無垢な思い出を映画に
川越市出身のアニメーション作家・門脇康平さん(29)が企画、監督、脚本を手がけた長編アニメーション映画「我々は宇宙人」が25日に全国劇場公開される。初の映画作品ながら、フランス・カンヌ国際映画祭の「監督週間」で上映されるなど、若き才能として注目を集めている。作品や故郷・川越への思いを聞いた。

「川越以外にも浦和や所沢、秩父などいろいろな場所でロケハンを行った」と振り返る門脇康平監督
幼少期から絵を描くことが好きだったという門脇さん。小学生の頃から絵画教室に通い、城西川越中、城西大付属川越高では美術部に所属した。東京芸術大を卒業後、アニメ制作会社に就職し、独立してアニメーション作家として活動。人気音楽ユニット「YOASOBI」をはじめ、数々のアーティストのミュージックビデオなどを手がけてきた。
「映画を作りたい」という思いは高校時代から抱いていた。当時、昔見たアニメ「ドラえもん」の名作映画を改めて鑑賞し、「見たくても実際に見ることができない世界を、アニメならば見せることができる。なんて素晴らしい仕事なんだ」と感動を覚えた。
今作の原点には「小学生の頃の思い出を閉じ込めたような映画を作りたい」という思いがあった。門脇監督自身、小学生の頃に「壮大な初恋をした」経験があり、「あの頃のピュアな気持ちや見ていた景色を残さなければ、と切望するような思いがずっとあった」と語る。
作品の舞台は平成時代のとある田舎町。普通であることに悩む小学3年生の翼と、クラスの人気者・暁太郎の友情を描いた。2人は「親友」になるが、ある日を境に暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり「事件」が起こる―。
本編は全て手描きで制作され、子どもの動きのリアルさやノスタルジックな世界観が表現されている。ストーリー作りには特に時間をかけ、主人公2人の「大きな感情のうねり」を描いた。
「誰が見ても懐かしく感じ、感情移入できるように」と舞台を特定の街にせず、故郷の川越をはじめ県内や全国各地でロケハンを重ねた。門脇さんの母校である川越市立武蔵野小学校でもロケハンを行い、「映画の中では武蔵野小がほぼ再現されている」と明かす。
5月には、フランス・カンヌ国際映画祭で、数々の名監督や新たな才能を世に送り出してきた「監督週間」に出品された。主人公2人の声を演じた俳優の坂東龍汰さん、岡山天音さんと共に現地を訪れ、「目に涙を浮かべて拍手してくれたフランス人の方と目が合って、全世界に観客がいるんだという実感が持てた」と振り返る。
川越への思いを聞くと、「とても好きな場所。都会と田舎の折衷感が良い」と即答。「花や虫を見たり、土いじりや木登りをしたり。川越にいたからこそ経験できたことが作品にも生かされた。埼玉の皆さんにも懐かしく感じてもらえると思うので、多くの方に見てほしい」と笑顔を見せた。
=埼玉新聞2026年9月13日付け1面掲載=
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