鉄と陶器 2人の鬼才
川口市立アートギャラリー・アトリアで「市寄贈作品展の第5弾・川口のアート、再発見」が開かれている。鬼才と呼ばれる2人の市内の彫刻家、故中村隆さん(2010年、61歳で他界)の23点と、青木邦眞さん(59)の27点が展示されている。いずれも新鮮な感性、生命観を感じさせ、確かな存在感で見る人の心に迫る作品。市に寄贈された計4点も展示されている。
中村隆さんの遺作「思考№8」の前で、妻順子さん(左)と娘遥さん=10月29日、川口市立アートギャラリー・アトリア
○鉄と格闘
中村さんは東京都北区の出身。武蔵野美術短期大学を卒業した。20代の頃から父母と川口に移り住み、気に入っていたという。世間に迎合しない昔かたぎのプライドを大事にした芸術家だった。作品は、鉄を溶接したり、たたいたりしてつくり上げる。重量感がある作品だ。
中村さんとよくけんかをしたという埼玉画廊の岡村睦美店主は「自分なりの哲学を持っていた。気概のある作家。鉄と格闘する作家だった。61歳で他界したのは、これからという時に無念だっただろうと思う」としのんだ。
市に寄贈された作品は「思考 №8」(08年制作)と「INーOut №14」(1993年制作)。№8は人の背丈ほどの大きな鉄の構造物。№14は縦146㌢、横112㌢、厚さ3㌢の鉄の板の形だ。
作品「土からの収穫」と青木邦眞さん
○有機生命体
青木さんは市内で生まれ育った。飯塚小学校、西中学校、県立川口北高校と、「生粋の川口っ子です」。武蔵野美大を出た後、県立鳩ケ谷高校で美術教諭になり、29歳から30年間、県立新座総合技術高校デザイン科で教諭を務めている。
作品は陶土を焼いて固めたテラコッタ。今回の展示会場で青木さんが制作する模様の映像を見ることができる。粘土の小さな塊やひもを縄文土器のように土台から上へ少しずつ積み上げていく。
1㌢ほど積み上げたら、1日ほど乾燥させなければいけない。スピードアップはできないという。「作品は土から掘り出したもののイメージ。自分がつくり上げているものだが自ら成長する、有機生命体を作り上げている、と感じることがある」と話す。
寄贈作品は「生きものの領域02」(19年制作)と「土からの収穫~2013秋~」(13年制作)。ともにテラコッタだ。
展示初日の10月29日には、中村さんの妻と青木さんに、奥ノ木信夫市長から感謝状が贈られた。市長は「市の文化高揚のために市立美術館構想に取り組んでいるところ。こうした中、川口が誇る鬼才2人の素晴らしい作品が寄贈されたことは大変ありがたい」と感謝の言葉を述べた。展示は13日まで。
=埼玉新聞2022年11月6日付け10面掲載=
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