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高校入試のプロが教える 高校入試で求められる力とは

2024年4月17日配信

習ったことの本質や背景まで理解することが大事

 近年では各教科で「思考力、判断力、表現力」を求められる問題の出題が増えてきている埼玉県公立高校入試。今年2月21日に実施された令和6年度入試の問題の分析を踏まえつつ、来年2月26日に行われる令和7年度入試を見据えて今からでもできる勉強法や心構えなどを学習塾「スクール21」入試対策本部の宮川由三本部長に語ってもらった。

 

スクール21 入試対策本部
宮川由三 本部長

 

きちんと説明できることが重要

 ―2024年度(令和6年度)公立高校入試が先月行われたばかりですが、傾向はいかがでしたか。

 宮川 出題傾向は例年通りでしたが、理科の大問2の問4で「満月が最も大きく見えるときの明るさは、最も小さく見えるときの明るさの何倍ですか。少数第2位を四捨五入して少数第1位まで求めなさい」という問いがありました。これは相似比と面積比を使う完全に数学の問題でした。

 

 同じく理科の大問3の問4は会話文の中に空欄があって、その空欄に「生物のからだのつくりがどのように進化したのかを書きなさい」と。問題文にヒントとなるようなことはなく、自分の言葉で表現することを求められていて、国語の記述問題のようでした。日本語として正しく書けるかどうかでも力の差が出ると思いました。
 また、数学(学力検査)の大問3の問2「下線部の理由を、点Qと点Rのy座標にふれながら説明しなさい」という関数の問題があったのですが、ただ解くだけではなく、なぜこうなるのかという原理原則が問われました。今まで「〜にふれながら説明しなさい」という問題形式は社会でよく出題されましたが、同じようなことが数学で出題されたわけです。単純に数学的に解くだけではなく、「その理由を誰かに説明できますか」という問いかけになっているようです。

 ―以前から思考力、判断力、表現力と言われてきましたが、表現力の部分がより一層求められていると。

 宮川 今までは例えば数学での表現力といえば証明や作図が中心でしたが、日本語の表現力にまで踏み込んでいます。数学としての学力が高くても、正しく説明する表現力が不足していると不利になってしまうでしょう。きちんと説明するためには本質が分かっていないといけないということです。また、社会では昨年5月に広島で行われたG7サミットに関する問題が出題されました。問われている内容はオーソドックスですが、年度内の世の中の出来事が出題されるのはまれです。新聞やテレビで日々のニュースもしっかり見なさいという何かのサインかもしれません。

 

正確に捉える力が問われる
 ―これらの傾向を踏まえて、本番までに身につけておかなければいけない力とは。

 宮川 学校の授業でも塾の授業でも、何かを習ったときに「何でそうなるのか」という本質をきちんと理解するというところが大事だと思います。背景まで探る姿勢があるのとないのとでは、身につくものの深さが変わってきます。受験勉強で知識を習得するだけで対応できる問題が減ってきているようです。物事の本質や裏側を理解する姿勢を本番までに身につけていく必要があります。
 また、問題文を最後まで丁寧に読まないといけない問題は今年も多く、何を問われているのか正確に捉える力が問われています。問題文を読むのが速くても、最後までしっかりと題意を理解せず、読み間違いや勘違いするようなことがないよう注意力を高めることも必要でしょう。あと、極めて基礎的なことではありますが、きちんとした字を書くことも大切です。数字であれば1と7の区別がつかなかったり、字がつぶれていたり、汚かったり、薄かったり、極端に小さかったりしてもいけません。これらは採点の際、かなり不利です。文字を書くことは一番基礎的な表現ですから、しっかりと伝わる文字を書いてほしいです。

 

この時期に2年生までの振り返りを
 ―新年度の4月を迎えるまで1カ月ありますが、春休みも含めて、この期間とるべき行動については。

 宮川 各自の学習環境によって取るべき行動は異なります。例えば塾に通っている場合、多くの学習塾は3月から中学3年生の内容に先取りで入っていくので、油断していると2年生までに習った内容の振り返りがおろそかになりがちです。2学期の期末テストの内容などを振り返ってみることは、とても有効な学習になります。
 塾に通っていない場合。これはよく保護者会でも話すのですが、中学2年生の学年末テストが2月中旬ごろに終わって、その次の定期テストは中学3年生の1学期中間テストで、これが5月下旬。したがって3カ月以上空いてしまいます。定期テストの間が空く期間が年間を通して最も長くなります。この期間で怠けると大変なことになります。しかも、1学期の中間テストは、その学年のはじめから出題されるのではなく、前の学年から出題されることもあります。特に理科や社会は、単元同士のつながりがない部分も少なくないので、2年生の最後に習った単元を忘れてしまいがちです。毎年、5月の連休明けにスイッチが入ってがむしゃらに勉強を始める生徒もいますが、その頃は修学旅行や体育祭と密度の詰まった学校生活を送っている時期です。その頃に2年生の振り返りを一からやっている生徒と、定期的に振り返りを行ってきた生徒では大きな差がついていることは明らかです。
 以上のことを踏まえると、この1カ月間何をすれば良いのか分かると思います。一つは中学2年の2学期に習った単元を中心にしっかり復習する。学校のワークの解き直しでも良いですし、教科書の巻末問題でも、自分で購入した問題集でも良いでしょう。
 もう一つは、中学3年の4月の内容の予習をしてみるということです。多くの中学生は、「習っていないことはわからない」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。高校の学習は予習中心ですから、今から少しずつ練習すると良いでしょう。つまり、自分の力で一からやってみるという経験を、この3月のうちにしてみるのです。そもそも、学校でも塾でも、入試に必要な要素すべてを習うことはなく、途中から自分で切り開いていく部分も大きいものです。自分でやるという経験を早い時期からできている生徒は、その後の成長度合いとか最後の踏ん張りも大きく変化し、強い受験生になると思います。

 

=埼玉新聞2024年3月8日付け「新中学3年生向け 入試対策特集」内2面=

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