第108回全国高校野球選手権埼玉大会は26日、県営大宮球場で決勝を行い、Aシード花咲徳栄が春王者の浦和学院を7-3で下し、2年ぶり9度目の優勝を飾った。春夏連続での甲子園出場は2016年以来2度目となる。
花咲徳栄は1点を追う六回、1死三塁から佐伯の中前打で同点。1-1で迎えた八回に奥野の中越え2点二塁打と本田の中前適時打で3点を勝ち越した。投げては先発黒川が3失点で完投。9安打を許しながらも要所を締めた。
優勝した花咲徳栄は全国高校野球選手権(8月5~22日・甲子園)に出場する。
「夏に勝つチームが一番」
強さ証明 視線は先へ

2年ぶり9度目の優勝を決め、マウンド上で喜び合う黒川(左から2人目)ら花咲徳栄の選手たち=26日、県営大宮
スタンドを埋め尽くす大観衆の前で校歌を斉唱した選手たちの顔は、笑顔、笑顔、笑顔…。春は県大会決勝で敗れ再起をかけて臨んだ今大会。主将の本田は「夏に勝つチームが一番強い。岩井監督からそう言い聞かされてきた」。2年ぶりに夏の王座に返り咲き、強さを証明した。
今春のセンバツでは初出場した2003年以来23年ぶりに8強に進出。過去最高戦績に並ぶ結果を残した一方、逃れられない現実が露呈した。準々決勝の智弁学園戦では8―12で逆転負け。「最大8点差をひっくり返された。屈辱的だった」と岩井監督。投手力の整備が急務となった。
そして臨んだ春の県大会。大黒柱のエース黒川頼りを脱却するため、次世代のエース候補の古賀、石田ら2年生投手が中心に登板し、経験を積んだ。若い投手陣が順調に安定感を身に付けつつ、チームは準優勝。チームが軌道に乗ったかと思われたが、春の関東大会で初戦敗退。またも壁が立ちふさがった。
「このままでは夏に勝てない」。選手たちの中に焦りが生まれた。一日でも無駄にしないよう、これまで以上に必死に練習に取り組むようになった。それは夏の大会直前にまで及び、ぎりぎりまで追い込みをかけた。
並々ならぬ気合と準備を持って臨んだ今大会。黒川という最大の武器を残しつつ、チームとしての戦い方が光った。準々決勝までは黒川を1登板に控え、それ以外の試合は他の投手陣がきっちりと抑えた。追い込みの疲れが残り打率が上がらない中で、攻撃陣もしぶとい攻撃で援護した。そして準決勝、決勝と黒川が2完投で勝利を挙げた。
2016年以来、2度目の春夏連続の甲子園出場を果たしたが、選手たちの視線はすでに次の戦いに向けられている。本田は「センバツ出場はいい経験だったが、チームの目標は日本一。夏で借りを返す」と拳を握った。
徳栄 春の雪辱 力強く復権
雨空に快音 成果存分
8回に2点二塁打 奥野
終盤まで1点を争う緊迫した展開。花咲徳栄の5番奥野の雨を切り裂く一打が聖地への切符を大きく手繰り寄せた。1―1の八回1死一、三塁、「あの真っすぐを打ち返せる自信があった」。4球目、狙い通りの直球を捉えた打球が右中間を深々と破り、走者2人を生還させた。
今春の悔しさを力に、勝負強さを培ってきた。3月のセンバツ準々決勝の智弁学園。相手エースが登板した三回以降に打線が沈黙した。序盤の8点差をひっくり返され、逆転負けを喫した。「ものすごい球で、ああいう投手を打てないと全国で勝てないと実感した。ここから意識が変わった」と、磨いてきた低く強い打球が大一番で生きた。
1年生の時に習得したバスター気味に構えるフォームを貫く。スイングがコンパクトになることで、広角に強い打球を打ち分けられる打者に成長。「4番が打てなかったら僕がカバーできる。チャンスに強くなった」と自負する背番号4。勝ち越しの一打に「この夏一番の当たりだった」と2年半の成果を強調した。
小学3年生の時に同校が日本一になった試合を見て、甲子園に憧れを持ったという。3季連続で続いた浦和学院との決勝を制し、「今までの先輩たちも乗り越えた壁を、自分たちの代でも越えられてうれしい。またここから、やるべきことに集中したい」。再び踏み締める聖地で、春から成長した姿を自らのバットで示してみせる。
終盤勝負 確信の勝利

浦和学院―花咲徳栄 8回表花咲徳栄1死一、三塁、奥野が中越えの2点二塁打を放ち、勝ち越す。捕手内藤=県営大宮
花咲徳栄が浦和学院との激闘を制し、2016年以来、2度目となる春夏連続の甲子園出場をつかんだ。Aシード校同士の戦いに「終盤勝負になると思っていた」と岩井監督。狙い通り七回まで接戦に持ち込み、最後の2イニングで一気に攻勢に出た。「もう全て出し尽くして何も残っていない」。指揮官の顔には、喜びと疲れの表情が同居していた。
八回と九回の攻撃は圧巻。〝徳栄らしい〟のひと言だ。「まだ出し切ってない。全て出し切れ」。1―1の同点で迎えた八回表の攻撃前、指揮官のげきにナインが応える。
八回、1死から一、三塁を築くと、奥野の二塁打で2点を勝ち越し、さらに2死三塁として、本田の中前打で追加点。1点差に迫られた九回にも2本の適時打でリードを広げた。それまでの苦戦ムードから一転し、迫力のある攻撃を仕掛けた。本田は「打った球種も打球もよく覚えていない。気持ちだけだった」と、強い心で勝利をもぎ取った。
浦和学院は春季県大会の決勝で敗れた「宿敵」だ。主将の本田は「決勝で浦学を倒さないといけなかった」と雪辱戦に燃えていた。最速145㌔超えが3人控える相手の投手陣は強力だが「センバツで対戦した(智弁学園の)杉本投手も速かった。対策はしてきた」とナインは自信を持って試合に臨んだ。だからこそ中盤まで耐えて、終盤勝負に持ち込めば、勝てると指揮官もナインも踏んでいた。
打線が相手投手をつかまえるまで守備での粘りもまた徳栄らしかった。143球を投じた準決勝から中1日での先発マウンドとなったエース黒川は9安打を許しながら3失点。ここぞの場面での好守も光り、捕手佐伯は2度盗塁を阻止。八回に1点差とされ、なお2死二塁のピンチでは、中堅方向の低いライナーを遊撃手岩井が横っ跳びで捕球し、窮地を脱した。
4回戦まではコールドで勝ち。だが、その後の準決勝までの3試合は九回までもつれる試合を戦ってきた。「つらかった。春は負けていたので、プライドを捨てて一戦一戦やるしかなかった」と本田はこぼす。我慢の末に頂点を勝ち取り「今までやってきたことが全て出せて、自然と涙が出てきた」と思いがあふれた。
123球に雄たけびと涙
完投の黒川

9回を3失点で完投した花咲徳栄のエース黒川
九回2死二、三塁、1ボール2ストライク。エース黒川は4球目に渾身(こんしん)のフォークを投げ込んだ。バットが空を切り、最後の打者を空振り三振に仕留めると、拳を強く握り雄たけびを上げた。
準決勝の143球に続き、123球完投の力投。「誰にも(マウンドを)譲れないという気持ちと、このチームで甲子園に行くという思いで投げ続けた」。力の限り振り続けた腕でつかんだ優勝にうれし涙がこみ上げた。
春季県大会決勝の浦和学院戦では登板しなかった。大会終了後に岩井監督から「浦和学院戦はおまえで行く」と言われ、イメージをしてきた。打たせて取る投球で六回まで被安打3。疲れが見え始めた七回の給水タイム後には、「最後まで代えない」という指揮官のひと言でギアが上がり、「直球がさえ、変化球でカウントも取れた。抑えてやろうという気持ちが前面に出た」
春の選抜大会で敗退後、夏に照準を合わせてきた。バランスの取れた食事や走り込み、下半身のトレーニングでスタミナをつけ、夏の大会前は納得いくまで投球練習を繰り返し、毎日100球近くに及んだ。努力に裏打ちされた自信がエースを一回り大きくさせた。目指すは優勝。春の雪辱を果たすべく、甲子園の舞台に再び戻る。
さすがの修正力 ヤマ場に2長打
笹崎
○花咲徳栄 3番笹崎が終盤の長打2本で勝利をぐっと呼び込んだ。1―1の八回1死から左翼線へ二塁打を放ち、奥野の二塁打で勝ち越しのホームを踏んだ。九回1死一、二塁では、2点三塁打で点差を広げた。「前半は駄目だったが、後半は修正して、狙った球に合わせられた」と満足げな表情を見せた。
「相手投手にみんなで対応し、勝ち切れた」と強力な浦和学院の投手陣を攻略した試合に胸を張る。大会を通じて7割近い打率を記録した3番打者は「打率を残すことが役目。とにかく塁に出て、チャンスをつくる」と甲子園でも活躍を誓った。
大一番 復調の2打点
佐伯

6回表花咲徳栄1死三塁、佐伯が中前打を放ち同点に追い付く
○花咲徳栄 準決勝までの打率が2割5分と苦しんでいた佐伯が、3安打2打点の活躍で4番の意地を見せた。
1点を追う六回1死三塁で打席に立った。「チャンスで回してくれた。自分が打って、絶対に点を取ってやる」と変化球をコンパクトなスイングで打ち返し、同点打を放った。九回には左前適時打で点差を広げた背番号2。「頑張っている黒川を援護できて良かった」と笑みがこぼれた。
8点差を覆され、準々決勝で敗れた春の選抜大会。その悔しさを胸に「(日本一という)忘れ物をした。それを取りに行けるように頑張りたい」と前を見据えた。
父と最後の挑戦 難局で役割全う
岩井
○花咲徳栄 1番岩井が攻守の大事な局面で役目を果たした。4―1の八回、2点を追い上げられ、なお2死二塁で抜ければ同点というライナー性の打球を好捕。「黒川が良いピッチングをしているので、どんな形でも守ろうと思った」とエースをもり立てた。
直後の九回には「ここで三者凡退だと流れが変わる」と安打を放ち、3得点のきっかけをつくった。
父である岩井監督と挑む最後の夏。「兄も夏の甲子園に出たが、三塁コーチャーでグラウンドではプレーできなかった。思い切って頑張りたい。目指すは日本一」と気持ちを新たにした。
ナインひと言
①黒川凌大投手 後半勝負で野手が点を取ってくれた。絶対に自分で抑えてやるという気持ちで投げた。
②佐伯真聡捕手 目標にしていた甲子園に出場できることがうれしい。日本一を取って埼玉に戻りたい。
③本田新志一塁手 よく耐えよく勝った。甲子園で勝つために今まで以上の努力が必要。春の借りを返す。
④奥野敬太二塁手 5番打者としての役割ができた。甲子園でも2年半やってきたことを全部出し切る。
⑤谷口ジョージ三塁手 一つ一つ丁寧なプレーが甲子園につながった。一戦必勝で戦い優勝を目指す。
⑥岩井虹太郎遊撃手 大事な場面で練習の成果を出せた。またここからがスタート。チーム全体で勝ちたい。
⑦市村心左翼手 苦難を乗り越えての優勝。もう一度甲子園に立てるので、次は岩井監督を日本一にする。
⑧鈴木琢磨中堅手 秋春と苦戦した相手に一丸となって勝てた。目標は日本一。打撃でチームを引っ張る。
⑨笹崎昌久中堅手 優勝できて、甲子園に行ける。素直にうれしい。チームに貢献できる打撃をしたい。
⑩古賀夏音樹投手 チーム全員でつかんだ優勝。とにかく勝って、先輩たちの夏を日本で一番長い夏にする。
⑪石田凜作投手 優勝できてうれしい。2年生で甲子園に行けるので、多くのことを吸収する夏にしたい。
⑫高原一樹捕手 率直にうれしい。先輩たちと野球できるのもあと少し。自分らしくチームに貢献したい。
⑬中森来翔一塁手 三塁コーチャーとしてチームの勝利に貢献できた。甲子園でも自分の役割を全うする。
⑭上山竣也内野手 花咲徳栄の野球ができた大会だった。春の悔しさをすべてぶつけてリベンジを果たす。
⑮上原雅也三塁手 我慢強さが勝利につながった。浦和学院の選手の思いも背負って絶対に甲子園で勝つ。
⑯佐藤新志内野手 ベンチからの声が得点につながった。甲子園も全員野球で優勝できるように準備する。
⑰更科遥陽外野手 1球にかける思いで相手に勝った。甲子園でも自慢の走力でチームの勝利に貢献する。
⑱東村寛太右翼手 プレッシャーもあるが頼れる先輩たちがいる。自分の打撃を披露して全力でやり切る。
⑲川田侑和投手 このメンバーで甲子園に行けて一番の財産になった。埼玉の代表として胸を張って戦う。
⑳長谷川陽汰投手 接戦でしっかり勝ち切れた。エース黒川さんを中心とした投手陣で甲子園優勝したい。
浦学 胸張る熱戦 刻む勇姿
攻守で魅了 誓う成長
先発・右腕 西村
浦和学院の先発・右腕西村が攻守で観衆を魅了した。
投げては外角中心のツーシームと直球を効果的に使い、相手打線を五回まで2安打、無失点と寄せ付けなかった。六回、先頭に甘く抜けた球を拾われ三塁打とされ、1死三塁から適時打で1点を返され降板。「行けるところまで行くつもりでマウンドに立って、やることはやった。悔いはない」と胸を張った。
右翼の守備に回り、七回には1死一、二塁のピンチで読みがさえた。「相手の1番打者は逆方向に強い打球が来ると予測していた。1歩目も出て絶対に捕れると思った」。右翼線に鋭く飛んだ打球をダイビングキャッチ。素早く遊撃手に送球し、飛び出した二塁走者までアウトに。ベンチのムードは最高潮に達した。
七、九回には2打席連続で中前安打を放ち、〝打〟でも魅せた。それでも、チームは好機に一本が出ず甲子園には届かなかった。「接戦での強さ、粘りが相手の方が上手だった。悔しいけれど3年間の頑張りには胸を張って、大学でもこの経験を生かしたい」。敗戦を糧に、次のステージでさらなる飛躍を誓った。
磨いた武器 封じられ

浦和学院―花咲徳栄 7回裏浦和学院2死一塁、一塁走者西村が二盗を試みるがタッチアウト。ベースカバーは遊撃手岩井=県営大宮
準決勝まで全6試合コールド勝ちと盤石の強さを誇っていた浦和学院は、投打にどこかちぐはぐで3年ぶりの聖地には届かなかった。積年のライバルの花咲徳栄に終盤競り負け、森監督は「中盤で追加点を取れなかったこと、終盤に投手陣が粘り切れなかったことがポイントだった」と敗因を探った。
1―1の八回にスコアは激しく動いたが、その前の七回が一つの鍵となった。
表の守り。1死一、二塁で2番手佐々木からエースナンバーを背負う日高にスイッチした。1点も与えたくない場面。花咲徳栄の1番岩井の快音を残した当たりはライナーで右翼線を襲う。右翼手西村が猛然と突っ込み、ダイビングキャッチ。二塁へ送球し、併殺を完成させた。
ベンチ、スタンドの盛り上がりは最高潮に達した、その裏。先頭の伊藤が中前打で出塁すると果敢に仕掛ける。続く法量の打席で二盗を試みたが失敗。2死後、中前打で出塁した西村が再び二盗を狙ったが、またしてもアウトになった。準決勝まで記録した盗塁は27。夏を勝ち抜くために磨いてきた「打てない時の攻撃」(主将の蜂巣)が機能せず、蜂巣は「隙を狙う走塁が防がれた」と肩を落とした。
続く八回、勢いに乗った花咲徳栄打線に日高がつかまり2点を失い、救援した伊藤も1点を失った。1点差とした九回にもナインからの信頼が厚い伊藤が3点を献上した。伊藤は「後悔のないボールを選択したが相手の集中力がすごかった」と涙をこらえた。
圧倒的な投手力と攻撃力で大会を席巻したが、最後に待っていたセンバツ8強の好敵手の壁は厚かった。八回の先頭で三塁打を放った2年生大宮は「泥くささ、一生懸命さを学んだ。これを生かし、甲子園に行く姿を見せたい」。先輩たちと共に味わった悔しさを胸に秘め、新たな挑戦が始まる。
仕事果たし先制 仲間思い寂しさ
玉栄
●浦和学院 今大会1番打者でチームをけん引してきた玉栄が先制点を導いた。三回1死三塁で、後ろを守っていた遊撃手のところにきっちりゴロを打ち、三塁走者城間が生還。「自分のやるべきことをしっかりできた」と役目を果たし、納得の表情だった。
今夏、持ち味の積極性を打撃に生かした背番号5は「最高の仲間で浦和学院に来て良かった。もうこの仲間と野球ができないことが本当に悔しい」と思いをはせた。
1球の失投痛感 バトンは後輩へ
日高

8回表花咲徳栄1死三塁、マウンドに集まる浦和学院の日高(右から4番目)ら
●浦和学院 一つ後輩の佐々木からバトンを受けたエース日高。「自分が失点を抑え、試合の流れをつくる」と七回は無失点に抑えた。だが八回1死一、三塁では中越え2点二塁打を浴びて降板。「ストレートが真ん中に入ってしまった。1球の失投が命取りになることを実感した」と、失投に悔しさをにじませた。
エースナンバーを背負い、チームをけん引してきた右腕は「やっとここまで来たのに打たれてしまい、みんなに申し訳ない」と涙をこらえた。「(投手)佐々木を筆頭に、悔しさをバネにして甲子園に行ってほしい」とエールを送った。
夢破れるも充実感
鈴木

8回裏浦和学院2死二塁、鈴木が左越えの適時二塁打を放つ
●浦和学院 「3点差あっても勝てる。今まで終盤の粘りで勝ってきたから」。3番鈴木は、自らに言い聞かせて打席に入った。八回、仲間が1点を返し、2―4で回ってきた2死二塁の場面。狙っていた外角の直球を左越えに運び、一時1点差に詰め寄る適時二塁打を放った。
中学3年生の夏、浦和学院が甲子園に出場。入学後、1年秋からベンチ入りし、自分たちの代では経験できてい
ない全国大会を目指して埼
玉の決勝戦まで駆け上がった。目前で夢破れたが「ここまで練習でやれることはやってきた。負けてしまったけれど、最後までやり切った」。充実の表情で結果を受け止めた。
=埼玉新聞2026年7月27日付け掲載=
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