<3回戦>
終盤に底力発揮
大津と2-2 PK戦制す
昌平―大津 PK戦に勝利し、喜ぶ昌平の選手たち=2日、浦和駒場スタジアム
第102回全国高校サッカー選手権第4日は2日、浦和駒場スタジアムなどで3回戦8試合が行われ、埼玉代表で2大会連続6度目出場の昌平は、前回大会4強の大津(熊本)に2―2からのPK戦を5―4で制し、3大会ぶりに準々決勝進出を決めた。
昌平は0―1の前半終了間際に小田のゴールで同点にする。後半28分に2点目を許して勝ち越されたが、同38分に長兄弟の兄・準喜のパスに弟・璃喜が右足で合わせて再び追い付いた。PK戦では佐々木智の好セーブがあり、大津を下した。
再び逆境はね返す
またしても終盤に劇的ドラマが生まれた。1―2の後半38分に長兄弟の兄・準喜のパスから弟・璃喜のゴールで同点にし、PK戦で勝利。チームの過去最高成績に並ぶ3大会ぶりの8強進出を決めた。
1、2回戦とは違いこの日は「4―2―3―1」の昌平の基本と呼べるフォーメーションに戻した。村松監督は「センターバックが強そうだったので、相手のボランチ2人に対して数的有利をつくって進入する方が良かった」と理由を語った。
試合序盤からポゼッション率を高めて主導権を握ったが、前半37分に失点した。同終了間際に小田のゴールで同点としたが、後半28分に2点目を許して勝ち越される苦しい展開に。準喜は「ビハインドしていた中で、慌てたら相手の思うつぼ」と冷静さを保ち火事場のばか力を呼び起こした。2回戦同様、後半31分に璃喜ら選手を複数投入。2トップに変更して攻撃が活性化されると同点ゴールが生まれ、PK戦で勝利を呼び込んだ。
1回戦の圧勝から2戦連続のPK戦勝ちを決めて喜ぶ選手たち。ゲーム主将の佐怒賀(さぬか)は「2試合連続でPK戦で勝てたのはよかったけど、修正しないといけない部分もある」と反省も忘れなかった。過去2度挑戦した準々決勝の舞台。相手は強豪の青森山田だが、三度目の正直で突破してくれることに期待したい。
昌平―大津 後半38分、昌平の長璃(右)がシュートを決める
阿吽の呼吸で同点弾
長準喜・璃喜兄弟
後半終了間際に長兄弟からチームを救う同点弾が生まれた。1―2の後半38分、鄭志錫からのパスを受けた兄の準喜は「点を取ることで頭がいっぱいだった」とゴール前で無我夢中にボールをつないだ。左で待ち構えていた弟の璃喜は「お兄ちゃんだから打たせてくれると思った」と絶妙なパスをダイレクトで合わせ、ゴールネットを揺らした。
同31分から出場した璃喜は、1回戦から3戦連続のゴール。進撃を続ける昌平のラッキーボーイになっている。兄弟での大仕事に璃喜は「普通のゴールとは違う感覚。一段とうれしい」と勝利につながる一発を喜んだ。
兄弟は小学校入学前から一緒にサッカーをプレーし、阿吽(あうん)の呼吸を持つ。璃喜は「お互いの特徴を熟知しているからこそゴールにつながった」と信頼関係を強調した。
チームは2試合連続のPK戦勝ち。準喜は「璃喜のおかげで3年生が奮起している」と弟の活躍に感謝。璃喜は「高校サッカーにかけているのを感じるので(兄を)引退させたくない」。サッカーを愛する兄弟が準々決勝でもチームを勝利に導く。
練習の成果 実るセーブ
GK佐々木智
PK戦で相手の4本目を止める昌平の佐々木智
昌平の守護神・佐々木智がPK戦で好セーブを見せた。「PK戦には自信があったから受けてやろうという気持ちがあった」と大津4人目のシュートを左手で止めて勝利に導いた。
2回戦のPK戦では1本もセーブできなかった悔しさから加藤GKコーチ、1年生GK入江と3回戦の前日にシュートストップのタイミングなど約1時間の練習。加藤GKコーチは「時間がかかったけど、タイミングが取れているから安心できた」と恩師も納得する活躍を披露した。
<2回戦>
終盤 気迫の同点劇
米子北と1-1 PK戦制す
昌平―米子北 後半25分、昌平の小田(中央)がゴールに迫る=31日、埼玉スタジアム
第102回全国高校サッカー選手権第3日は31日、埼玉スタジアムなどで2回戦16試合が行われ、埼玉代表で2大会連続6度目出場の昌平は、14大会連続19度目出場の米子北(鳥取)に1―1からのPK戦を4―3で制し、3回戦に駒を進めた。
昌平は0―0の後半7分にゴール前の混戦から失点。後半終了間際に田中瞭のクロスから途中出場の長璃が頭で合わせて同点に。PK戦に突入し、4―3で下した。
新年へつなぐワンプレー
昌平―米子北 PK戦を制し、喜びを爆発させる昌平の選手たち
昌平の全国はまだ終わらない。0―1の後半ロスタイム、田中瞭のクロスに長璃が頭で合わせて同点にすると、後半終了の笛が鳴ってPK戦へ。勢いそのままに4―3で制し、3回戦進出を決めた。村松監督は「今日負けたら昌平らしくなくて選手たちは後悔するなと思っていた」と選手たちの奮闘をたたえた。
1回戦と同じフォーメーションで臨んだ前半は、相手のロングボールを警戒しすぎて自陣に引いてしまう展開に。すると後半7分に失点を許した。
同14分にボランチの大谷を右サイドで生かすために〝4―2―3―1〟の陣形に変更し、サイド攻撃を仕掛けるが、ゴールまでが遠い。同31分、村松監督が「周りとの関係をつくれる土谷か、サイドを仕掛けられる長(璃)か。思い切っていこう」と土谷に代えて長璃を投入し、可能性を信じた。
最後のワンプレーで願いが通じる。右サイドを突破した大谷のパスに田中瞭が「キーパーに捕られないように、誰かが飛び込んでくれることを信じた」とクロスを上げた。逆サイドからゴール前に入った長璃が「体が勝手に動いた」と頭で押し込んで同点にし、PK戦に持ち込んで勝利を手にした。
「経験したことがないくらい鳥肌が立った」(田中瞭)。劇的な勝利に年の瀬の埼玉スタジアムは歓声に沸き、昌平の挑戦は新年へとつなげた。
チーム救う魂のヘッド
長 璃喜
後半32分、昌平の長璃(右)が突破を図る
0―1の後半終了間際、途中出場の1年長璃がチームを救う値千金の同点ゴール。高校に入ってから初めてだというヘディング弾に「あまり覚えていない。全く練習をしていない形でびっくりした」と笑顔で振り返った。
後半31分、チーム最後の交代カードとして左サイドで出場した。1点を追う場面では攻撃力のある田中瞭を中心に右サイドにボールが集中。「サイドにこだわらず、とにかくプレーに関わる」と中央に構えたところに右サイドから田中瞭のクロスが配給された。
身長166㌢のドリブラー。埼玉大会準々決勝で右足首を痛め、全国大会開幕まではフィジカルトレーニングを中心に取り組んだ。今回のゴールは「体幹とジャンプ力が上がった成果」と手応えを口にした背番号11はさらなる成長を遂げる。
持ち味発揮し得点呼び込む
田中瞭
右サイドバック田中瞭の正確なクロスが同点ゴールを呼び寄せた。勝利に貢献した背番号5は「攻撃重視で高いポジションをとっていいと言われていたから、仕掛けるよりかはクロスを意識した」と振り返った。
持ち味は豊富な運動量とクロスの精度。後半14分からフォーメーションが変更され、「(大谷)湊斗がいいポジションにいてくれた」と右サイドの大谷と連動して果敢に攻撃を仕掛けた。「一日でも長くプレーしたい」と勝利のために、次戦も右サイドを駆け上がる。
<1回戦>
流れ渡さず圧勝
奈良育英に7-0
昌平―奈良育英 前半7分、競り合う昌平の長準(中央)=29日、埼玉スタジアム
第102回全国高校サッカー選手権第2日は29日、埼玉スタジアムなどで1回戦15試合が行われ、埼玉代表で2大会連続6度目出場の昌平は、3大会連続16度目出場の奈良育英に7―0で快勝し、2回戦進出を決めた。
試合序盤から主導権を握った昌平は前半11分の小田の先制ゴールを皮切りに、同25分に土谷、同36分に鄭志錫が追加点を奪った。後半21分に相手の背後から抜け出した鄭志錫がチーム4点目。その後も攻撃の手を緩めることなく途中出場の西嶋、長璃、工藤がそれぞれゴールを決めて相手を寄せ付けなかった。
陣容変え手札増加
全国大会の独特な雰囲気に緊張してもおかしくない初戦で、昌平は相手を完全に脱帽させる7得点の快勝劇を披露した。
大量得点の要因は、フォーメーションの変更。これまでは〝4―2―3―1〟を基本にしていたが村松監督は「良くない時は中盤を厚くし過ぎてしまい相手を守りやすくしてしまう。このままだと上位進出はできない」と、〝4―4―2〟にしたことが功を奏した。
試合序盤から主導権を握ると攻撃の起点となったのが小田、鄭志錫の2トップと左サイドの土谷。象徴的なのが前半11分の先制点。土谷のパスから鄭志錫が抜け出し、小田が決めきった。土谷は「ワントップだと1枚しか動かすことができないから難しいけど、2トップなら選択肢が3枚になってパスが出しやすい」とバリエーションが増加。前半25分の2点目もこの3人でゴールまでの道筋を築いた。
3―0で折り返した後半は積極的なメンバー交代を行い、西嶋、長璃、工藤と途中からピッチに入った選手がそれぞれゴールを奪い、層の厚さを見せつけた。
新たなフォーメーションは3日のプレミアリーグ最終節から選手権初戦までの3週間で構築。21日の練習試合で、京都橘を2―0で下したことで可能性を感じたという。村松監督は「次は戻すかもしれないし、これでいくかもしれない」と勝利のために進化し続ける。
好機に躍動 役割全う
2G1Aの鄭志錫
昌平―奈良育英 後半21分、昌平の鄭志錫(左)がシュートを決める
昌平の2年生ストライカー鄭志錫が2ゴール1アシストの活躍でチームの勝利に貢献した。全国大会での初得点にも「うれしいというよりほっとした」と喜びは控えめに、小さなガッツポーズにとどめた。
初の大舞台でも冷静だった。前半11分に小田の先制点をアシスト。GKと1対1の形に持ち込むと「チームの勝利のためより確実な方を選んだ」とパスを選択した。同36分にゴール前のこぼれ球を押し込み、欲しかった自身1点目を奪った。
埼玉大会では準決勝、決勝と先発メンバーから外れる悔しさを経験。その経験が意識に変化を生じさせ、「チームを円滑にゴールに向かわせるプレーをする」と周りを生かす役割も担うようになった。「目標は日本一」と語る背番号15が次戦もゴール前で躍動する。
多彩なキックで司令塔本領発揮
土谷
1ゴールを決めた土谷は、途中交代した後半24分まで昌平の司令塔として攻撃のタクトを振った。「カウンターの時に相手のスペースが多かったから遠くを狙うことを意識した」と持ち味のキックが本領発揮した。
この日は2トップの小田、鄭志錫と右サイド山口の動きを考えてパスを供給。前半25分には小田の浮き球パスにダイレクトでゴールを決めた。「大差で勝てたのは良かったけど、修正しなければいけないところがある」と勝ってかぶとの緒を締めた。
前大会の雪辱に闘志
先制点の小田
後半6分、昌平の小田(右)がシュートを放つ
昌平の点取り屋小田が1ゴール1アシストでFWの役割を果たした。前半11分に相手GKと1対1の鄭志錫と並走し、「志錫がシュートを決められる場面だから相手GKが自分を意識するように走った」とおとりになろうとしたが、流れてきたパスに右足で合わせてゴールを決めた。
同25分には土谷の得点をアシストするなどチームに貢献した。前回大会は全2試合に出場した
が無得点。「自分の力不足で悔しい思いをしたから爆発しないといけない」と次戦もゴールを狙う。
3度目の挑戦 先輩激励
第102回全国高校サッカー選手権第5日は4日、浦和駒場スタジアムと千葉・柏の葉公園総合競技場で準々決勝が行われる。
3大会ぶり3度目の8強入りを決めた埼玉代表の昌平は、浦和駒場スタジアムで27大会連続29度目出場の青森山田と対戦する(12時5分)。勝ち抜けば、県勢では第71回大会(1992年度)の武南以来、31大会ぶりの4強入りとなる。
青森山田戦を翌日に控えた昌平は3日、杉戸町の同校グラウンドで約1時間の練習を行った。3回戦に出場した選手たちはストレッチなどで体の疲労回復に努めた。その他の選手たちは4対4のボール回しとシュート練習で調整した。
この日はOBの須藤直輝(鹿島)が訪れて後輩たちを激励した。須藤は10番を背負い第98、99回大会の8強入りに貢献。第98回大会の準々決勝で敗れた青森山田と対戦する後輩たちに、須藤は「あの時に自分たちがなすすべなく敗れて得た経験を発揮して勝ってもらえたら、自分たちの敗北も意味があるものになる。(青森)山田に勝つところを見たい」とエールを送った。
積極姿勢で初4強
準々決勝に向けて最終調整を行う土谷(右から2人目)ら昌平の選手たち=3日午前、杉戸町の同校グラウンド
3大会ぶりにチーム最高成績の8強に並んだ昌平が、新たな歴史の一ページを懸けた一戦に挑戦する。
準々決勝で対戦する青森山田は、昨年の高円宮杯U―18(18歳以下)プレミアリーグ王者。今大会の優勝候補筆頭格から金星を挙げるためには、MF大谷とMF長準のボランチが高い位置でボールを保持できるかが勝敗の鍵を握る。村松監督は「逃げてボールを下げたら相手のプレスが強くなる。2人が強気の姿勢でいないとやられる」と語った。
青森山田とは昨年のプレミアリーグ東地区で2度対戦し、1分け1敗。直近の11月26日に行われた第21節では守勢の時間が長く回りながら、一瞬の隙を突いて後半38分にMF土谷、同42分にMF三浦のゴールで2点リードしたが、試合終了間際に2失点して引き分けている。
この経験を踏まえ村松監督は「終盤に失速する時間帯があるからそこで仕掛けられたらいい」。今大会2試合連続で途中出場のMF長璃が同点弾を決めるなど選手交代の見極めも重要になりそうだ。
屈強なフィジカルとロングボールを武器にする相手に、技巧派のサッカーがどこまで通用するか。「高校サッカーは昌平みたいなサッカーが勝ちづらいところはある。どうしても(青森)山田みたいなスタイルが勝ちやすい中、自分たちのサッカーを証明したい」と指揮官。青森山田に勝つことは、全国に昌平の名をとどろかせる絶好の機会となる。
=埼玉新聞2023年12月30日付け1、7面、2024年1月1日付け1、11面、3日付け1、7面、4日付け7面掲載=
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