2020年11月16日配信
去る10月29日、第1回進路希望状況調査(令和2年10月1日現在)の結果が県教育局から発表されました。
進路希望状況調査は、来年3月までに県内国公私立中学卒業予定者を対象に2回行われます。今回が第1回で、第2回は12月に行われ、その結果は来年1月上旬に発表されます。
志望校を一人一校書く形式で学校ごとの倍率も出ますから、受験生にとって大変気になる調査結果です。
個々の学校の倍率に触れる前に、全体傾向を簡単に見ておきましょう。
来年3月中学校等卒業予定者数は6万1740人です。前年同期より1353人少なくなっています。
高等学校等進学希望者の割合は96.9%で前年同期と同じです。
また、具体的な希望校未定者を合わせた高等学校等進学希望者総数の割合は99.1%で、過去最高だった前年同期より0.1ポイント低下しました。
具体的な希望校未定者は1358人で前年同期より60人減っています。コロナの影響で説明会等が少なく、未定者の増加が心配されましたが、その割合は前年同期と変わりませんでした。
全日制希望者の割合は91.1%で、前年同期より0.7ポイント低下しました。
一方、通信制高校希望者の割合は2.6%で、前年同期より0.5ポイント上昇しました。定時制希望者の割合は前年同期と同率でした。
僅かではありますが通信制希望者が増えている点が注目されます。
全日制希望者のうち県内高校への進学希望者の割合は93.3%で、前年同期より0.2ポイント低下しました。一方、県外高校への希望者の割合は6.7%で、前年同期より0.2ポイント上昇しました。
県外希望者の増加は、大学入試改革の影響で都内の大学附属校人気が高まっているのも一因とみられます。
全日制希望者のうち県内公立への進学希望者の割合は76.4%で、前年同期より1.2ポイント低下しました。一方、県内私立への進学希望者は16.7%で、前年同期より1.2ポイント上昇しました。
国の支援金や県の補助金などにより、私立学校に通う場合の学費負担が軽減されたことも私立希望者増加の原因とみられています。
以上が全体の傾向です。
次に各校の倍率を見てみます。
普通科の全県倍率は1.29倍で、前年同期(1.31)より0.02ポイント低くなっています。
市立川越 4.34倍(3.30)
川口市立 3.06倍(2.58)※募集人員40人減
市立浦和 2.73倍(2.56)
川越南 2.45倍(2.34)
浦和西 2.34倍(2.41)
上尾 2.26倍(2.35)
越ヶ谷 2.23倍(1.97)
大宮 2.19倍(1.92)
越谷南 2.04倍(1.86)
南稜 1.97倍(1.59)
大宮北 1.97倍(1.90)
熊谷西 1.96倍(1.77)※募集人員40人減
蕨 1.94倍(1.99)
所沢北 1.84倍(1.73)
鳩ヶ谷 1.73倍(2.06)
越谷北 1.63倍(1.38)
和光国際 1.58倍(1.73)
入間向陽 1.56倍(1.41)
所沢西 1.55倍(1.50)
浦和南 1.54倍(1.90)
所沢 1.50倍(1.74)
以上が1.5倍以上の学校で21校あります。
第1回調査における倍率上位校は、毎年ほぼ同じ顔ぶれです。
地域のトップ校よりも、2番手、3番手と目される学校が上位に来る傾向がみられます。
12月に行われる第2回調査では、実際の出願倍率に近い数字が出ますが、この段階ではかなり高めに出るのが普通です。
今回調査で2倍を超えている学校が9校ありますが、第2回調査または実際の出願では、2倍以内に収まるでしょう。ここに挙げた21校は、本番に向けて倍率が下がることはあっても、これ以上に上がることはないとみていいでしょう。
春日部 0.96倍(1.11)
不動岡 1.38倍(1.50)
川越 1.38倍(1.54)
川越女子 1.39倍(1.44)
浦和 1.28倍(1.62)
浦和第一女子 1.30倍(1.30)
川口北 1.02倍(1.41)
熊谷 0.87倍(1.13)
熊谷女子 1.05倍(1.14)
各地域のトップと目される学校の倍率が低いのが今回調査の特徴です。
特に浦和の1.28倍は異例の低倍率です。浦和第一女子、不動岡はほぼ例年に近い数字ですが、例年1.5倍前後である川越、川越女子は1.3倍台で、この時期の倍率としては例年になく低い数字となっています。
春日部のこの時期の倍率は例年それほど高くありませんが、1倍を切るというのは予想外でした。熊谷、熊谷女子もここ数年低倍率が続いていますが、熊谷の0.87倍も予想以上の低倍率です。
川口北の低倍率は、人気急上昇中の川口市立の影響がありそうです。
地域トップ校が軒並み低倍率というところをみると、今のところ、今年の受験生は安全志向が強いのかもしれません。第2回の結果が注目されます。
専門学科の全県倍率は0.88倍で、前年同期(0.93)より0.05ポイント低くなっています。
職業系と言われる専門学科の倍率は次のとおりです。
農業 0.86倍(0.96)
工業 0.87倍(0.96)
商業 0.70倍(0.74)
家庭 1.16倍(1.13)
家庭を除き、いずれも前年同期より低くなっています。
杉戸農業・生物生産技術の1.80倍、川越工業・建築の1.93倍、久喜工業・情報技術の2.53倍、越谷総合技術・情報技術の1.93倍、同・食物調理の2.20倍など個々にみれば高倍率学科もありますが、1倍を割っている学科が多いのが現状です。体験入学などの機会が少なかったことが影響している可能性があります。
それ以外の専門学科では、理数科が1.66倍で前年同期の1.43倍よりも高くなっていますが、外国語科は1.07倍で前年同期の1.13倍よりも低くなっています。
理数科では大宮・理数科が2.55倍、大宮北・理数科が2.10倍、川口市立・理数科が1.98倍と高倍率になっています。
芸術系では美術科が1.66倍で前年同期の1.57倍よりも高いのに対し、音楽科は0.61倍で前年同期の0.69倍からさらに低くなっています。美術科では大宮光陵・美術科が2.50倍の高倍率となっています。
総合学科は川越総合の2.10倍を除けばいずれも低倍率ですが、全体では1.04倍で前年同期の1.00倍よりはやや高くなっています。
過去の例を見ても、今回調査のままの高倍率、あるいは低倍率で本番を迎えることはありません。倍率は志望校を決める際の有力な資料となりますが、第1回の結果だけを見て志望校を変更するのは少し早すぎると言えるでしょう。
模試や学校の成績の変化、説明会などでの印象や相談結果などを踏まえた慎重な判断が求められます。
※ 第1回進路希望調査の詳細は県教育委員会のホームページへ
「令和3年3月中学校等卒業予定者の進路希望状況調査(令和2年10月1日現在)」
(教育ジャーナリスト・梅野弘之)
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