げる強さ」

母校を訪問し、大坂仁監督(左)と握手する山崎(山村国際高校提供)

 

 山村国際高で山崎を指導した大坂仁監督は「目標を定めて一生懸命向かっていった成果。彼らしい」と教え子のパラリンピック出場をたたえた。
 大坂監督にとって山崎たちの学年は、自らの赴任と同時に入学した生徒たち。「グラブの扱いはできていて、ほとんど指導はしていない。やる気があり、一部員として見ていた。どんな練習も手を抜かず、打ちやすい球が来れば他の選手よりも飛ばしていた」と当時を振り返る。
 山崎がパラリンピック代表に内定し、7月上旬に母校を訪問した際も、話題の中心は2013年7月16日、上尾市民球場の3回戦で山崎の放った劇的な決勝打だ。
 ベンチ裏で黙々とバットを振っていた山崎の勝負強さに信頼を寄せていた指揮官は「とにかく負けず嫌いなところがあって、あの場面でも、なんとかしてくれる予感があった」と回想した。
 晴れ舞台での活躍を信じ、「定位置争いの中で試合に出ようと、外野で勝負したいと本人から申し出た。目標を決め、やり遂げるところが彼の強さ」と太鼓判を押した。

 

===============================

山崎 晃裕(やまざき・あきひろ) 

陸上男子やり投げ(上肢障害F46)代表、日本記録保持者。1995年12月23日生まれ、25歳。鶴ケ島市出身、鶴ケ島西中―山村国際高―東京国際大出、順大職。小学校3年生から野球を始め、山村国際高では投手、外野手としてプレー。大学進学後、障害者野球の世界大会で準優勝に貢献。2015年にやり投げへ転向し、日本パラ陸上選手権では16年の初出場から5連覇を達成した。

 

=埼玉新聞2021年8月23日付け11面掲載=

 

サイト内の

山村国際高校の基本情報は→こちら

カテゴリー

よく読まれている記事

最新の記事

TOP