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高校軟式野球 連合校(慶応志木・浦和ルーテル・大宮ろう) 関東へ気合

ハンディ越え勝利に貪欲

 部員数が9人に満たない3校による「連合チーム」が、高校軟式野球の春季県大会で頂点に立った。連合チームが優勝するのは、春・夏・秋を通じて高校軟式野球県大会の歴史上、初の快挙。結成から約1カ月半、聴覚に障害のある選手も出場したが、ハンディを感じさせなかった。チームは26日から始まる関東大会(神奈川)の出場に向け、気合が入っている。 

初優勝した3校連合(大宮ろう、浦和ルーテル、慶応志木)の選手たち(県高野連軟式部提供)

 

3度の逆転劇
 連合チームは慶応志木6人、大宮ろう7人、浦和ルーテル3人の3校で結成。選手たちは「勝ちたい気持ちが、みんな同じだった」と強調し、勝利に貪欲だった。
 県大会全4試合中、準々決勝以降の3試合で逆転勝ち。前回王者・浦和実との準決勝では、1点を追う九回裏に1死満塁の好機を築き、敵失から逆転サヨナラ勝ち。花咲徳栄との決勝では、六回に打者一巡の猛攻で5点を奪い、試合をひっくり返した。
 試合前には、松田恒尚監督(慶応志木)が「焦ってミスしても自分に失望するな。粘って良い野球をしよう」と送り出した。全試合で先発を務めた小林雄一郎投手(浦和ルーテル)は「誰一人負けると思っていなかった」と、前向きな声がけと意思疎通が絶えなかった試合を振り返り、「みんなで勝ち取った優勝」と誇らしげだ。
 選手らが初めて顔を合わせたのは3月末。3校合同での練習は、他校との練習試合を含めても、わずか6回だった。結成から約1カ月半のチームの快進撃に指揮官は「選手には驚かされてばかり」と声を弾ませた。

独自の意思疎通
 大宮ろうの選手は、単独チームでの活動時、主に手話で連係を図る。一方で、3校連合の半数以上の選手は普段手話を使わない。選手たちは練習中から聴覚に障害のあるチームメートに対して口を大きく開け、ジェスチャーを組み合わせてコミュニケーションを取る。各自がどうしたら伝わるかを一生懸命に考えた結果、独自の身ぶり手ぶりがグラウンド上で交わされるようになった。
 飛球への対処では手を上げて回し、合図する。浦和ルーテルと慶応志木の内野陣がまず声で指示を出し、それを大宮ろうの近くで守る選手が手話やジェスチャーで誰が取
るか伝える。巧みな連係プレーも勝因の一つだ。3校連合の武内優也主将(大宮ろう)は「僕たちはコミュニケーションの方法が違う。でもうれしいときは同じ気持ち」と話す。
 自身も大宮ろうの卒業生で同校監督の石川剛己教諭は、大会を通じて打ち解けた選手らに対し、「この世界にはいろいろな人がいることを学んで、これからの自信にしてほしい」と経験を糧にした成長を願う。

練習中に手話でやりとりをする主将の武内優也選手(右)と野球部顧問の石川剛己教諭=19日、大宮ろう学園グラウンド

連係深め関東へ
 各校は、部員不足により試合や練習が思うようにできずにいた。チームを組んだことで、仲間とともにライバルも増え、切磋琢磨(せっさたくま)できた。
 初の連合チームを経験した中島銀志捕手(慶応志木)は、「耳が聞こえない選手がいても関係ない。勝ちたい気持ちが一緒」と、今では冗談を言い合う仲になったという。互いへの尊敬がやまないという他校のチームメートに対し「同じチームになれたのは大きな経験」と語った。
 武内主将は連係プレーの強化を課題に挙げ、「チームの力を100%出し切りたい。雰囲気をよくするため、声を出し続ける」と関東大会へ意気込んだ。

 

=埼玉新聞2022年5月22日付け1面掲載=

 

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