埼玉新聞社 高校受験ナビ

日本最古の「桂木ゆず」収穫ボランティアー筑波大学附属坂戸高校

毛呂山町ボランティア募り収穫支援
農家高齢化で人手不足

 毛呂山町は日本最古のユズ生産地といわれ、奈良時代に栽培が始まったとされる。町は近年、ブランドの保護に本腰を入れ、「桂木(かつらぎ)ゆず」として商標登録。だが、生産農家の高齢化が進み、毎年11月から12月にかけての収穫期には人手が足りず、実を取り切れなくなっているという。町などはボランティアを募集し、支援に乗り出している。

ユズを収穫するボランティアの参加者=昨年12月11日、毛呂山町滝ノ入

 

 昨年12月11日、同町滝ノ入のユズ畑2カ所に収穫ボランティア計40人がやって来た。町役場職員互助会が初めて呼びかけた「ゆず採り体験ボランティア」を希望した町職員12人と、2018、19年に町観光協会が一般から募った「ゆず採り隊」をきっかけに毎年訪れている、筑波大付属坂戸高校の生徒24人など。「ゆず採り隊」は新型コロナウイルス感染拡大のため、20年以降は中断されたままだ。
 ボランティアは、午前にユズ約2千個を収穫。午後は実の選別を行った。ユズは木に鋭いとげを持つ。加えて、畑は里山の斜面に広がる。参加者はけがに注意しながら、作業に従事した。引率する同高の渋木陽介教諭(46)は「農村と都市のひずみについて、体感し考えてほしい」と狙いを話す。3年生の矢島実莉さん(18)と用那桜(もちい・なお)さん(17)は、「授業では経験できないことを学べた」と充実感が漂う。
 町は職員のボランティアを恒例化し、将来はアルバイトとして派遣する構想を描く。全国の自治体では、副業に農業を認める動きが広がっている。町総務課の大野勉課長(59)は「就業ルールを改定するなどして、制度化したい」と言う。ボランティアを行った職員の寺坂朝陽さん(22)は「大変な場所で作業していることがよく分かった。収穫支援は地域活性化にもつながると思う」と話した。
 今回受け入れたのは、ユズ農家の2代目小峰孝夫さん(62)と妻文枝さん(63)。小峰さん夫妻は、約30㌃の畑でユズ300本ほどを栽培する。小峰さんは「子ども時代は一番高く売れ、『金の卵』と言われていた」と懐かしむ。だが、現在は価格も下がり、「ユズだけでは生活できない。成人した子どもが3人いるけれど、誰も継いでくれないだろう」と文枝さん。小峰さんも会社員との兼業だ。
 農作業は休日に限られるため、収穫だけではなく、剪定(せんてい)なども十分できないという。小峰さんは「実が残ると木が疲れ、病気の原因にもなる。収穫期には毎週来てもらいたいぐらい」と希望する。

ボランティアに作業の説明をするユズ農家の小峰文枝さん(右)

 

 町は15年から、産業振興課が主導して、ユズのブランド化やPR、販路拡大などに力を入れ始めた。中心となって業務に携わり、現在は町観光協会に出向する中里公哉事務局長(44)は「桂木ゆずがなくなるという危機感があった」と振り返る。16、18年に商標登録。温浴施設で使われたり、大手企業が企画、製造する食品や入浴剤に「桂木ゆず」の商品が誕生したりと、成果が表れてきたという。
 楽観はできない。JAいるま野毛呂山柚子(ゆず)部会の会員数は、21年度が48世帯。15年度の51世帯をピークに減りつつある。中里事務局長によると、年齢層は70代が一番多く、最も若い会員は40代後半が1世帯のみ。「年間を通じて支援できる集団をつくり、外から新たな担い手を受け入れることも必要」と同事務局長。「桂木ゆず」の将来について議論を一層深め、行動に移す時を迎えている。

 

=埼玉新聞2023年1月10日付け1面掲載=

 

サイト内の

筑波大学附属坂戸高校の基本情報は→こちら

カテゴリー

よく読まれている記事

最新の記事

TOP