1975年の創部から半世紀の時を超え、悲願の甲子園初出場を決めた浦和実。小野蓮主将は、学校で使わなくなった人工芝を継ぎはぎした練習場を見つめながら「関東ベスト4とは思えない環境。その中で、限られた中でやらなきゃいけない」。決して恵まれた練習環境ではない中で変化を惜しまず突き進み、新しい歴史を切り開いた浦和実硬式野球部に迫る。
限られた環境利点に
継ぎはぎされた人工芝の練習場でストレッチする浦和実の選手たち=1月13日、さいたま市緑区の九里学園大崎総合運動場
同部が専用グラウンドにするのは、学校から約10㌔離れた九里学園大崎総合運動場。JR南浦和駅が最寄の校舎から自転車で約40分。新2年マネジャーの伊藤理央さんは「チャイムと同時によーいドン!って感じです」と苦笑い。終礼後、足早に移動を開始するが練習開始は午後4時半だ。
グラウンドの広さも十分ではない。隣接住宅に打球が飛ぶ恐れがありフリー打撃が行えず、実戦的なバッティング感覚がつかめない。代わりに専用ケージ内でのマシン打撃や連続打撃に励んでいる。
一方、筋力トレーニングを含め3~5班に分け練習を回すと一気に15人ほどが打撃練習をこなせる。5番を打つ捕手・野本大智は「設備は良くないけれど、たくさん打ってたくさん投げられる」と利点を挙げた。
自校では試合が行えないため、毎週末は県外へ遠征。「工夫をしても練習はたかが知れている。守備も本番の打球でうまくなっていく。試合で補うしかない」と辻川正彦監督。球場を持つ強豪校を相手に選び、実戦経験を積む。
寮のない学校が埼玉から甲子園に出場するのも珍しい。大会統一アンケートによると、第97回選抜大会に出場する32校の中で、他部活との共用も含め寮・合宿所がないと回答したのは、わずか7校(うち公立3校)。室内練習場を持たないのは9校だった。
部員には東京や千葉出身者も数人いるが、ほとんどが電車で1時間ほどで通える範囲から集まる地元中心のメンバーだ。この環境をあえて選んだ中堅手・斎藤颯樹は「家でリラックスする時間も取れるし、自分たちで考えてできる。最初はネックに感じたがそれで実績も出た」。
選手たちとOBは口々に言う。「野球ができないわけじゃない。自分たちにはこれが当たり前」。辻川監督が就任した37年前、指扇の何もない河川敷で汗を流していた野球部がついに高校野球の聖地の土を踏む。
=埼玉新聞2025年3月11日付け11面掲載=
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