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東京五輪(柔道)に挑む先輩へ後輩からエールー児玉高校

伝統ある児玉高校柔道部の集大成に 

 東京五輪柔道女子70㌔級に寄居町出身の新井千鶴選手(27)=三井住友海上=が28日、初の五輪に臨む。数々の困難を乗り越え、柔道人生の集大成に挑む日が来た。母校の県立児玉高校は今年が創立100周年。後輩の女子柔道部員は「運命を感じている」「花を添えてほしい」と応援している。

新井千鶴選手が稽古に明け暮れた道場からエールを送る後輩の女子柔道部員=本庄市の県立児玉高校(女子柔道部提供)

 新井選手が柔道を始めたのは小学生の頃。3歳違いの兄の影響で地元の男衾(おぶすま)柔道クラブに通い始めた。中学2年生の時から児玉高校で柔道の稽古に参加していたという。同校女子柔道部の柏又洋邦監督(54)は「線は細いがしっかりした柔道をしていた」と振り返る。
 何事も一生懸命、手を抜かない。頑張り過ぎる分、時にはリフレッシュも必要だったくらいの性格。高校2年の途中で、63㌔級より試合に多く出られる可能性が高く、減量もしないで体がつくれる70㌔級に変更した。体づくりのトレーニングとそれに見合う食事療法にも取り組んだ。
 ただ、思わぬ挫折もあった。高校2年生で初めての全国大会出場を決めたが、東日本大震災で中止に。その時は柔道着が着られなくなるほど気落ちしたという。
 それでも実力が開花し、3年生の全国高校総体で優勝し、世界を目指す道が開かれた。「当時は手探り。どう転ぶか分からなかった。強くなったのは本人の努力と家族のサポート」と柏又監督は五輪出場に目を細める。
 柏又監督には心に残っている出来事がある。新井選手が3年生の時、初めて関東大会で優勝した日は監督の誕生日だった。一本勝ちで戻ってきた時に突然、「誕生日おめでとうございます」と言われた。試合中にそんなことを言う選手ではなく、自身も忘れていたこともあり、「勝ったうれしさもあり、ほろっときた」という。
 新井選手は年数回、児玉高校で後輩たちの指導もしている。6月上旬にも訪れた。女子柔道部員は3年生3人、1、2年生が1人ずつの計5人。「テレビで見るよりかっこいい」「目標に向かって努力し続けてすごい」「自分の目標を達成している」と後輩たちは尊敬のまなざしを向ける。3年生の井田侑希部長は8月の全国高校総体に出場する。「先輩の金メダルに続き、インターハイで優勝できるように頑張りたい」と話す。
 児玉高校は2年後に児玉白楊高校と統合する。女子部員たちは「伝統ある児玉高校柔道部の集大成として金メダルを獲得し、有終の美を飾ってほしい」と新井選手が慣れ親しんだ高校の道場からエールを送る。
 今月17日に新井選手の稽古の様子を見てきた柏又監督。大舞台を前に調子も良さそうで表情も明るく、体も動いていた。後は当日のコンディションだけという。28日の予選は部員とテレビで観戦するつもりだ。「結果は後から付いて来る。出し切って納得のいく試合をしてほしい」

=埼玉新聞2021年7月28日付け15面掲載=

 

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