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パリ五輪へ 活躍誓う県勢

 スポーツの祭典、パリ五輪が7月26日に開幕する。日を重ねるごとに注目度が増す中、活躍が期待される県勢が2人いる。男子400㍍日本代表の佐藤拳太郎(富士通)=所沢市出身、豊岡高―城西大出=と、男子マラソン日本代表の小山直城(ホンダ)=日高市出身、松山高出=は、日本陸上界を背負って立ち、世界の舞台と向き合っている。

 

機会捉え飛躍の風雲児
男子400㍍ 佐藤拳太郎(富士通)

昨年、男子400㍍の日本記録を樹立した富士通の佐藤拳太郎

 

 機会を捉えて才能を現し、目覚ましい活動する意味を持つ「風雲児」。まさに、男子400㍍の佐藤拳太郎(29)は「400㍍を走る理想形が固まった」ときっかけをつかみ始めた昨季に大きく飛躍を遂げた。
 昨年5月の静岡国際で8年ぶりに自己ベスト更新すると、7月のアジア選手権でさらに上回るタイムで優勝。そして、8月の世界選手権では、1991年に高野進氏が記録して以来、32年間打ち破られることがなかった日本記録を0秒01更新する44秒77をマークし、日本陸上界の歴史を大きく動かした。
 城西大学1年時から400㍍を専門に。だが、リオ五輪、東京五輪で1600㍍リレーのメンバーに選ばれるものの、個人としては結果が出せずもがき苦しんでいた。「何か変わるきっかけが欲しかった。競技を長くやっているけど、400㍍を知らないのではないかと思ったら突然、勉強と研究をしてみたいとなった」。一昨年に早大大学院に通い、400㍍について研究。400㍍を4分割し、100㍍ごとに走り方や展開を細かく分析したことで、「最初の200㍍にこだわりすぎて、400㍍をトータルに考えていなかった」。きっかけをつかんだことで昨年、日本一速いランナーとなった。
 パリ五輪出場となる参考標準記録の45秒00を突破し、自身3度目の五輪出場を視界に捉えている。「早くオリンピックが来てほしい。楽しみしかない」。日本一の快速ランナーがパリで活躍することに期待だ。

 

 佐藤 拳太郎(さとう・けんたろう) 富士通所属。豊岡高―城西大出。所沢狭山ケ丘中は軟式野球部に所属し、豊岡高で陸上を始める。高校3年時に200、400㍍で全国高校総体に出場。進学した城西大学では4年時の2016年リオ五輪で1600㍍リレーの日本代表に選出。17年に富士通に入社し、21年の東京五輪で1600㍍リレーの日本代表として2走を務めた。23年のブダペスト世界選手権の男子400㍍予選で44秒77をマークし、32年ぶりに日本記録を更新した。1994年11月16日生まれ。29歳。所沢市出身。

 

遅咲きも努力積み輝く
男子マラソン 小山直城(ホンダ)

MGCで優勝し、男子マラソンでパリ五輪の内定を獲得したホンダの小山直城

 

 「大器晩成」―。若い頃は目立たず、徐々に実力を養い後に大成する四字熟語は、小山直城の陸上人生を描いている。
 日高高麗川中で陸上を始める。だが、高校生まで全国大会出場は、埼玉が初優勝した松山高校3年時の全国都道府県駅伝のみ。同年時の県高校総体では、1500㍍決勝で転倒して右膝を骨折。個人種目での全国高校総体出場はかなわなかった。
 けがで落ち込んでいる時、心に響いた言葉が、「努力したものが成功するとは限らない。しかし、成功する者は皆努力している」。同校の校長が音楽家ベートーベンの名言を引用したひと言はその場限りではなく、将来の競技人生の支えにもなった。小山は「この言葉でけがを乗り越えることができた。厳しい言葉かもしれないけど努力しないと成功しないと教えてくれた」。
 学生時代から知る指導者たちは小山のことを「真面目で、素直に話を聞いて地道に練習するタイプ」と評する。周囲から認められるほど練習の虫となった小山は、東農大2年時の第93回箱根駅伝に関東学生連合で出場。ホンダ入社後は2022、23年の全日本実業団駅伝の連覇に貢献した。
 そして、運命を変えた昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2時間8分57秒を記録して優勝。パリ五輪内定の切符をつかみ取り小山は「8位以内を目標に良い報告ができればいい」と謙虚に青写真を描いた。

 

 小山 直城(こやま・なおき) ホンダ所属。松山高―東農大出。日高高麗川中で陸上を始める。松山高校3年時に全国都道府県駅伝に出場し、4区区間賞に輝き、埼玉の初優勝に貢献した。進学した東農大では、2年時の第93回箱根駅伝に関東学生連合で出場。卒業後はホンダ陸上部に所属し、2022年の全日本実業団駅伝は3区、23年では4区を担当し、大会連覇に導いた。23年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2時間8分57秒で優勝し、24年パリ五輪の出場内定を決めた。1996年5月12日生まれ。27歳。日高市出身

 

=埼玉新聞2024年1月3日付け1面掲載=

 

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