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【出題方針と解説】令和6年度埼玉県公立高校入試・入試問題

 

 2024年度の県公立高校入試が21日、全日制131校と定時制24校で行われ、計4万181人(前年度4万701人)が受験した。体調不良などにより同日10時45分現在で157人が欠席した。
 県教育局高校教育指導課によると、全日制は入学許可候補予定者3万5130人に対し、3万9011人が受験。欠席や受験取りやめで、志願者数確定時(16日)から403人減った。倍率は1・11倍となり、前年度から0・01ポイント増加した。
 全日制の学科別倍率は、普通科1・15倍(前年度同率)、専門学科1・01倍(同0・95倍)、総合学科1・00倍(同0・95倍)。普通科で最も倍率が高かったのは市立浦和の1・73倍で、川口市立スポーツ科学コース1・64倍、蕨1・49倍が続いた。専門学科では、大宮の理数科が2・13倍で最も高かった。
 倍率が1・00倍を下回り定員割れしたのは普通科25校(24普通科、2コース)、専門学科28校(38学科)、総合学科5校。
 定時制は1170人が受験し、倍率は0・57倍(前年度0・53倍)だった。
 22日に一部の学校で面接や実技試験を行う。合格者は3月1日午前9時ごろにウェブで、同10時に掲示で発表する。追試は同4日。定員割れの学校は同18日以降に欠員補充試験を行う。

 

教科ごとの県教育委員会発表と塾講師の解説

 

<県教育委員会の発表>

 2024年度県公立高校入試の出題方針は、①中学校での平素の学習を重んじ、中学校学習指導要領に基づく②基礎的な知識や技能をみる問題とともに、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力や判断力、表現力などをみる問題の出題に配慮③各教科の目標に照らし、受験生の学力を十分に把握できるよう出題内容や出題数、記述による解答を求めるように配慮する―としている。各教科100点。5教科の大問数は計25問(学校選択問題計25問)、小問数は計137問(同計134問)。各教科の難易度や平均点は前年度と同様。教科ごとの予想平均点は次の通り。国語60点(前年度60点)▽社会60点(同60点)▽数学60点(同60点)▽理科60点(同60点)▽英語60点(同60点)▽学校選択問題数学60点(同60点)▽学校選択問題英語60点(同60点)

 

【国語】

<出題方針>

 基礎的、基本的な内容について広範囲に出題し、正確に理解し適切に表現する力をみるよう努めた。文学的、説明的な文章の理解力、平易な古典を読む力や文章表現力、基礎的な言語能力を問うた。大問1では文学的な文章を理解する力、大問2では基礎的・基本的な言語能力、大問3では説明的な文章の理解力を確認。大問4では古典を理解する基本的な力をみるよう努め、大問5では資料から読み取れることを基に自分の考えをまとめ、目的や意図に応じて適切に文章を書く力を確かめた。

 

<塾講師解説>

問題の意図をつかむ

スクール21 薄田 桂一 氏

 大問1は小説の読解。構成は例年通り小問5問、うち記述が2問であった。選択問題は場面の展開や主人公の心情の変化を丁寧に追えていれば正解の根拠は見つけやすかった。問4の記述問題は、指定語句のひとつが傍線部から離れた文脈にあったため、解答の材料となる箇所が見つからず時間のかかってしまった受験生もいたことと思われる。
 大問2は漢字・語句・文法とスピーチ原稿に関する出題。比較的平易な問題が多かった。
 大問3の論説の読解は、贈り物には元の持ち主の人格が宿っており、受け手に働きかける、ということを論じたものであった。中学生にとっては馴染みのないテーマで、具体例を助けとしないと内容を正しく把握することは容易でなかった。小問構成は例年と同様、5問のうち2問が記述問題。選択問題3問は傍線部前後の文脈を捉えれば比較的取り組みやすかっただろう。しかし記述問題は「何を問われているか」が正確につかめないと満点解答を書くことは難しかったのではないか。なお、例年記述問題の配点は1問は6点、もう1問が7点だったが、今年度は2問とも7点となった。
 大問4は和歌を含む古文の読解。前書きをしっかりと読んでいれば、本文全体の内容を捉えることはそう難しくはなかった。小問は例年同様4問。問1は指示内容を記述させる問題だったが、問いから「何を書くべきか」を正確に読み取ることができたかが問われた。
 大問5は課題作文。SDGsに関する資料を読み取り、自分の考えを述べる、例年通りの出題形式だった。書くべきテーマを正しく捉えることが求められた。

 

【数学】

<出題方針>

 数学の基礎的な知識、技能をみる問題について、広範囲にわたり出題。数学で事象を論理的に考察する力、数量や図形などの性質を統合的・発展的に考察する力、事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力をみた。大問1は基礎的・基本的な知識および技能が身に付いているか、大問2は図形に関して数学的な知識および技能を活用できるかを問うた。大問3は関数のグラフや平面図形について、大問4は空間図形や平面図形について、それぞれ見通しをもって論理的に考察し表現することができるかをみた。

 

<塾講師解説>

難易度を選別する力

国大セミナー 北西 弘明 氏

 大問の構成は4題で、小問も23問と例年通りとなった。
 大問1は小問16問で配点65点とほぼ例年通り。また、計算問題8問は例年と傾向や難易度が変わらないため、確実に得点したい。残りの小問集合も円周角の定理、平行線と比、度数分布表、確率、回転体の体積といった幅広い単元からの出題となったが、難易度は決して高くなかった。また、問16の箱ひげ図の読み取りに関しては2年連続の出題となった。昨年に比べ、箱ひげ図の特徴も抑え
る必要があったため難化した。
 大問2は作図と三角形の合同証明。作図では垂直二等分線と垂線を利用した基本的な問題だった。また、証明に関してもこの単元では頻出の二つの正方形を利用した問題であり、いずれの問題も完答できた受験生も多かったのではないだろうか。
 大問3は関数からの出題で、x座標をtとおき、y座標や線分の長さをtで表し、方程式を立てるパターンの問題。(1)はy座標をtを使って表すのみだが、(2)(3)は場合分けして立式する必要があり難易度は高かった。
 大問4は水槽の水をこぼす問題。水槽を傾けた際の角度がポイントとなるパターンが多いが、今回は相似、三平方の定理を利用する問題であった。一つの図の中に複数の相似な三角形が重なり合い、対応する辺が分かりづらい時は、図形を書き抜いてしっかり確認することが大切である。
 総じて、問題ごとの難易度がはっきりしていたため、限られた時間内に、問題の難易度を選別する力を入試前の過去問演習などで身につけていれば、志望校に対して十分な得点ができたのではないだろうか。

 

【数学(学校選択)】

<出題方針>

 大問1は中学校数学科の各領域に関する問題。大問2では図形に関する問題で、数学的な知識および技能を活用することができるかをみた。大問3は関数のグラフや平面図形について、大問5は空間図形や平面図形について、観察や操作などの活動を通し、見通しをもって論理的に考察し、表現することができるかを問うた。大問4は知識・技能を活用して課題を解決する問題。観察や操作、実験などを通し、確率や場合の数について、落ちや重なりがないように数え上げ表現することができるかをみた。

 

<塾講師解説>

数学的思考力が重要

国大セミナー 里見 淳 氏

 

 大問数は5問、出題数は20問で昨年と同様。大問1の配点が1点高くなり、大問3、5で出題数の変更はあったが、それ以外は概ね同様の構成であった。
 大問1は計算問題含む小問集合で、出題範囲は幅広い。(4)では累積相対度数が初めて出題され、(10)で
は2年連続で箱ひげ図の読み取りが出題。これらのデータの活用は、今後も要注意である。
 大問2は作図と図形の証明が出題。作図は、垂線と垂直二等分線を利用して、どのような台形を描けばよいか想像できるかがポイント。図形の証明では、ある角が90になることを証明する、今までの傾向にはない証明だった。三角形の合同と相似をともに証明しなければならないため、うまく証明できなかった生徒もいたのではないか。
 大問3は会話文形式の出題で、2乗に比例する関数と1次関数のグラフに関する問題。求めたい点の座標を文字で表して、答えを導いていく、入試ではよく使う解き方であり、この大問はしっかりと解けてほしい。
 大問4は確率の問題。(2)の②「ちょうど2周したところで操作が終了」する場合の数は、(2)の①の場合の数を含めてしまわないよう、注意が必要であった。
 大問5は空間図形の問題。図1の見取り図と図2・図3の平面図形をうまく見比べながら解けるかがポイント。特に(2)の水の立体はイメージがしづらく、難易度が高い問題だった。
 総じて、数学的思考力が試される問題は多かったものの、昨年よりも解きやすい問題が多く、いかに計算ミスせずに正確に答えを導き出せるかが大きなポイントである。

 

 

【社会】

<出題方針>

 地理・歴史・公民の各分野相互の関連を図り、基礎的な知識と技能をみる問題とともに、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力などを問うた。大問1は世界の地域構成や特色、大問3は世界の歴史を背景とした近世までの日本の歴史、大問4は近現代の日本と世界の歴史について理解しているかをみた。大問5は日本の政治や経済、国際社会について理解しているか、大問6は職業とその内容をまとめる学習を想定し、各分野を総合的に理解しているかをみた。

 

<塾講師解説>

例年にはない出題も

スクール21 山本 稔 氏

 大問1は世界地理。問4は資料から読み取れる内容として正しいものを選ぶという恒例の問題。今年は数値ではなくグラフの読み取りで、割合の計算も不要で、例年よりも易化していた。
 大問2は日本地理。会話文や資料をもとに記述する問題。ここ数年見られる出題形式であり、過去問で対策していれば十分対応できた。
 大問3は近世までの歴史。問3は鎌倉時代の下地中分について説明する問題。資料からも解答は想定できるが、土地制度史に慣れていないとやや難しかったかもしれない。
 大問4は近代以降の歴史。会話文や資料をもとに記述する問題が、今年は歴史分野でも出題された(問1)。また、例年出題されている並び替えの問題はなく、ステップチャート形式の問題が出題された(問2)。
 大問5は公民。問2は参政権について正しいものを全て選ぶ問題で、正確な知識がないと完答は難しい。問3の司法制度についての問題も、中学生には難しかったと思われる。また、問6では資料を読み取り、マトリックスに分類する問題。公民分野では、ここ数年こういった思考力を問う問題が必ず出題されている。
 大問6は三分野総合。問3では、埼玉県では見ることの少ない世界地理の知識を問う問題。過去問で対策していた受験生はやや面食らったかもしれない。問4は、レポートを読んで当てはまるグラフと説明を答える問題で、ここ数年定番化している。
 総じて、前半は平易、後半にやや難しい問題が見られた。また、思考力を問うものが年々増えていることから、思考力問題への対策は、今後ますます重要になると思われる。

 

【理科】

<出題方針>

 「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」を柱とする各領域および各学年の配分を考慮し、広範囲にわたって出題。大問2は月の運動や月食・日食について理解しているか、大問3は動物の特徴や進化の過程について理解しているかをみた。大問4は炭酸水素ナトリウムの反応に関する実験を想定し、実験結果や方法の妥当性について考察できるか問うた。大問5は斜面を下る鉄球の運動を調べる実験を想定し、鉄球の高さと速さの関係やコースの形による運動の変化について理解しているかをみた。

 

<塾講師解説>

正しい知識と考察力

筑波進研スクール 西 翔太 氏

 大問構成、配点はほぼ前年通り。
 今年から大問2~5の冒頭で「探究的に学習」というワードが入っており、新しい学習指導要領に即した出題になっている。
 難しい問題は多くなかったが、文章を正しく読んで理解しないと解けないものもあった。計算問題は少なく、全体の難易度は、昨年度と同じか少し易しくなったと思われる。
 大問1は各単元から基礎的な問題が、バランスよく出題された。エネルギーに関する問題や半導体に関する問題は数年ぶりの出題だった。
 大問2は天体に関する問題。コロナ禍の2021年度入試前までの流れに戻すような出題になった。問4の計算は、数学の面積比の問題かつ距離に使われている数字は使わずに解ける問題であった。時間制限がある中ではミスしやすい問題だったのではないか。
 大問3は動物の分類に関する問題。問5はカモノハシの分類について、複数の資料から正しく整理しなければならない問題だったが、正答率は高いと思われる。
 大問4は化合と分解に関する問題。計算での難しい問題はなかったが、問3の理由や問4の化学反応式は文章をしっかりと読まなければならず、ミスしやすい問題だった。
 大問5は運動と力に関する問題。問3の実験結果を正しく得るための操作は悩む人も多くいたのではないだろうか。記述は時間的にも内容的にもまとめるのに苦労しただろう。
 全体を通して、考察力を問われるものが記述だけでなく、記号でも増えてきた。時間内に正しく読んで、正しく考察する力が重要となる。

 

【英語】

<出題方針>

 コミュニケーション能力を重視し、できるだけ広範囲な出題に努めた。リスニングで話の概要や要点を聞き取る力をみることに重点を置き、平易な英語の理解力や表現力、基本的表現、分構造や文法の習熟の程度をみるよう配慮した。大問1では日常的な話題や特定の場面を説明する英語から情報を捉える力などをみようとし、大問2では英文を完成させ基本的な語や表現の定着度合いを確認。大問3~5ではまとまりのある英文から要点を読む力や、まとまりのある文章を英語で表現する力を確かめた。

 

<塾講師解説>

単語・文法の定着を

湘南ゼミナール 矢ヶ﨑 勇太 氏

 大問数、大問構成は例年通り。
 大問1は、リスニング。出題傾向は昨年と同様で、いつ・どこで・誰が・どのようにといった部分を聞き取れ
たかが重要であった。
 大問2は、適語句補充と自由作文。冠詞や所有格の代名詞を正しく入れられるかどうかがカギとなった。問3の作文も昨年と同様で、一文目は和文英訳、二文目以降は語群の中から一語使って英作文を行う形式。基
本文法の確認が必須だった。
 大問3は、英文読解。出題傾向と配点は昨年と同様だった。問3の語順整序問題では過去分詞の後置修飾が出題されたが、比較的平易であった。
 大問4は、対話文読解。出題傾向は昨年と同様だった。「ピクトグラム」が題材であったので、比較的文脈のイメージがしやすい内容だったのではないだろうか。問2の語順整序問題は、昨年のtake を使った問題からhave を使った問題となったので、並び替える選択肢は絞りやすかったと考えられる。
 大問5は、英文読解と自由英作文。出題傾向と配点は昨年と同様だった。問1の問題は本文からの書き抜きであったが、内容は平易であった。問3の英作文は傾向も昨年と同様で『スポーツを見ることと、することのどちらが好きか』についての作文を3文以上で書くものだった。おそらくどの受験生も中学校で1度は触れたことのあるテーマであり、比較的書きやすい問題であった。
 教科書に繰り返し載っている、単語や文法を定着させておくことが非常に重要である。日本語を英語へ訳す訓練を日々行ってほしい。

 

【英語(学校選択)】

<出題方針>

 大問1はリスニング問題で、まとまりのある英語を聞いて要点を捉える力や、対話から内容を整理し必要な情報について適切に表現する力をみた。大問2ではまとまりのある英文を読み、要点を読み取る力や場面に応じた適切な表現力を確認し、正しい語順で英文を構成する力や概要を捉え情報を整理する力を問うた。大問3では英文の力や全体と部分の関係を的確に捉える力や適切な表現を用いて要約文を完成させる力などを確かめ、大問4では条件に従い文章を表現する力を求めた。

 

<塾講師解説>

時間管理した訓練を

湘南ゼミナール 小川 知紀 氏

 大問数、大問構成、配点は例年通りだった。
 大問1は、リスニング。例年と同様の形式だった。
 大問2は、「ピクトグラム」についての対話文読解。小問数、問題形式はほぼ例年通り。昨年出題された、図表から読み取る問題は出題されなかった。問3の整序英作文は複数の文法知識と文脈理解が必要のため難易度は高かった。また、問5の英問英答も質問に対する根拠は見つけやすいが、答える際に形を変化させないといけないため、苦戦した受験生もいたのではないだろうか。
 大問3は、「人工冬眠」についてのエッセイ。問題形式、小問数に変化はなかった。注釈はあるが、見慣れない単語が多かったため内容を理解するのに苦しんだかもしれない。問1の語形変化問題は、動詞だけでなく、名詞を変化させる問題が初めて出題された。問4の英問英答は大問2と同じく、本文の根拠から形を変化させるパターンが出題されているため、どれだけ練習量を積んでいるかがカギになった。問6の要約文も同様に書き換える力が求められた。
 大問4は、条件英作文。内容は「キャッシュレス決済をもっと頻繁に使うべきだと思いますか?」について記述する問題であった。実際に経験したであろう内容で、抽象度が低く、記述しやすい内容であった。
 大問2・3の内容が例年に比べ難しかったため、想定した以上に時間がかかってしまった受験生もいるだろう。日ごろから時間管理をして長文を解く訓練が必要である。また、文型や品詞の変化など複合的な知識が年々求められてきている。

 

=埼玉新聞2024年2月22日付け1&7面掲載=

 

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