埼玉新聞社 高校受験ナビ

時代の変化に機敏に対応 私学の魅力に迫る

 建学の精神に基づいて近年、スポーツ、大学進学の両面で顕著な実績を残す県内の私立高校。最近は単願での入学者も増えているが、その魅力について埼玉県私立中学高等学校協会副会長で昌平中学・高等学校(北葛飾郡杉戸町)の城川雅士校長に話を聞いた。

 

昌平中学・高等学校  城川 雅士校長

 

―私立高校の強みは
城川 私が感じる私学の強さは2つあります。
 1つ目は、状況や環境の変化にスピーディーに対応できる柔軟性だと思います。例えばコロナ禍による2020年3月からの全国一斉休校の際、多くの私立学校が3月上旬から中旬にはオンラインでの授業配信など従来と形を変えた学習指導をスタートさせていました。本校(昌平高校)でも全国一斉休校に入って間もなくオンラインによるHR活動を日々行い、学習の仕方をアドバイスしたり、映像授業を配信するなどしました。これは急な休校に戸惑っている生徒たちの不安解消が急務だと感じたからです。また、私学のこういった柔軟な対応力は大学入試や指導要領の改訂への速やかな対応や、現実的で効果的な指導にもつながります。
 2つ目は柔軟性とは逆に、各私立学校には創設時からの不変の教育理念がある強さです。私立学校には学校ごとの「建学の精神」があります。それは多くの場合、学校創設時からの教育の理念です。どういった人材を育成し、教育活動で何を重視するかという学校ごとが追求する教育の本質です。時代が変化しても学校ごとの本質は変わりません。ブレない土台(建学の精神)があるからこそ、柔軟性を生かした変化を繰り返してもそれは表面上の変化であり、学校ごとの教育の本質は変わらない。これは私立学校の強さだと思います。

 

―進路指導はどうでしょうか
城川 現実的な対応をするのは受験指導に対しても言えます。先ほど触れた私立学校の柔軟性は進路指導の場面でも効果を発揮することが多いです。生徒ごとのタイプや目標によって指導方法を変えるなど、具体的で現実的な指導を実践しています。多くの私立学校がコースや類型で細かくタイプ分けているのも、生徒の進路実現のための柔軟さの表れであり、進路目標に合わせたきめ細かな教育をするための工夫です。
 多様化・グローバル化が進む現代社会において、進路指導の在り方も変化してきました。例えば大学入試という視点で見ても各大学が評価するポイントの多様化が広がり、高校時代の多様な体験を重視する傾向が強まっています。多くの私立学校が待ち望んできた価値観に変化してきたとも感じています。最近の県内私立高校の大学進学実績の躍進は、実体験を重視し、大学入試の変化に柔軟に対応した結果だと思います。

 

昌平高校ではグローバルな人材育成に向けて世界基準となるIB教育(国際バカロレア)を実践

 

―昌平高校ではどのような指導をしていますか
城川 本校の教育方針に「手をかけ 鍛えて 送り出す」という教員モットーがあります。本校で人生最も多感で吸収力のある時期を過ごす生徒に対して、可能な限りの成長の場となるよう手助けしたいという思いから教員同士の合言葉としています。
 本校では多様な価値観が共存できる学校を目指しており、指導の上で強く意識しています。例えば、グローバルな時代に対応できる人材育成に向けて世界基準となるIB教育(国際バカロレア)を一部のコースで実践しており、昨年卒業したIBコース1期生の多くは国内の難関大学に進み、海外進学した者もいます。一方で高いレベルの文武両道を本気で目指すコースも設置しています。このコースは部活動で全国レベルでの活動をしながら、学習では難関大学を突破できる学力を育成することを目指しています。
 今年の3年生からもサッカー部で活動した生徒が国立大学医学部に合格するなど、見事に高いレベルの文武両道を成し遂げた生徒などもいます。その他にもさまざまな多様性を生かす場があるのが本校の特徴だと思います。

 

―私立高校は英語教育に力を入れている学校が多い印象です
城川 グローバルな時代の流れの中で、多くの私立学校が英語の重要性を理解し重視しています。私立学校の全般的な英語教育の特徴は、海外研修などを通して実践的な活用の場を多く作っていることだと思います。近年の大学入試では、リスニングやスピーキングを導入した試験も増加しています。私立学校の英語における実践的な体験の多さも、私立学校が大学進学実績を伸ばしている重要な要素だと私は分析しています。大学入試において英語は文系学部だけでなく理系の学部の受験においても重要になりますので。
 本校では英語力強化のための本校独自のプログラム「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」を全校生徒対象に展開しています。私の持論でもありますが、英語という教科は人のタイプに関係なく、取り組み次第で誰でも得意教科にできます。中学時代に英語が大の苦手であった生徒であっても、海外研修での交流など一つの「きっかけ」で英語学習に積極的になり、そこからの取り組みから得意教科に変化していくケースをたくさん見てきました。本校ではその「きっかけ」をさまざまな方面から与える工夫をしています。言語の習得には環境が重要で、いかに触れる機会を増やし、活用することの充実感を感じさせるかがポイントだと思っています。

 

―私立を第一志望として進学する生徒も増えています
城川 県内の私立高校全体で見ても単願で受験する生徒が増えています。県内私立高校の在籍者数(全日制・通信制合計)において平成25年と令和4年度の数字を比べると、この10年で約350人増加したことが分かります。これは、どの私立学校も明確な教育ビジョンを持って教育に取り組んできたことから、それに共鳴する生徒が増えているのだと思います。私立学校関係者は変化する時代に対応するため、情熱を持って新たな教育のプログラムを開発し、工夫と努力を重ねています。私立学校の今後の躍進にご注目ください。

 

―私立高校は学費が高いというイメージを持った保護者もいるかと思いますが
城川 私立高校を第一志望とする単願者が増えていることの大きな理由の一つは、行政からの経済的な補助が大幅に拡充されたこともあります。私学に通う生徒を持つご家庭に対する補助制度は主に次の2つがあげられます。
①国からの「高等学校等就学支援金制度」
②県からの「私立高等学校等父母負担軽減事業補助制度」
 これらの制度の充実により県内の私立高校に通う生徒のご家庭の7〜8割が何らかの補助を受けられるようになりました。実質、授業料全額が補助されるご家庭も多くあります。高校進学を検討の際には国や県のHPで詳細を確認していただき、ぜひこれらの制度を有効に使ってもらいたいものです。

 

―新学期が始まると学校説明会や進学フェアなどが県内各地で開催されます。学校選びのポイントとは
城川 私からのアドバイスとしては、まずはできるだけ早い時期に少しでも興味のある複数の高校に足を運び、説明会や相談会などに参加することをお勧めします。具体的な説明を聞くと受験生としての自覚も生まれます。また、高校による取り組みの違いも実感することができ、自分に合う高校選びのポイントが見えてくると思います。
 本校では例年5月くらいから見学会や説明会を開催します。意識の高い生徒は1学期から動き出しています。
 埼玉県私立中高協会が開く「埼玉県私学フェア」も大宮、川越、熊谷の3か所で8月に予定されています。このようなイベントでは一度に多くの学校の話を聞くことも可能です。積極的に参加することをお勧めします。

 

=埼玉新聞2023年3月10日付け「新中学3年生向け 入試対策特集」内4面=

 

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