2021年3月30日配信
新聞・テレビでかなり大きく扱われたのでご存知の方も多いと思われますが、今年3月に行われた令和3年度茨城県立高校入試で採点ミスが発見され、再点検の結果、追加合格者が出るという事態に発展しました。
採点ミス発見のきっかけは受験生の保護者による情報公開請求でした。ある県立高校を受験し不合格となった生徒の保護者が答案の開示を求めたところ、採点ミスが明らかになりました。埼玉県も同様ですが、希望者には得点は開示されますが、答案用紙までは開示されません。しかし、一定の手続きを経れば答案用紙そのものの開示も可能になることがあります。
茨城県教育委員会はこの結果を重くみて、学力検査を実施した93校で答案用紙の再点検を行ったところ、53校で408件の採点に誤りがあることが判明し、計3件(名)の追加合格者を出しました。同教委では、「再発防止策を策定し、来年度の入試に反映していきたい」と述べています。
◆2014年度には東京都立高校でも
採点ミスで思い出されるのは2014年度東京都立高校入試です。ある都立高校で入学者の学力を把握するために答案チェックしたところ、数件の採点ミスが発見されました。そこで、報告を受けた都教委が全校にやり直しを指示した結果、全体で100件以上のミスが見つかりました。その後、過去3年間の再点検をしたところ、合計3000件以上に及ぶ採点ミスが見つかり大きな社会問題となりました。
◆ミス防止へマークシート方式採用
東京都教育員会は、こうした一連の結果を受けさまざまな再発防止策を講じることになりましたが、そのうちの一つが記号選択問題におけるマークシート方式の採用です。全面的なマークシート方式採用は全国で初の試みでした。ただ、この時は全国的な広がりはありませんでした。
採点ミスは東京都や茨城県が例外なのではなく、全国どこでも起こり得ることです。今回のケースをきっかけに、全国で採点方法見直しの機運が高まると予想されます。その過程で、一つの方法としてマークシート方式採用が検討される可能性もあります。
チェックの回数を増やすには、採点人員を増やしたり、採点日数を増やしたりすることが必要です。場合によっては検査から発表までの日程を延ばすことになるかもしれません。また、機械採点に適した記号選択式問題を増やすのも一つの方法なので、これによって出題傾向が若干変わるかもしれません。
さまざまな問題をはらんだ採点ミスとその防止策。埼玉はもとより全国の教育委員会が、どのような対策を講じるかを見守る必要があります。(教育ジャーナリスト・梅野弘之)
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